FAW-Volkswagenの管理サービス部インターネット・アプリケーション開発マネージャー兼成都R&Dセンター長のWeipeng Jin氏は、「自動車産業のデジタル・トランスフォーメーションは、中国国民経済の重要な柱です」と説明します。「FAW-Volkswagenでは、電気自動車の生産とデジタル自動車ビジネスにおいて国内をリードするイノベーターとなるための強固な基盤を築いています。私たちは優れた車を作ると同時に、国家のデジタル経済戦略にも大きく貢献することを目指しています。」

FAW-Volkswagenは、中国市場の規模に合わせて作られた中国初の自動車メーカーです。5つの都市にある8つの製造工場で、VolkswagenとAudiのモデル、そしてVWのJettaブランドの名を冠した別ラインの車両を生産しています。

つまり、EVの需要が急増する中、FAW-Volkswagenにとっての課題は製造規模ではありません。

ソフトウェア開発です。

今日の高級自動車には1億行以上のコードが含まれています。（比較として、Boeing 787 Dreamlinerには約1400万行のコードが含まれており、世界最大の粒子加速器である大型ハドロン衝突型加速器に含まれるコードは5000万行です。）そして、車両テクノロジーが進化を続け、より多くの制御オプションやメディア、モバイル・デバイスによるより多くの機能性、さらには自動運転機能やIoVの接続性を提供するにつれて、ソフトウェアの量は指数関数的に増え続けることが予想されます。

FAW-Volkswagenは、ソフトウェアと、ストリーミング・メディア、駐車場、充電、ナビゲーション・サービスなど、ドライバーが消費する外部サービスのエコシステムとの間にシームレスな統合を実現し、あらゆる要素のソフトウェアが急速に進化し続けても、シームレスさを維持したいと考えていました。

しかし、それを実現するためには、開発能力を拡大する必要がありました。「研究開発手法の点で、ソフトウェアと従来のエレクトロニクスの間には大きな違いがあります。ソフトウェア開発はアジャイルな反復と慣例に重点を置いており、これが従来の自動車工場の研究開発組織にとって大きな課題となっています」とJin氏は説明します。FAW-Volkswagenは、クラウドネイティブの開発と統合に重点を置くように研究開発パラダイムを移行することを目指しました。

目標を達成するために必要な社内スキルを構築するために、FAW-Volkswagenは20年以上協力してきた信頼できるパートナーであるIBMコンサルティングに相談しました。IBMチームは、FAW-Volkswagenがクライアントの開発チームのスキルだけでなく、社内のチームの本質そのものを変革するのを支援しました。

これは単なるトレーニング・ワークショップではありませんでした。IBMコンサルティングは、IBM Garage Methodology（エンドツーエンドの変革のためのソリューションの設計、構築、およびスケーリングを通じて企業を導く実証済みの慣例）を採用し、中国・成都にあるFAW-Volkswagen R&Dセンターが、デザイン思考とDevOpsの慣例を含むアジャイル・オペレーションにおいて、150人以上のデジタル・イノベーション・チームの創設とトレーニングを支援し、より顧客を重視する企業への変革をサポートしました。このプロセスにより革新的なアイデアが生まれ、FAW-Volkswagenはそれらのアイデアをビジネス価値に迅速に変えるための実践、技術、専門知識を獲得しました。

たとえば、チームは、FAW-Volkswagenの3つの主要な自動車ブランドの3つの異なるネットワーキング・プラットフォームに関連する欠陥を特定しました。プラットフォーム全体のスケーラビリティと安定性の欠如により、イノベーションと新しいプロジェクトの提供が妨げられていたのです。「この発見に基づき、私たちは3つのブランドの統合に着手し、現在のジレンマを解決し、ブランド間でより簡単に適用できる継続的なイノベーションを促進するために、先進的で安定した、進化可能なInternet of Vehiclesプラットフォームを構築しました」とJin氏は言います。

テクノロジー面では、FAW-VolkswagenはIBM Cloud Pak for Integrationを導入し、企業の要件に合わせた統合パターンを提供しました。FAW-Volkswagenは、IBM Cloud Pak for Integrationのコンポーネントと、IBM Cloud PakのRed Hat OpenShiftコンテナ・プラットフォームを使用して、エコシステム統合とバックエンド統合という2つのユースケースにわたって、コンテナ化されたAPIベースの統合を開発しています。

エコシステムの統合により、多様なデジタル・サービス・エコシステムが車両や顧客のモバイル・デバイスに導入されます。これには、ストリーミング・メディア、駐車サービス、特にEV充電サービスにおけるパートナーとの統合が含まれます。中国には複数の充電ネットワーク事業者がおり、交流（AC）をサポートする事業者もあれば、直流（DC）をサポートする事業者もあり、さまざまな充電速度が利用可能です。FAW-Volkswagenは、IBM Cloud PakのAPI Gatewayを使用して統合を仲介し、充電オペレーターのオンボーディングを加速します。また、ドライバーは合理化されたエクスペリエンスを得ることができます。単一のFAW-Volkswagenアプリには、車両の要件に合わせてフィルターされた利用可能なすべての充電オプションが表示されます。

バックエンドの統合により、同社の記録システムが、FAW-Volkswagenのすべての車両モデルの常に進化するソフトウェアに接続されます。これには、製品開発と製造プロセスをフロントエンド・ソフトウェアのアジャイル開発と同期させることも含まれます。お客様にとって、それはより便利でシームレスなエクスペリエンスを意味します。たとえば、車の所有者は、車のヘッド・ユニットまたはモバイル・アプリからディーラーにメンテナンスを依頼したり、最近注文した車の生産の進捗状況を追跡したりできます。いずれの場合も、IBM Cloud PakのAPI管理コンポーネントは、お客様のインターフェースと、ディーラー管理システムや製造実行システムなどのバックエンド・システムとの間で、APIを介して情報を交換します。

「私たちはCloud Pak for IntegrationのAPI管理機能を使って、エコシステム・パートナーのオンボーディング時間を数ヶ月から数週間に短縮しています」とJin氏は述べています。「バックエンドの統合では、APIを使用して複雑なアプリケーションへのアクセスを簡素化し、これらのシステムを使用するソリューションの開発時間を50%短縮しています。」

「私たちは、デジタル技術とデータを駆使して、すべてのタッチポイントで魅力的なカスタマー・エクスペリエンスを実現しました」とJin氏は述べています。

そして、お客様は気づいています。FAW-Volkswagenの開発と統合の変革以来、300万人を超える新規ユーザーが、FAW-VolkswagenのVWおよびJettaブランドのモバイル・アプリに登録しています。

FAW-Volkswagenは、車の注文から運転に至るまで、エクスペリエンスを向上させてきました。

同社は、特別注文車のオンライン注文を可能にした最初の主要な合弁自動車企業となりました。単なる便利な新機能ではなく、「Order to Deliveryプロジェクトは、当社の生産計画に大きな変化をもたらしました」とJin氏は説明します。「私たちは在庫指向のモデルからお客様指向のモデルに移行しました。ユーザーの好みやニーズを把握し、それを迅速に製品化し、期待に応えるために生産を柔軟に調整することができます。」

FAW-Volkswagenは、ドライビング・エクスペリエンスにおける革新の一例として、スマート・コックピット・ヒューマン・マシン・インターフェース（HMI）デザインで、22021 Red Dot Brand and Communication Design Award（リンクはibm.com外部）を受賞しました。

同社は、開発チームの本質そのものを工場中心のソフトウェア部門からアジャイルなイノベーターのグループに変革したことでさらなる賞賛を集めました。成都の研究開発チームは、FAW-Volkswagen社内で独立した研究開発ケイパビリティーを獲得した最初のチームとなり、インテリジェント・エコシステム・ミドルウェア・プラットフォームの確立を含むインテリジェント・ネットワーク・デジタルケイパビリティー構築プロジェクトで、IDCの「Best in Future of Digital Innovation」を受賞しました。Weipeng Jin氏は、2021 IDC China Future Enterprise Awardsの「Rising Star of the Year」にも選ばれました。

FAW-Volkswagenは、顧客にとっての会社の意味を変えました。もはや単なる自動車メーカーではなく、現代の運転エクスペリエンスの革新者でもあります。「今後も、カスタマー・エクスペリエンスが当社の指針であり続けるでしょう」とJin氏は言います。アジャイルな開発と統合を活用して、当社は今後も優れたビジネスおよび旅行サービスを創出し、お客様の運転および乗車体験を最適化していきます。」

FAW-Volkswagenは1991年に設立され、第一汽車集団公司、Volkswagen AG、Audi AG、Volkswagen (China) Investment Co., Ltd.の共同経営により、中国でVolkswagenおよびAudiの自動車、およびVolkswagenのJettaブランドにちなんで名付けられた別の車両ラインを生産しています。同社は4万人以上の従業員を擁し、2020年には200万台以上の車両を生産しました。