ホーム お客様事例 Ernst & Young Global Limited(EY)社 国際的ハッカソンの活動目的はサステナビリティーの向上
EY社の開発者チームは現実社会の改善に取り組んでいます
地域の家庭菜園で一緒に作業する2人

Mayank Pandey氏は、子どもの頃にインドの小村からオーストラリアの中都市に引っ越しました。両親は引っ越しに際し、人生の土台として深く根付いていた価値観を維持しようと固く決意していました。中でも深く浸透していた価値観は、おそらく自然とのバランスを保つ重要性であったと同氏は次のように述懐します。

「両親が資源の再利用や堆肥化などの環境保護活動に熱心だったことは、私の成長過程に大きな影響を及ぼしました。同様の価値観が私にも根付いており、年々その重要性は高まる一方です」

Pandley氏は現在、メルボルンのEY Oceania社でシニア・テクノロジー・コンサルタントとして働いており、開発チームのメンバーとして、クライアントがビジネス上の問題を解決する支援をしています。この職務は困難であるものの、本質的にはやりがいがあると同氏は考えています。今までと違う種類のチャレンジを耳にしたとき、同氏にはピンとくるものがありました。そのチャレンジとは、EYとIBMが出資する、サステナビリティーに関する世界的な問題解決に焦点を当てるハッカソンでした。「開発者として有する技術的知識を、関心のあるトピックと関連づけることができたらとずっと考えていました。ハッカソンへの参加は社会の改善に貢献し、経験から学ぶ絶好の機会に思えました」と同氏は振り返ります。

わずか数週間のうちに、Pandey氏は世界各国の4人の開発者仲間と共に、AIを利用して消費者が日常生活で使用する製品の環境への影響(炭素排出量)を提示するクラウドベースのソリューションを、勤務時間外に構築しました。「No More Ripe Bananas」と名付けられたこのソリューションは、ハッカソンに参加した1,200人を超えるEY従業員が提出した24件の1つであり、最終候補に残りました。

サステナビリティーは地球的課題

 

世界中で1,200人のEY開発者がサステナビリティー・アプリの構築に挑戦

専門的なトレーニング

 

参加者が4週間にわたる製品の専門的トレーニングを自主的に受講した時間は、2万3,000時間に到達

新しい技術を使った実験に対して従業員のやる気を引き出すには、その従業員が深く関心を寄せている課題に関して通常では得られない機会を提示するのが効果的です。 IBM TechHub@EY グローバル・リーダー Brad Artigue氏

ハッカソン・チャレンジが実現した背景には、EYとIBMとの強力な提携関係があります。この関係は本質的にきわめて協力的であると同時に、サステナビリティーをはじめとするESGを目的とする取り組みに焦点を当てています。EY内でハッカソンの推進役を担っているのが、「IBM TechHub@EY」という名称で知られる開発者サポートチームで、メンバーは世界各国に分散しています。IBMとEYは長期的な提携関係の一環として、IBM TechHub@EYを立ち上げ、世界中のEY開発者がIBMのオープンなハイブリッド・クラウド・プラットフォーム、AIソリューション、その他の変革的技術により簡単にアクセスできるようにしました。その主な目的は、ツールとスキルを有効活用することにあります。

スキルの構築と問題解決

IBM TechHub@EYのグローバル・リーダーを務めるBrad Artigue氏にとって、Call for Code Global Sustainability Challenge(ハッカソンの正式名称)は、「従業員にスキル・セットの構築チャンスを与える」という企業の恒常的課題の効果的な解決策となりました。同氏は次のように説明します。「新しい技術を使った実験に対して従業員のやる気を引き出すには、その従業員が深く関心を寄せている課題に関して通常では得られない機会を提示するのが効果的です。Call for Codeは大成功を収めていると評価しています。このイニシアチブにより従業員は秘められていた問題解決能力を発揮するようになっているうえ、ソリューションを共同で構築するための強力なツールの提供を受け、トレーニングを受講し、IBM Hybrid Cloudプラットフォームを世界中で利用する機会も得ています。」

EYの参加者が4週間にわたる製品の専門的トレーニングの自主的な受講に費やした時間は最終的に23,000時間に達しました。繰り返しますが、すべて勤務時間外であり、サステナビリティーがいかに従業員のやる気を引き出す大きな要因となるかを物語る数字です。ただ、このプロジェクトには測定困難なものの、期待以上の成果を上げている分野がもう1つあります。世界的規模でのチーム構築です。

EYは意図的に、参加者が世界各国の社内開発者ネットワークからメンバーを探しチームを結成できるようにしました。この方式は、従業員同士が実務で世界的に共同作業を行う文化を促進する作用がありました。同時にこの方式は、気候変動や環境の持続可能性などの「ボーダレスな」問題を解決するには、国境を越えたイノベーションとチームワークが必要であるという強い信念を活用するものでもありました。

ソリューションの用途と情報の提示方法を明確にするために、チーム・メンバー全員が地元で培った経験と独自の状況を共有しました。その結果、多数の異なる視点を盛り込むことができ、ソリューションの改善につながりました。 EY社 データ分析コンサルタント Anthony Wong氏

ニュージーランドのオークランドでEY社データ分析コンサルタントとして働くAnthony Wong氏を例に挙げましょう。同氏はハッカソン・チャレンジをサステナビリティーの課題について詳しく学ぶ実践的機会ととらえました。同僚と会社のカフェテリアで昼食をとっていたときに、捨てられる食品だけでなく、プラスチック製の皿とコップがゴミ箱にあふれているのにも唖然としました。「それらがどこに廃棄されるのかを知らず、自分たちの食品の消費習慣が世界的な問題の一因であるという思いが心に引っかかりました。このチャレンジに参加したのは、まさにそれが理由です」と同氏は言います。

このプロジェクトのチーム・メイトはニュージーランド、オーストラリア、フィリピンに住んでおり、新型コロナウイルス感染症の蔓延中にテイクアウトをよく利用していたことや、過剰包装を全般的に嫌うなど、多数の共通点があることがわかりました。ただ、何より重要な共通点は、エンドユーザーの利便性に的を絞ったソリューションの設計を目指すという固い信念でした。「メンバーは、「華々しい」だけで、効果はいまひとつのものを開発するわなにはまることは避けたいと考えていました」とWong氏は説明します。

その点で、チーム・メイトが持つ背景の多様性が役立ったと同氏は次のように指摘します。「ソリューションの用途と情報の提示方法を明確にするために、チーム・メンバー全員が地元で培った経験と独自の状況を共有しました。その結果、多数の異なる視点を盛り込むことができ、ソリューションの改善につながりました」「Sussit」と呼ばれるチームのソリューションは、ハッカソン優勝の栄冠を獲得しました。

Sussitではクラウドをソースとするデータとクラウドを活用したAIモデルを使用して、食品の調達場所から堆肥化可能な包装の使用に至るまで、飲食店での業務全般の持続可能性を評価します。このソリューションは、さまざまな飲食店での選択肢が個人の持続可能性の優先事項とどの程度一致しているかを判断(Suss=突き止める)しやすくすることで、消費者が自分の価値観を行動に移せるようにします。

Call for Code Challengeの成功は、グローバル・チームがサステナビリティーのような世界的課題を解決するのに適した条件を備えていることを示す端的な例ととらえています サステナビリティー担当グローバル・バイス・チェア Steve Varley氏 Anthony Wong氏
イノベーション用プラットフォーム

プロジェクト後の議論では、ハッカソンの参加者が環境、社会、ガバナンス(ESG)の大義に対して個人的に関心を寄せていたことが、活動に熱心に取り組む主な動機であったということが改めて確認されました。ただ、これは要因の1つであり、ほとんどの開発者には、創造し実験せずにはいられない衝動が本質的に備わっています。こうした衝動を満たすために、IBM TechHub@EYでは、広範なIBMのツールと技術にアクセスするためのプラットフォームを開発者に提供することが主な役割の1つとなっており、中には「日常業務」の中で通常利用できないものもあります。

IBM TechHub@EYでは参加者がこうした新技術に慣れ親しむ機会が広がるように、必要に応じて技術支援とワークショップ型のトレーニングも提供しています。この技術、ツール、トレーニングという3方面からの支援体制を通じて、EY社はイノベーションの豊かな基盤作りを目指しました。

こうしたプロジェクト理念が実践された好例が、ハッカソンの別の優勝チームとなったProject Net Zerodです。南インド出身のEY社イノベーション・エンジニア2人が開発したこのソリューションは、企業の炭素削減活動の実態および対応するスコアカードを提供します。このソリューションの一番の特長は、各企業のサステナビリティー活動の妥当性を検証するだけでなく、活動を促進させるために採用した包括的で高度なアプローチです。

グリーン認定の確立を目指す企業は、まず、活動を実証する情報(証拠)をアプリに送信します。Project Net Zeroは情報が取り込まれたら機械学習(ML)モデルを利用して、情報を検証し、処理過程で、炭素削減指数(CRI)と呼ばれる値を割り当てます。次にアプリは計算に基づき、ZeroCarb Coinと呼ばれる暗号トークンを発行し、IBM Blockchain台帳に記録します。ソリューションの開発者の片割れであるNandu Krishna氏はこの2段階方式は「企業がサステナビリティー活動を改善するために投資が必要な分野を特定するのに役立つだけでなく、こうした投資を下支えする「グリーン」資本の創出方法にもなる」と説明します。

EY社がサステナビリティーをテーマとするハッカソンの開催を決断したことは、「Building a better working world(より良い社会の構築を目指す)」という同社のモットーを支える、より広範な社会的価値観とぴったり一致するだけでなく、それ以上の意味があります。同社のESGビジョンの根底には、サステナビリティーは責任感の問題であると同時に、同社とクライアントにとって大きな機会の源泉でもあるという深く根付いた確信があります。

この確信を顕著に表す行動として、EY社が2020年に4大会計事務所で初めて、サステナビリティー担当グローバル・バイス・チェアという役割の創設を決断したことが挙げられます。同職に就いたSteve Valey氏は、EY社のクライアントがサステナビリティーからビジネス・バリューを創出する支援をするとともに、環境持続可能性に関する社内の全般的戦略を指揮しています。同氏にとってハッカソン・チャレンジは、サステナビリティーの秘められた価値を実現するために不可欠な、ある種の共同的イノベーションとなります。「サステナビリティーの主な推進力となるのが、エネルギー効率の改善、サプライチェーンの再構築、ビジネスモデルの再考など、さまざまな形のビジネス・バリューです。Call for Code Challengeの成功は、グローバル・チームがサステナビリティーのような世界的課題を解決するのに適した条件を備えていることを示す端的な例ととらえています」(Valey氏)。

Ernst & Young Global Limited(EY)社のロゴ
Ernst & Young Global Limited(EY)社について

ロンドンに拠点を構えるEY社(ibm.com外部へのリンク)は、世界最大の専門家サービス・ネットワークの1つを運営しています。4大会計事務所の一角を占め、アシュアランス、税務、コンサルティング、アドバイザリーといったサービスをクライアントに提供しています。世界収益400億米ドルを誇る同社の2021年末時点における従業員数は312,250人です。

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2022年4月、アメリカ合衆国で制作。

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