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AI搭載の推奨エンジンはデータを活用して、財務コーチが顧客の目標に最も関連する包括的で公平なフィンテック製品を提案するのに役立っています
自宅で娘とソファに座って仕事をする女性

経済的不安は、低所得者にとって乗り越えなければならない厳しい現実です。金融商品・サービスへの平等なアクセスに構造的な障壁があることは否定できない現実であり、この障壁は黒人および褐色人種の女性にとって特に高くなります。テクノロジー分野の非営利組織、Change Machineはこうした問題に真っ向から立ち向かっています。

Change Machineは、人間主導型テクノロジーを通じて低所得コミュニティの財務的安定を確保することを使命に掲げています。同組織が業務で使用しているサービスとしてのソフトウェア(SaaS)プラットフォームは、人々が財務的目標を達成する方法を変革できます。このプラットフォームは社会福祉団体や公的機関で財務コーチが使用するもので、実務家用の社会的コラボレーション・ツール、多様な財務コーチング課題に関する教育ポータル、Salesforce AppExchangeの事例管理アプリが搭載され、財務コーチが顧客の相談に乗る際に役立ちます。

このプラットフォームには、Change Machineが包括性、安全性、有効性を厳しく吟味した一連のフィンテック製品とサービスが組み込まれています。財務コーチや顧客のインサイトや経験が反映されていることから人間主導型のプラットフォームと言え、顧客データのAI分析を使用して適切なフィンテック製品を提案する機能を備えています。

最初からこの形態だったわけではありません。Change Machineは2020年初頭に、価格の手頃さ、包括性、安全性に加え、財務的安定を築くために各製品が果たす役割という観点からフィンテック製品を評価するための基準一式を策定しました。「Marketplace Relief」と呼ばれる推奨エンジンの最初のバージョンは、新型コロナ感染症の蔓延に起因する経済停滞中に財務的不安を軽減するために考案されました。顧客ニーズに合う関連性の高い厳選された製品とサービスを絞り込むために基準が作成されました。例えば、貯蓄促進と信用改善が顧客ニーズであった場合、推奨エンジンは貯蓄と信用製品・サービスを推奨するのが常でした。

このシステムは十分役に立ちましたが、方法は限定的でした。Change Machineで製品開発担当ディレクターを務めるDavid Bautista氏は次のように振り返ります。「最初の推奨エンジンは特定の場所の少人数のコーチによって特定の時点で設計されました。知識と推奨可能な商品の範囲を広げるために、推奨エンジンが稼働中に自動更新できるようになればよいのではないかと考えました」

推奨ルールにも問題点があったと、製品開発担当アシスタント・ディレクターを務めるRobert Zarate-Morales氏は次のように指摘します。「コーチは顧客とのやり取りを通じて身につけた専門知識と経験に基づきルールを指定しました。ただ、私たちは内部システムに保存されていた顧客データの活用方法についての知識は持ち合わせていませんでした。例えば、顧客が最もよく利用するサービスや一般的な財務状況に基づき必要な追加のしきい値といったデータです。こうしたデータを使用すると、顧客ニーズに関するより深いインサイトが得られます」

当初の推奨エンジンでは、顧客が推奨された商品とサービスを受諾または拒否したかという機能の影響度を示すデータも考慮していませんでした。

利用率アップ

 

フィンテック商品の継続的利用率は60%から98%に上昇

開発サイクルの短縮

 

プロジェクト・チームはわずか6週間というスプリントで、機械学習分類モデルをアジャイル開発

コーチは顧客とのやり取りを通じて身につけた専門知識と経験に基づきルールを指定しました。ただ、私たちは顧客データの活用方法についての知識は持ち合わせていませんでした。 Robert Zarate-Morales氏 製品開発担当アシスタント・ディレクター Change Machine
推奨事項の改善に機械学習を利用

AIデータ分析を使用すれば推奨エンジンを改善できることは明らかでした。そこで、Change Machineは開発支援を受けるために、2021年3月にIBM®データサイエンスおよびAIエリートチームと契約を結びました。IBMでは、IBM Data and AI for Social Impactという共同実習プログラムを通じて、非営利組織がそれぞれの使命のためにデータサイエンスとAIの利用を促進する支援をしていました。

このプロジェクトは、IBMとChange Machineの担当者が知識を共有し合い、要件を考案するステップから始まりました。最終目標は、組織データを首尾一貫した統一データに論理化して、推奨事項をカスタマイズする機械学習分類モデルを開発することでした。モデルは信頼されるAIをベースにした自己学習型、すなわち推奨事項には説明可能な根拠があるものでした。

このエンジンは拡張性があるため、パートナーとユーザーの予想される増大に対処できます。そのうえ、運用ダッシュボードに表示されるライブ・データから運用に関するインサイトが得られます。

IBMチームはデータとAIモデルの開発ツールとして、IBM® Cloud Pak for Data as a Serviceを選択し、すべてのデータが一元的データ機能にリンクするようにしました。開発者は、IBM® Watson StudioソリューションとそのAutoAI機能を併用して開発の容易化を図ることにしました。APIベースのIBM® Cognos Dashboard Embeddedソリューションによってダッシュボードの拡張性が確保され、すべてのツールはIBM® Cloudから提供されるIBM Cloud Pak内に配置されました。

IBMとの提携を通じて、データの新しい活用方法と機械学習モデルの作成と管理用フレームワークの構築方法を学びました David Bautista氏 製品開発担当ディレクター Change Machine
IBMのアジャイル手法を使用して開発を迅速に

開発工程は、IBMデータサイエンスおよびAI Eliteチームの関与方式を使って速いペースで進みました。この方式では、以下のとおり、6週間を3つのアジャイル・スプリントに分けます。

  • 開発者は最初の2週間のスプリント中、Change Machineの協力を得ながら、すべての各ソースに接続されているデータを理解しました。
  • 2番目のスプリントでは、ベースラインの機械学習モデルを作成してデータによって実際に予測が可能かどうかを確かめることに専念しました。
  • 3番目のスプリントでは、完成したモデルに新しい機能を追加し、実稼働環境にデプロイしました。

次に、財務コーチが顧客と共に使用するSalesforceアプリにモデルを組み込みました。IBMチームは、Change Machineチームが管理ダッシュボードを開発する際にもサポート役を務め、実習コラボレーションの一環として、将来Change Machineチームが継続的に使用することになるデータ戦略とAIツールに関する知識を同チームに移転しました。

「IBMとの提携を通じて、データの新しい活用方法と機械学習モデルの作成と管理用フレームワークの構築方法を学びました。このプロジェクトは先端クラウド・ソリューションに取り組むきっかけにもなりました。また、実用アプリケーションにAIを導入するのにも役立ちました。以前は、順調にいっても実現は数年先と考えていたことです」(Bautista氏)。

IBMと提携することで、より戦略的にデータを捉えることができるようになったのです David Bautista氏 製品開発担当ディレクター Change Machine
良質な推奨事項で、財務上の壁を乗り越えやすく

Change Machineは今ではSalesforceの推奨エンジンをデータのAI分析で強化しています。このソリューションは際立った革新性が評価され、VentureBeat主催のAIイノベーション賞AI for Good部門にノミネートされました。

推奨エンジンの以前のバージョンでは、財務コーチが推奨するフィンテック製品を顧客が積極的に使用する率は60%程度でしたが、新しいバージョンでは、98%に上昇しています。推奨事項の関連の高さが読み取れる数値です。

Bautista氏は次のように語ります。「推奨事項の質が高くなると、経済的な壁の克服支援という使命が推進されます。製品の採用率が向上するだけでなく、最も必要とする人々が製品に確実にアクセスするのにも貢献します。さらに、パートナーとアドバイスを受ける利用者との関係強固にも役立ちます」

追加メリットは、推奨エンジンが顧客やフィンテック製品に関する動的データに接続していることに起因します。この動的データ自体が更新されると、推奨事項も更新されるためです。

ダッシュボードは組織全体で活用され、その有効性が証明されています。Change Machineのマネージャーは、「数値だけでは全体象は伝わらない」(Zarate-Morales氏)ため、ダッシュボードを利用して動的な運用データを可視化しています。開発者はIBM Cloud Pak for Dataでデータ・マートを活用して追加ダッシュボードを構築しています。

今後も、IBMとの提携によって、職員は学んだ知識を実践し、Change Machineの内部イノベーションは推進することになるでしょう。

Bautista氏は次のように締めくくります。「このテクノロジーの能力と使いやすさがわかったことは私にとって刺激になりました。以前は、データとは事後的に使用するものでした。質問があれば、「データはどこだ?」と問いかけていました。一方、現在では、戦略的な決断にデータをあらかじめ組み込み始めています。IBMと提携することで、より戦略的にデータを捉えることができるようになったのです」

Change Machineのロゴ
Change Machineについて

2005年に創設されたChange Machineは、人間主導のテクノロジーで、低所得コミュニティの財務基盤の安定化を図っています。8,000人を超える実務家がChange Machineのプラットフォームを使用して、顧客が4,500万米ドルもの資金を手にするなど、その影響度合いを拡大しています。

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脚注

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2022年8月アメリカ合衆国で制作

IBM、IBMロゴ、ibm.com、Cognos、IBM Cloud、IBM Cloud Pak、およびIBM WatsonはInternational Business Machines Corp.の商標であり、世界中の多くの管轄区域で登録されています。その他の製品名・サービス名はIBMまたは他社の商標である可能性があります。IBM商標の最新リストは、ウェブ上の「著作権および商標情報」www.ibm.com/jp-ja/legal/copytradeでご確認いただけます。

本書は最初の発行日時点における最新情報を記載しており、IBMにより予告なしに変更される場合があります。IBMが事業を展開している国であっても、特定の製品を利用できない場合があります。

記載されている性能データとお客様事例は、例として示す目的でのみ提供されています。実際の結果は特定の構成や稼働条件によって異なります。本資料の情報は「現状のまま」で提供されるものとし、明示または暗示を問わず、商品性、特定目的への適合性、および非侵害の保証または条件を含むいかなる保証もしないものとします。IBM製品は、IBM所定の契約書の条項に基づき保証されます。