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ヨルダンのCapital Bank、統合データハブと強力な分析による急成長に備える
銀行窓口を利用する女性
2020年以来、ヨルダンのCapital Bankは一種の連戦連勝を続けています。2度にわたる買収の成功により、この銀行は6社の競合他社を飛び越えてヨルダンの3大企業の1つとなり、この地域ではより強力な企業となりました。同社の利益は約2倍になり、サービスが行き届いておらずモバイルバンキングの利便性を強く求める市場で、2022年に新しいデジタル銀行「Blink」を設立しました。加えてCapital Bankは最近、英国に本拠を置く金融テクノロジーの雑誌Capital Finance Internationalから、「最も革新的なデジタル銀行」「ヨルダン最高の銀行」に選ばれるという2つの栄誉を獲得しました。

こうした成功を背後で支える人々にとっては、Capital Bankの成長の勢いは成長促進市場でのストラテジーの正当性を裏付けるものであり、またおそらくそれと同じくらいに、そのストラテジーを実施する技術的な体制を整えることの価値を証明するものでもあります。2020年、ほぼすべての組織と同じように、Capital Bankの経営陣はパンデミックがもたらした課題の理解と対応にリソースの多くを注いでいました。しかし同時に、銀行の長期的な成長見通しとそれを改善する方法についてもかなりの検討を加えていました。

この時までは、Capital Bankは主に大企業市場、そして最近では中小企業市場にサービスを提供することに重点を置いた堅実な地域密着型のプレーヤーでした。同行のトップで意思決定を行う経営陣にとって、ヨルダンとその周辺地域のリテールバンキング市場は、特にデジタル面で手つかずの巨大なチャンスを秘めていました。たとえばヨルダン国民1,000万人のうち、約80%が携帯電話ユーザーであり、実質的にそのほとんどがデジタルバンキングサービスの対象市場に含まれると言えます。対照的に、同国で実際に銀行口座を持っているのは女性の4分の1強、男性の約半数程度にとどまっていました。この大きなギャップの中に、Capital Bankはリテールバンキング事業を拡大して、収益基盤を拡大する機会を捉えていました。

同行は主に2つの道を見据えていました。Blinkと名付けられたデジタル銀行の設立に加え、Capital Bankは個人向けおよび法人向け銀行業務の拠点を拡大する方法として、他の銀行の戦略的買収も検討していました。どちらも新しい個人顧客と法人顧客を獲得し、Capital Bankから幅広いサービスを提供できる可能性があります。とはいえ、グループの最高執行責任者(COO)であるIzzidin Abusalameh氏をはじめとする同行のトップ経営陣は、このビジョンを完全に実現するにはCapital Bankによる適切な実行が必要だということも認識していました。「私たちにとって『実行』とは買収を迅速かつスムーズに統合し、さらにすべてのお客様に高品質でパーソナライズされたエクスペリエンスを提供するということです」と彼は言います。「その機能の基盤となるのが統合データ管理だと考えています」。

なぜデータ管理が重要なのでしょう。Abusalameh氏は、最終的には顧客を知るということに尽きると語ります。「本質的に、当社のリテールバンキングおよびコーポレートバンキング・ストラテジーの根幹は、お客様を深く理解し、その知識を生かしてお客様との関係を育み、強化することにあります。その意味で、データを収集、整理、分析するための適切なデータ・インフラストラクチャを整備することは、当社のストラテジーを成功させるのに欠かせません」。

95%の削減

 

買収に関連するデータの移行時間を95%以上削減し、支店業務のより迅速な統合を可能にします。

10倍に増強

 

モバイル・エクスペリエンスの問題検知は10倍以上高速化され、顧客満足度が向上しました

当社のリテールバンキングおよびコーポレートバンキング・ストラテジーの根幹は、お客様を深く理解することです。データを収集、整理、分析するための適切なデータ・インフラストラクチャを整備することは、当社のストラテジーを成功させるのに欠かせません。 Izzidin Abusalameh グループ最高執行責任者(COO) Capital Bank of Jordan
AIとMLで分析を次のレベルへと引き上げる

2021年初頭までに、Capital Bankはテクノロジーのニーズ(AIや機械学習(ML)などの「レベルを上げた高度なデータ分析を可能にする、モダナイズされたデータ・ハブ環境」) を定義し、選択肢を積極的に検討していました。この銀行は相当なレガシー・ソリューションを導入していましたが、20年近く続いている実りある関係と、蓄積してきた信頼と経験により、IBMがそのニーズに応えることになりました。銀行がIBMを頼り続けることにしたもう1つの主な要因は、Abusalameh氏が以前に別の銀行で勤務していた際にIBM Netezza Performance Serverソリューションを使用して、良い印象を持っていたことでした。IBMのテクニカル・セールス・チーム、Capital Bankの経営陣、社内のスペシャリストが参加した集中的なディープ・ダイブ・セッション・シリーズとデモンストレーションを経て、同行の意思決定チームは、IBM Cloud Pak for Dataプラットフォームと、プライマリ・データウェアハウスとしてNetezza Performance Serverを利用するのが最適であるという結論を出しました。

IBMソリューションの主な長所について尋ねられると、同行の最高データ責任者(CDO)であるBahaa’ Awartany氏は、IBMソリューションに組み込まれている広範な統合機能に独自性があると述べました。「データ、AI、機械学習など、私たちのビジョンのあらゆる側面をサポートできるソリューションがそろっていることが非常に重要です」と彼は言います。「IBM は非常に強力なデータ・ウェアハウスとしてのアドバンテージを備え、さらにAIと機械学習ツールのスイートが全てそろっています。この点で、IBMのソリューションは非常に際立っています」。

このソリューションの導入は、IBMのビジネス・パートナーであるJordan Business Systems(JBS)とIBMチームのオフサイト・サポートが実施し、主に2つの段階に分けて進められています。すでに完了した第一段階では、JBSがNetezza Performance Serverユニットをデプロイし、Capital Bankのデータ・オフィスがデータ・ウェアハウスを構築できるようにしました。その後、Capital Bankのデータ・オフィスが、コア・バンキングに加えて15以上のバンキング・アプリケーションからデータを収集し、ウェアハウスに一元化しました。

この実施段階のもう1つの重要なマイルストーンは、買収したばかりの2つの銀行、Bank Audi(ヨルダンおよびイラク)とSociété Générale Bank Jordanの統合でした。どちらの場合も、JBSがコア・バンキング・データのみならず人事、給与、その他のエンタープライズ・アプリケーション・データの移行をサポートしました。その時点で、つまり2022年半ばには、Capital Bankはすべての重要なデータを信頼できる唯一の情報源へと統合していました。基礎が完成し、データサイエンスとアナリティクスの段階が始まったのです。

IBM は非常に強力なデータ・ウェアハウスとしてのアドバンテージを備え、さらにAIと機械学習ツールのスイートが全てそろっています。この点で、IBMのソリューションは非常に際立っています」。 Bahaa’ Awartany 最高データ責任者 Capital Bank of Jordan
機械学習がエンゲージメントを深める

Capital Bankは現在、自社の開発者とデータサイエンティストが主導する形で、IBM Cloud Pak for Dataソリューションに搭載されている高度なAI機能を使用し、予測的意思決定のためのインフラストラクチャを構築しています。これまでの最も重要なユースケースは、集約済みのデータ・ウェアハウス・システムから抽出された大量の履歴データに基づいた、顧客の行動パターン予測に関するものです。例えば、IBM Watson Studio on IBM Cloud Pak for Dataの機能のひとつであるIBM Watson Machine Learningツールを利用し、同行のデータサイエンティストは顧客のデモグラフィックや行動に関するパラメーターと銀行商品の需要との相関関係を分析しています。

CDOのAwartany氏が説明するように、最も高い傾向スコアを持つ顧客を特定することで、Capital Bankのマーケティング担当者は、特定のクロスセルを提案する対象をより効果的に絞り込むことができ、コンバージョン率、ひいては顧客一人当たりの収益を向上させることができます。「リテールバンキング事業の拡大を続ける中で、MLとAIを通じて得られるインサイトは、お客様のニーズを予測し、お客様により良いサービスを提供する上で大きな利点となります」とAwartany氏は言います。「また同じくらいに喜ばしいのは、この予測アプローチをカスタマー・ライフサイクル管理に適用し、お客様のジャーニーのすべての段階で、高度にパーソナライズされた製品とサービスを提供できるようになることです。さらに解約のリスクがあるお客様にフラグを立て、根本的な問題に対処するために事前にアプローチすることもできます」。

顧客の行動パターンをAIで分析するCapital Bankの能力は、解約リスクの検出と同じ方法で、他のさまざまな運営リスクにも対応できる、と同氏は続けます。「すべてのデータを信頼できる唯一の情報源にまとめることで、当社の一元化されたデータ・プラットフォームにより、お客様全員とその取引の全体像が得られます」とAwartany氏は説明します。「疑わしい取引パターンを探すためのAIモデルを構築しトレーニングすることで、このプラットフォームは金融詐欺、マネーロンダリング、テロ資金供与事件を検出・防止するための特に強力なツールになります。

一元化されたデータによる俊敏性の向上

Capital BankがAIおよびデータサイエンスの機能の構築を続ける中で、その中核となるデータ・ウェアハウスはすでに運用上の利点に関する確かな実績を積み重ねています。COOのAbusalameh氏によると、このソリューションの特に優れたパフォーマンスが発揮されたのが、日曜日の朝に買収したばかりの銀行の支店を稼働させるために、買収元の銀行のすべてのデータを時間内に自社の基幹システムに移行しなければならないという、非常に忙しい週末のことでした。「Netezzaプラットフォームがなければ、経験からいって、1週間の大半を移行に費やすことになったでしょう」と彼は説明します。「データ品質チェックも含め、数百万のレコードに相当するこの重要な変更を約4時間で完了することができました」。

Netezzaソリューションの運用上のメリットは、同行のリテールバンキング市場への進出の中核をなす、新しいモバイル・アプリの最近の展開でも明らかになりました。CDOのAwartany氏が気に入ったのは、このソリューションが顧客体験に関する実用的なダッシュボードのインサイトを提供することができ、顧客のモバイル・エクスペリエンスに問題が生じた場合に迅速に対応する手段をITチームにもたらしたことでした。「ダッシュボードを使用することで、ログインの問題やエクスペリエンスにおけるその他の問題など、障害となるポイントを数分で特定することができました。ダッシュボードがない場合に比べると10~15倍の速さです」と Awartany 氏は言います。「よりスムーズなエクスペリエンスを提供することで、当社の新しいデータスタックはモバイル展開の成功に大きな役割を果たしました」。

Awartany氏は、このモバイルの事例はデータの透明性が実際に役立ったものであると同時に、銀行の長期的なデジタル・ビジョンに沿った、より広範な動向を示すものだと考えています。「こうした事例から、組織内でも認識が広がりつつありますが、すでに当社の意思決定文化は変化の兆しを見せています。AIを取り入れることで、その勢いはさらに強まるでしょう」。

    Capital Bank社のロゴ
    Capital Bank of Jordanについて

    ヨルダンのアンマンに拠点を置く Capital Bank(リンクはibm.comの外にあります)は、ヨルダン、イラク、アラブ首長国連邦、サウジアラビアの個人および法人顧客に商業および投資銀行サービスおよびソリューションを提供しています。さらなる拡大のため、Capital Bankは2021年にヨルダンとイラクにおけるBank Audiの事業を、2022年にはヨルダンのSociété Générale Bankの支店と事業を買収し、ヨルダンおよびこの地域の銀行市場での地位を強化しました。

    JBSロゴ
    Jordan Business Systems(JBS)について

    ヨルダンのアンマンに拠点を置くJBS(リンクはibm.comの外にあります)は、ビジネスに焦点を当てた統合ITソリューションをあらゆる規模の組織に提供するIBMのビジネス・パートナーです。JBSのクライアントは、スケールの柔軟性、広範なソリューションのポートフォリオ、20年以上のビジネスITに関するインサイトを備えたパートナーに信頼を寄せています。

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    脚注

    © Copyright IBM Corporation 2023. 日本アイ・ビー・エム株式会社 〒103-8510 東京都中央区日本橋箱崎町19-21

    米国製作2023年 3月

    IBM、IBM LOGO、IBM Cloud Pak、IBM Watson、およびNetezzaは、米国およびその他の国におけるInternational Business Machines Corporationの登録商標です。その他の製品名およびサービス名は、IBMまたは他社の商標である可能性があります。IBM 商標の最新リストは、ibm.com/trademark で入手できます。

    本書は最初の発行日時点における最新情報を記載しており、IBMにより予告なしに変更される場合があります。IBMが事業を展開している国であっても、特定の製品を利用できない場合があります。

    引用または説明されているすべての事例は、一部のクライアントがIBM製品を使用し、達成した結果の例として提示されています。実際の環境でのコストや結果の特性は、クライアントごとの構成や条件によって異なります。お客様のシステムおよびご注文のサービス内容によって異なりますので、一般的に期待される結果を提供することはできません。本書の情報は「現状のまま」で提供されるものとし、明示または暗示を問わず、商品性、特定目的への適合性、および非侵害の保証または条件を含むいかなる保証もしないものとします。IBM製品は、IBM所定の契約書の条項に基づき保証されます。