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ASTEX社は、IBM Cloud上でAIによる言語トレーニングを変革しています。
ヘッドホンを装着したカスタマー・サービスがノートPC上の誰かと会話中

「新しい言語を学べば、新しい魂が得られる」というチェコのことわざがあります。抽象的すぎるように思えるかもしれませんが、新しい言語の習得はチャンスにつながります。商談成立、昇進、海外勤務を実現するうえで、英語のスキルは多くの社会人にとってプラスになります。

スペインのマドリードに拠点を置くASTEX社の語学学校で学んだ修了生は、輝かしいキャリアを切り開いています。ASTEX社でキー・アカウント・マネージャーを務めるMacarena Uceda Márquez氏は次のように言います。「企業に勤める方々がここで学ぶのは、英語のスキルの向上やブラッシュアップを会社から求められるためです。生徒の中には、日常業務で英語が必要な人、顧客との応対が必要な人、米国の新しい管理要件に準拠する必要がある人、英語圏の国への移住を準備している人が多くいます」

ASTEX社の生徒の業種はさまざまです。トレーニングのニーズも、短期集中のイマージョン・プログラムから、特定の商品に関するセールス・トークの習得まで、多岐にわたります。生徒はまず、言語能力とクラスのレベルを評価するために、筆記と口頭のレベル・テストを受ける必要があります。このうち口頭テストは、生徒が予約を入れて、教師と電話で話していました。レベル・テストの所要時間は平均40–60分でした。

時間の節約

 

レベル・テストの平均所要時間を50分から10分に80%短縮

AIを活用した共創

 

AI駆動型の3つのMVP(実用最小限の製品)を4カ月で共創

次に、教師と生徒が一対一で話し合って、最適なクラスを決めます。そのためには、両者が打ち合わせの時間を調整する必要があり、また教師は膨大なコース・カタログの最新情報を常に把握しておく必要がありました。レベル・テストやコースのスケジューリングがあまりに面倒で時間がかかることから、受講を断念する人も大勢いました。生徒がラーニング・パスを選択した時点で、コースの内容は固定されており、カスタマイズのオプションはありませんでした。データによると、コースの修了後も学習プラットフォームの利用を続けている人はわずか10%でした。

ASTEX社は、AIの活用を通じて、生徒のオンボーディング・エクスペリエンスを合理化し、学習プランのパーソナライズを可能にし、人手への依存を減らしてプログラムの拡張性を向上させたいと考えました。IBMビジネス・パートナーのIvory Soluciones社は、AIソリューションの専門知識を持つIBMとASTEX社を引き合わせました。ASTEX社、Ivory社、IBMは緊密に連携し、IBM Cloud上で動作しIBM Watsonテクノロジーを利用するASTEX Language Innovationプラットフォームを開発しました。

今回の事例で言えば、AIを語学トレーニングに適用するためのパートナーとして、IBMの右に出る存在はありません。 Alfonso de la Torre氏 ディレクター ASTEX
生徒のエクスペリエンスをAIで刷新

学習プラットフォームの強化に向けたビジョンを明確化するために、ASTEXはデジタル・トランスフォーメーションのためのフレームワークであるIBM Garageとコラボレーションを行い、IBM Garage Enterprise Design Thinkingのワークショップに参加しました。「ワークショップの中では、生徒たちの困りごとを具体的に明らかにし、紙に書き出して、生徒のエクスペリエンスの向上について真のあるべき姿を見極めることができました」とMárquez氏は言います。

IBM Garage方法論は、ユーザー中心設計、アジャイル開発、戦略的な拡張に重点を置いています。そこでASTEX社は、すべての意思決定の中心に生徒を据えて、ワークショップの議論に多くの視点を取り入れました。生徒、教師、デザイナー、開発者、経営陣が集まり、ASTEX Language Innovationプラットフォームを改良する方法を話し合いました。

チームは、特に効果が大きいMVP(実用最小限の製品)を3つ特定しました。1つ目は、生徒のレベル分けについて従来と同じ正確な結果が得られる短縮版のレベル・テストを開発すること。2つ目は、生徒が24時間サポートを受けられるAIアシスタントを開発すること。3つ目は、リーディング、ライティング、リスニングという既存の学習スキルに加えて、デジタル・スピーキング練習の機能を提供することです。

ASTEX社はアーキテクチャー・ワークショップの中で、MVPをIBM Cloud上で構築することを決めました。コンピューティング・サービスの費用を抑え、デプロイメントを迅速化するためです。ソリューションは、マイクロサービス・ベースのハイブリッドなPlatform as a Service(PaaS)アーキテクチャーを基盤として、拡張性とレジリエンスを備えています。ASTEX社はそれぞれのMVPの機能の管理と改良を、システム全体に影響を及ぼすことなく個別に行うことができます。

3つのMVPではIBM WatsonのテクノロジーをAIのバックボーンとして使用しました。データサイエンティストは、IBM Watson StudioとAuto AIを使用して効率的なデータ・モデルを作成、管理、デプロイし、IBM Watson Machine Learningを使用してモデルを実行しました。

言語レベルの評価を迅速化

ASTEX社、Ivory社、IBMは、最初のMVPはわずか8週間で、2番目と3番目のMVPはその後2カ月で、それぞれ作り上げました。ASTEX社の開発者は新しいプログラミング言語を習得し、リーンでアジャイルな開発手法を取り入れました。開発チームはエクストリーム・プログラミングの手法を用いて技術的負債を解消し、ソリューションの機能を修正しました。週単位のイテレーション、振り返り、イテレーション計画ミーティングなど、アジャイルのセレモニーを活用して、チームは利害関係者からフィードバックを集め、ニーズに合わせてソリューションを更新しました。

最初のMVPの成果としては、生徒が受験するレベル・テストの所要時間が平均50分から10分へと80%短縮されました。IBM Watson Natural Language Understandingは、生徒の口頭試験と筆記試験に関して、例えば動詞と名詞の数など、表現の特性を抽出し分析することで解答を処理できます。

2番目のMVPであるASTEX Language Intelligence(Ali)は、ASTEXでの学習体験全体を通して生徒をサポートするデジタル・アシスタントです。Aliは、生徒の職業、英語を学ぶ理由、語学トレーニングに割ける時間を事前に尋ね、生徒のオンボーディングや適切なクラスへの配置を支援します。人間のような対話が可能なシステムであることから、生徒は自分の考えを自然に表現できます。

Aliは、授業の欠講や成績向上の道筋の発見など、事務作業の面でも生徒を支援します。進捗状況について生徒にフィードバックを返し、改善の余地を提示します。AliはIBM Watson Discoveryを使用して、生徒の興味やラーニング・パスに合った演習を推奨します。例えば、旅行に関心を示している生徒であれば、Aliは旅行に関する演習を取り入れるようにその生徒の学習課題をカスタマイズし、コンテンツの魅力を高めます。生徒はAliを24時間365日利用できます。

3番目のMVPであるデジタル・スピーキング練習は、IBM watsonx AssistantIBM Watson Speech to TextIBM Watson Text to Speechを使用しています。教師は、生徒のニーズに合わせて難易度が異なるテキスト・ベースや会話ベースの対話を作成できます。生徒はこうしたデジタル・チューターや会話練習を、バーチャル・ツールや電話を通じて24時間利用できます。

ASTEX社のチーム・メンバーは、ユーザー中心設計で優れた体験を得られたことを踏まえて、ASTEX Language Innovationプラットフォームのインターフェースにも同じアプローチを取り入れることを決めました。教師と生徒はアプリケーションのデザインや構成について意見を出し、IBMとASTEX社は、コンテナ化されたアーキテクチャーの他の部分には影響が及ばないという確信のもとで、自信を持って変更を加えました。新しいデザインは、より直感的で明快に利用できるものとなり、情報へのアクセスやリソースの発見がしやすくなりました。

他に類を見ないeラーニング

改良を加えた後のASTEX Language Innovationプラットフォームについて、ユーザーからのフィードバックは一様に肯定的です。核となるプログラムは同じですが、更新が加わった部分は既存のシステムとシームレスに統合されており、エクスペリエンス全体が強化されています。プラットフォームはこれまでより柔軟で、生徒ごとにプランをカスタマイズできます。この最適化によってユーザーのエンゲージメントが高まり、成果が向上しています。

この学習プラットフォームが備えているAI駆動型コンポーネントは革新的です。Márquez氏は次のように話しています。「語学学校業界でこのようなデジタル会話練習を提供しているところは他にありません。また、人々がチャットボットに慣れてきた現在は、アシスタントのAliも差別化要因ですが、機械を相手にこのような対話を実際に行えるというのは衝撃的な違いです」。Aliは機械学習機能を搭載しているため、インプットを得るごとに賢くなり続けます。さらに、単純作業はテクノロジーで自動化できることから、教師はより複雑な作業、さらには教えること自体に専念できます。

ASTEX社はプラットフォームを容易に拡張できるようになりました。Ivory社とIBMはこのプラットフォームの進化を支援していく予定です。ASTEX社のディレクターであるAlfonso de la Torre氏は次のように話しています。「ASTEX社が業界の規範としての座を守り続けるためには、テクノロジーと教育法のイノベーションで常に最前線にいることが鍵になります。私たちはこの点を常に明確に意識してきました。そこで当社はベストな委託先を選定し、継続的な進化に大きく投資しています。今回の事例で言えば、人工知能を語学トレーニングに適用するためのパートナーとして、IBMの右に出る存在はありません」

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ASTEX社とIvory Soluciones社のロゴ
ASTEX社について

ASTEX社(ibm.com外部へのリンク)は1986年設立で、あらゆる業種の企業の生徒向けに語学トレーニングのサービスを提供しています。語学学校はスペインのマドリードにあり、年間売上高は約3,000万ユーロです。

Ivory Soluciones社について

IBMビジネス・パートナーであるIvory Soluciones社(ibm.com外部へのリンク)の本社はスペインのラ・コルーニャにあります。設立は2007年で、ITコンサルティング、Web開発、デジタル・トランスフォーメーションを専門としています。

次のステップ

この記事で紹介されているIBMソリューションの詳細については、IBMの担当者またはIBM ビジネス・パートナーにお問い合わせください。

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© Copyright IBM Corporation 2021.IBM Corporation, IBM Services, New Orchard Road, Armonk, NY 10504

2021年8月アメリカ合衆国で制作

IBM、IBMロゴ、ibm.com、Enterprise Design Thinking、IBM Cloud、IBM Garage、およびIBM WatsonはInternational Business Machines Corp.の商標であり、世界中の多くの管轄区域で登録されています。その他の製品名・サービス名はIBMまたは他社の商標である可能性があります。IBMの商標の最新リストは、Webのibm.com/legal/copyright-trademarkで入手できます。

本書は最初の発行日時点における最新情報を記載しており、IBMにより予告なしに変更される場合があります。IBMが事業を展開している国であっても、特定の製品を利用できない場合があります。

記載されている性能データとお客様事例は、例として示す目的でのみ提供されています。実際の結果は特定の構成や稼働条件によって異なります。本資料の情報は「現状のまま」で提供されるものとし、明示または暗示を問わず、商品性、特定目的への適合性、および非侵害の保証または条件を含むいかなる保証もしないものとします。IBM製品は、IBM所定の契約書の条項に基づき保証されます。