Asan医療センター

スマート・ホスピタルを目指すデジタル・トランスフォーメーションの旅へ

「スマート・ホスピタル(IT技術で高品質な医療を実現する病院)」になるというビジョンを掲げ、Asan Medical Center(AMC、ソウルアサン病院)は、革新的なテクノロジーを採用することで、業務効率化とカスタマー・サービス向上を目指していました。AMCはIBM Services® と協力し、IBM Garage方法論を用いたインテリジェント・オートメーションにより、病床割当と入院患者の予約を自動化しました。これにより、AMCは病床を最大20分早く割り当て、病院スタッフの作業負荷を1日あたり3時間削減することができました。

ビジネス上の課題

医療業界は、コストを管理し、業務の非効率な面を改善しながら、より良い患者ケアを提供するために、速いペースで変化しています。Asan Medical Centerは、病院スタッフの作業負荷を軽減し、より価値の高いカスタマー・サービス業務に集中できるよう、病床割当手順を自動化したいと考えていました。

概要と経緯

IBM Servicesチームは、IBM Garage方法論を用いてAsan Medical Centerと連携し、複雑なワークフローを再構築し、インテリジェントな自動化を行うことで病床割当のプロセスを合理化しました。 自動病床割当プロセスの拡張として、ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)が、入院患者の登録、予約の変更・キャンセルなどの関連業務にも採用されました。

結果 0%
病床割当エラー率
20分間
患者への病床の割り当てを迅速化
3時間
自動化による1日当たりスタッフ1人当たりを削減
ビジネス上の課題
病床割当のうち複雑な反復的な作業を自動化

競争の激しい韓国の医療業界では、カスタマー・サービスや業務効率性が差別化の大きなポイントとなっており、テクノロジーはこれを実現するうえでますます重要な要素となってきています。

Asan Medical Centerでは患者中心の病院としての地位確立を目指し、 患者へのサービスを改善したいと考えていました。同院では、病院スタッフを複雑な手作業である病床割当の反復的な作業から解放できるチャンスがあることに気づきました。この業務では通常、新しい職員のトレーニングに数カ月かかります。AMCは、病床割当の重要なプロセスと複雑な基準を自動化したいと考えていました。

Asan Medical Center Deputy Director(病院長補佐)のWoo Ye-seon氏は次のように述べています。「病床割当には反復的な作業が多かったので、顧客の受付など、より重要な業務に取り組める十分な時間がありませんでした。そこで、スタッフの軽作業の労働時間を削減し、付加価値の高い受付やカスタマー・サービスに多くの時間を費やしたいと考えました」

病床割当には反復的な作業が多かったので、顧客の受付など、より重要な業務に取り組める十分な時間がありませんでしたそこで、スタッフの軽作業の労働時間を削減し、付加価値の高い受付やカスタマー・サービスに多くの時間を費やしたいと考えました。 Woo Ye-seon氏 Deputy Director(病院長補佐) Asan医療センター
概要と経緯
インテリジェント・オートメーションの活用

2018年初めに、 AMC企画調整部Director(部長)兼Professor(教授)のKim Jong-Hyeok氏 は、ニューヨーク州のIBM® Research Labを訪ね、人工知能、ブロックチェーン、IBM Watson®、インテリジェント・オートメーションなど、最も有望で革新的な技術を体験しました。Kim Jong-Hyeok教授は、病院におけるデジタル化と自動化のニーズや、選定した戦略的分野に適用した場合に患者と病院スタッフの体験を向上させる方法について、IBMチームと詳細を話し合いました。さらに、彼は付け加えました。「IBM WatsonやDesign Thinkingについて研究センタースタッフと話し合いましたが、彼らの働き方、新しいものを革新する方法と、チームワークには感銘を受けました」

その後、IBMグローバル・チームは、韓国のAsan Medical Centerを訪れ、3日間のデザイン思考ワークショップを開催しました。デザイン思考とは、創造的で実用的な方法で問題を解決するためのユーザー中心のフレームワークであり、現代の企業のスピードと規模に対応することができます。ワークショップ中、IBMとAMCのチームは、病院の問題点、現状の環境、将来のあるべき姿に向けた目標と優先順位を分析しました。これには、自動化に適した全部門の評価と、自動化を最も必要とする部門の選定が含まれます。Kim Jong-Hyeok教授は振り返ります。「物資、適切な治療、医療チームなどから、自動化に対する大きなニーズがあり、その中でまずはどのような業務を自動化で対応すべきかを話し合い、顧客体験や接遇業務に最も近い病床割当を自動化することに決めました」 

IBM ServicesとAsan Medical Centerは、IBM Garage方法論を使用して、35部門を対象とする12週間のプロジェクトに着手しました。プロジェクトの初期段階では、ユースケースを定義することに重点が置かれました。このステップには、業務プロセスと要件の確認、データ要件の定義と設定、病床割当業務のパフォーマンス評価基準の設定が含まれます。また、RPAを使用して自動化できる可能性のある業務を分析し、テスト対象の候補を2つ選定しました。

次の段階では、IBM Servicesチームが病床割当業務のすべてのワークフローとルールを分析しました。冗長性を排除して効率を向上するために、複雑なワークフローを再構築し、病床割当の新しいルールを定義しました。インテリジェントなワークフローを活用して、さまざまな基準の複雑な相互作用に基づき病床を割り当てる自動システムが考案されました。これには、患者の希望、手術スケジュール、患者の特殊な状況、各診療科の予約状況、さらには各患者のニーズを満たすために医療スタッフが移動しなければならない距離などの要素も含まれています。 

自動病床割当プロセスの延長として、入院患者の登録や予約の変更・キャンセルなどの関連業務にRPAを適用しました。

インテリジェントなワークフローがフロントオフィスとバックオフィスのデータとインサイトを把握し、医療従事者が管理業務を迅速かつ効率的に処理できるようになることで、Asan Medical Centerの効率的な運営に大きな変化が起きている様子を見られて嬉しく思っています。 Kim Min-jung氏 Global Business Services Head(統括責任者) IBM Korea
結果
顧客とスタッフの満足度の向上

病床割当業務へのインテリジェント・オートメーション導入により、Asan Medical Centerでは業務効率が向上し、より良いカスタマー・サービスを提供できました。12週間にわたるプロジェクトの中で、入院患者全体の約55%を処理した選ばれた35の医療部門で、病床割当作業エラー率は0%でした。手動のシステムと比べ、病床割当までの時間は最大20分短縮されました。患者の登録に関わっていたAMCスタッフは、毎日約3時間を削減できたため、患者のケアに専念できる時間が増えました。

現在、1日あたり100件を超える入院登録が人の手を介さずに処理されています。医療従事者が歩いた距離さえも病床割当システムに反映されることを考慮すれば、患者の回診もさらに効率的になります。AMC企画調整部Director(部長)兼Professor(教授)のKim Jong-Hyeok氏 は付け加えました。「短期間のうちに、自動病床割当とRPAによって作業効率が向上し、スタッフ満足度の向上も実現することができました。以前は患者登録に携わっていた各スタッフは、1日あたり3時間を削減できるようになる見込みです」

インテリジェントなワークフローは、自動化、最適化、個別化されているだけでなく、動的でもあり、簡単に柔軟に拡張して新しい価値を生み出すことができます。これにより、AMCはプロセスをエンドツーエンドで繋げ、サイロを排除し、機能を横断して新しい成果を明らかにすることができます。IBM Korea、Global Business Services Head(統括責任者)Kim Min-jung氏は付け加えます。「インテリジェントなワークフローがフロントオフィスとバックオフィスのデータとインサイトを把握し、医療従事者が管理業務を迅速かつ効率的に処理できるようになることで、Asan Medical Centerの効率的な運営に大きな変化が起きている様子を見られて嬉しく思っています。日常業務を自動化することで、このシステムでは病院職員が他の業務に多くの時間を費やすことができ、患者ケアの改善に集中できるようになります」

AMCは、スマート・ホスピタルになる、というビジョンを掲げ、画期的なテクノロジーを用いてイノベーションを続けることを目指しています。Kim Jong-Hyeok教授は結論づけています。「将来的には、よりスマートで自動化された病院のプロセスを作る業務がさまざまな分野に拡大していくでしょう。研究や教育だけでなく、保険請求や看護師の配置、資材関係の仕事など、医療分野にも応用できると思います。最終的には、Asan Medical Centerの医療サービス全体をよりスマートにすることが可能になるのではないかと考えています」

短期間のうちに、自動病床割当とRPAによって作業効率が向上し、スタッフ満足度の向上も実現することができました。以前は患者登録に携わっていた各スタッフは、1日あたり3時間を削減できるようになる見込みです。 Professor(教授)、Kim Jong-Hyeok氏 企画調整部Director(部長) Asan医療センター
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Asan Medical Center(ibm.com外部へのリンク)は、約85,000平方メートルの敷地に合計2,705床を有する韓国最大の医療機関です。Asan Medical Centerは、1989年6月の設立以来、研究開発と臨床治療に積極的に投資を続け、世界トップクラスの医療評価を獲得してきました。医療業界の世界標準となり、韓国の医療発展のリーダーとして地位を確立することを目指しています。経験豊かな専門家と最先端の設備の助けを借りて患者を治療することで、韓国の医療開発分野をリードしてきました。その結果、Asan Medical Centerは、1日平均で外来患者1万1,885人、入院患者2,540人、救急患者328人を診察し、年間約6万7,228件の複雑な手術を行っています。現在、Asan Medical Centerは、韓国で最も来院数の多い病院として知られています。

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2020年7月 インドで作成

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