アブダビはアラブ首長国連邦（UAE）の7つの首長国の中で最大の面積と人口を誇り、世界で最も豊富な炭化水素の産地のひとつでもあります。世界で確認されている石油埋蔵量の9％近くと天然ガス埋蔵量の5％が、アブダビの砂漠や海域の奥深くにある炭酸塩岩の中に眠っているのです。
ADNOCは世界最大級の石油・ガス生産会社です。同社は、業務を最適化し、リカバリーを強化し、意思決定を改善するために、ビジネスプロセスにAIを組み込むことの価値を理解しています。ADNOCはAIの導入を主導し、アブダビの炭化水素貯留層の調査方法を合理化しています。
ADNOCのような石油生産者は、最小限の井戸、最小限の水の使用、最小限の支出によって石油回収効率を最大化しようとしています。この目標に向けて、エンジニアはデジタル貯留層シミュレーションモデルを構築し、貯留空間（孔隙率）、流動能力（浸透率）、石油量（潜在的回収率）などの貯留層の挙動をテストするのです。このモデルを使用することで、エンジニアは坑井の間隔、坑井の種類、坑井の数、圧力維持方式などのさまざまな開発特性を検討することができます。
ハイケイパビリティ
IBM Watson®ソリューションは1秒あたり527件の分析が可能
画像の分類
ADNOCに1日あたり最大25000枚の画像を分類する機能を提供
経営陣の数十億ドル規模の現場開発の意思決定のために使用される貯留層シミュレーターの予測精度の基盤は、地質モデルの精度です。地質学は、1793年の現代地質学の誕生以来ほとんど変わっておらず、ゆっくりとした労働集約的なプロセスを用いて、光学顕微鏡で得られた視覚的な微視的な岩石の説明に頼っています。
さらに、数十年の経験を持つ石油鑑定士が退職すると、ADNOCはその人の蓄積された経験を失うことになるのです。また、ペースの速い、高度に技術的な職業がたくさんある中で、石油鑑定士になることを選ぶ若者はほとんどいないのです。このような理由から、ADNOCは、専門家の経験を維持し、プロセスを強化する方法を模索していました。
過去数年間、IBMは中東の石油・ガス・石油化学産業におけるインダストリー4.0イニシアチブに注力し、デジタル・トランスフォーメーション・プログラムを主導してきました。IBMは、AI、機械学習、産業用モノのインターネット（IoT）、サイバーセキュリティ、ブロックチェーンを中心とした実用的なパートナーシップを通じて価値の提供に努めていることもあり、この地域の国営石油会社との提携は最優先事項となっています。
同時に、ADNOCの地球科学チームリーダーであるHani Nehaidと彼のチームは、AIを使用して薄片説明プロセスを強化および加速することを検討していました。そのため、Nehaidが、テクニカルセンターの岩石物理学者であるDouglas Boydおよびテクニカルセンターの地質学者（岩石学者）であるHesham Sheblとともに、業界の夕食会でIBMの担当者に出会ったとき、AIとWatsonのソリューションを活用してvisual recognitionテクノロジーでこの課題に対処する可能性について、互いに関心を抱くようになったのです。
Boydは次のように説明します。「私たちは、この目標をどのように追求できるかについて、IBMの担当者と短い話し合いをしました。まず、データ・サイエンティストと協力してプラットフォームを繰り返しトレーニングしました。次に、概念実証として分析できるよう、小さなサンプルセットを準備しました。これにより、最も経験豊富な岩石学者と同等の非常に正確な結果が得られたのです。私たちは非常に感銘を受け、そこから全てが始まったのです。」
このケースでは、IBM Industry、IBM Services®、およびIBM Cloud®部門の代表者で構成されるIBMチームがADNOCと協力して、複数フェーズのプロジェクトの第1フェーズを開始しました。彼らは協力して、コグニティブイメージ認識、自然言語処理、回帰などのAI主導のエレメントを採用し、単純なタスクから徐々に難しいタスクに移行しました。研究チームは4週間かけて、IBM Watson Visual Recognitionサービスで、2次元（2D）の岩石画像に視覚的特徴に応じたラベル付けをさせるトレーニングを行いました。
プロジェクトが進むにつれて、チームはWatsonソリューションをトレーニングして、画像から追加情報を抽出する予定です。Sheblは次のように説明します。「アブダビの地下から取得した岩石画像の薄片データを大幅に拡張したいと考えています。私たちが行う管理および開発に関する決定の多くは、岩石学者が行うプロパティーと解釈に基づいています。使用できるデータポイントが多ければ多いほど、モデル、開発計画、そして最終的な炭化水素回収がより良く、より効率的になります。これが私たちの業界の成功の基本です。」
ADNOCは地質調査を強化するためにAIを活用し、すでに成果を上げています。岩石サンプルの掘削とスキャンは手動プロセスのままである必要がありますが、画像分類は現在では高速かつ自動化されて行われています。Watsonは1秒あたり527枚の画像を分析できるので、単一の貯留層から採取されたすべてのサンプルの分析にかかる時間は数か月から、わずか数分に短縮しました。
Nehaidと彼のチームは、分類速度の向上以外にも、AI主導のWatsonソリューションの他の重要な利点をすでに実感しています。分析時間が大幅に短縮されたことで、ADNOCはより多くの井戸から多くの岩石サンプルを評価し、より決定的なデータを生成することができるのです。その結果、より正確で効果的な地下モデルが得られることにつながります。
このソリューションにより、一貫性も向上します。「経験レベルの異なる2人の地質学者は、岩石の説明の正確さのレベルも異なります。IBM Watsonを使用することで、説明と解釈が常に専門家レベルで、何年にもわたって一貫性が保たれるようにしています。」とNehaidは語ります。同氏はさらに「これらの要因により、当社の地下モデルが強化され、その結果、リスクが大幅に軽減され、数十億ドル規模のフィールド開発におけるより適切な投資判断がサポートされることになるのです。」と続けています。
IBM WatsonのAIライブラリーは、新しい専門家のスピードを向上させるために何年もかかるプロセスを経ることなく、同社の石油鑑定士の数十年の経験を維持する方法をADNOCに提供しています。「このソリューションにより、地質学者はモデル生成に集中できる時間を確保できるとともに、専門家のナレッジとエクスペリエンスを機械に転送できるため、彼らの経験を次のステップに移した後に活用することができます。」とNehaidは述べています。
Nehaidと彼のチームはプロジェクトの将来について楽観的です。「最終的には、機械学習が代表的な地質モデルを作成するプロセス全体を支援し、地下を明確に理解するのに役立つと考えています。最先端の技術と革新的なパートナーシップにより、油田寿命末期の回収率を70％まで高め、最終的にはより収益性の高いADNOCの上流部門を作るという戦略的目標の達成に役立つ開発計画を立てることができるのです」とSheblは語ります。
IBMも、ADNOCとの提携の成功に勇気づけられています。IBM中東およびアフリカのコグニティブおよび分析プラクティス・リーダーであるTalal Malasは次のように説明しています。「私たちは、AIは人間と機械のパートナーシップであると考えています。地質学者や岩石物理学者をエミュレートして、岩石サンプルを巨大な規模で高精度に分類する認知地質学におけるADNOCとのこのイニシアチブは、化学および石油業界で最もエキサイティングなユースケースの1つです。これは、AI がどのように生産性を向上させ、高度なスキルを持つ専門家をより価値の高い活動に解放するかを示す完璧な例と言えるでしょう。」
また、IBM中東・アフリカの工業製品・化学品・石油産業担当インダストリー・リーダーであるYahya Mahmoudは、次のように付け加えました。「IBMでは、当社にとって、そして世界にとって重要なイノベーションが重要であると信じています。私たちは、クライアントの成功に重点を置き、献身的にオリジナルのアイデアを生み出すことに挑戦します。ADNOCとIBMのパートナーシップにより、これらの価値が実現されたのです。バリューチェーン全体が地球科学から構築されているので、直感的にそこから始めました。私たちは、炭化水素の回収を強化するために地下からより多くのデータポイントを利用するソリューションをさらに開発するというADNOCの熱意を共有しているのです。」
1971年に設立されたADNOC外部リンク（ibm.com外部へのリンク）は、エネルギーと石油化学企業の主要な多角化グループです。毎日約300万バレルの石油と105億立方フィートの原料ガスを生産しています。アップストリーム、ミッドストリーム、ダウンストリームの統合された活動は、14の専門子会社と合弁会社によって行われています。
法務
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2021年7月、米国で制作。
IBM、IBM LOGO、ibm.com、IBM Cloud、IBM Services、およびIBM WatsonはInternational Business Machines Corp.の商標であり、世界中の多くの管轄区域で登録されています。その他の製品名およびサービス名は、IBMまたは他社の商標である可能性があります。IBM商標の最新リストは、ウェブ上の「著作権および商標情報」 https://www.ibm.com/jp-ja/legal/copytradeで入手できます。
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記載されている性能データとお客様事例は、例として示す目的でのみ提供されています。実際の結果は特定の構成や稼働条件によって異なります。本書の情報は「現状のまま」で提供されるものとし、明示または暗示を問わず、商品性、特定目的への適合性、および非侵害の保証または条件を含むいかなる保証もしないものとします。IBM製品は、IBM所定の契約書の条項に基づき保証されます。