iSCSI の概要

iSCSI は、IP ネットワーク経由で SCSI コマンドを伝送することによりホスト・アクセスをサポートする、データ転送用の IP ベースの規格です。 iSCSI 規格は、RFC 3720 によって定義されています。

IBM Spectrum Virtualize™では、iSCSI 接続ホストからノードへの接続がサポートされています。 また、 IBM Spectrum Virtualize ノードから Storwize® ファミリーIBM Spectrum Accelerate™、および外部ストレージ・システムとして使用される Dell EqualLogic システムへの iSCSI 接続もサポートされます。

表 1 は、類似のコンポーネントを持つ iSCSI 用語とファイバー・チャネル用語を示しています。

表 1. iSCSI コンポーネントとファイバー・チャネル・コンポーネントの比較
iSCSI コンポーネント ファイバー・チャネル・コンポーネント
iSCSI ホスト・バス・アダプター ファイバー・チャネル・ホスト・バス・アダプター
ネットワーク・インターフェース・コントローラー (NIC) および iSCSI ソフトウェア・イニシエーター ファイバー・チャネル・ホスト・バス・アダプター
IP スイッチ ファイバー・チャネル・スイッチ
IP ルーター
iSCSI 名、例えば IQN (iSCSI 修飾名) または EUI (拡張固有 ID) WWNN (ワールド・ワイド・ノード名)

iSCSI イニシエーターおよびターゲット

iSCSI 構成では、iSCSI ホストまたはサーバーが要求をノードに送信します。 ホストには 1 つ以上のイニシエーターが含まれており、これが、IP ネットワークに接続し、iSCSI ターゲットに対して要求を開始し、ターゲットから応答を受け取ります。 各イニシエーターおよびターゲットには、iSCSI 修飾名 (IQN) または拡張固有 ID (EUI) のような固有の iSCSI 名が与えられています。 IQN は、223 バイトの ASCII 名です。 EUI は、64 ビットの ID です。 iSCSI 名はワールド・ワイドの固有の命名方式を表します。この方式では、ファイバー・チャネル・ファブリック内のデバイスを識別するためにワールド・ワイド・ノード名 (WWNN) が使用されるのと同じ方法で、各イニシエーターやターゲットが識別されます。

iSCSI ターゲットは、iSCSI コマンドに応答するデバイスです。 iSCSI デバイスは、ストレージ・デバイスのようなエンド・ノードでも、IP デバイスとファイバー・チャネル・デバイスの間のブリッジのような中間デバイスでも構いません。 各 iSCSI ターゲットは、固有の iSCSI 名で識別されます。 IBM Spectrum Virtualize は、1 つ以上の iSCSI ターゲットとして構成できます。

IP ネットワーク経由で SCSI コマンドを伝送するには、iSCSI ドライバーが iSCSI ホストとターゲットにインストールされている必要があります。ドライバーは、ホストまたはターゲットのハードウェア内のネットワーク・インターフェース・コントローラー (NIC) または iSCSI HBA を介して、iSCSI コマンドおよび応答を送信するために使用されます。

パフォーマンスを最大にするために、iSCSI ホストと iSCSI ターゲット間の接続には、 1000 メガビット/秒 (Mbps) の伝送能力を持つギガビット・イーサネット・アダプターを 使用してください。

iSCSI ホスト接続オプション

図 1 は、イーサネット・ネットワーク経由で IBM Spectrum Virtualize に接続する iSCSI ホストを示しています。
図 1. TCP/IP 経由の SCSI 送信
iSCSI ローカル SAN
図 2 は、iSCSI ホストはまだイーサネット・ネットワークに接続されていますが、ブリッジまたはゲートウェイがファイバー・チャネル・ネットワーク上で接続を続行している例を示しています。 ブリッジまたはゲートウェイは、イーサネット接続とファイバー・チャネル接続の間の変換機能を果たし、iSCSI ホストが IBM Spectrum Virtualizeを iSCSI ターゲットとして検出できるようにします。
図 2. TCP/IP およびファイバー・チャネル相互接続の両方を介した SCSI の伝送
この図は、iSCSI 異機種混合の IP SAN を示しています。

iSCSI マルチセッション・サポート

マルチセッション・サポートまたはホスト・レベルのマルチパス・サポートは、iSCSI イニシエーターとターゲット間の複数のパスを提供します。これは、高可用性とロード・バランシングに便利です。

一部の製品では、iSCSI イニシエーターが、ターゲット名でログインするのではなく、ターゲットの固有の IP アドレスでログインすることが必要です。 それらの製品においてターゲット名でログインすると、iSCSI イニシエーターは、ターゲット内のすべての IP アドレスにログインし、セッションが再インスタンス化され、その結果、以前のログインのセッションが失われます。

IBM Spectrum Virtualize は、単一サブネットのマルチセッション構成、および複数および二重サブネットのマルチセッション構成を提供します。これらの構成では、ターゲット名へのログインに対する制限がなくなります。 iSCSI イニシエーターは、ログインにインターネット・ストレージ・ネーム・サービス (iSNS) サーバーを使用するので、iSCSI ターゲットとそれらの IP アドレスのディスカバリーが可能になります。

  • iSCSI セッションは、iSCSI イニシエーターのノード・ポートと iSCSI ターゲットのノード・ポートとの間の TCP 関係です。 これが確立されたら、iSCSI 制御、データ、および状況メッセージがセッションを介して伝達されます。
  • 各セッションは、複数の iSCSI イニシエーター名とターゲット名に、iSCSI イニシエーター・セッション ID (ISID)、さらにターゲット・ポータル・グループ・タグ (ターゲット・サイド ID) を加えたもので識別されます。
  • IBM Spectrum Virtualizeマルチセッション方法では、複数のイニシエーター・インスタンス (別々の ISID) 間で、iSCSI ターゲット内の単一ターゲット・ポータル・グループとの関係を持ちます。 この方法は、同じ iSCSI イニシエーター・デバイスからの複数の SCSI イニシエーター・ポートが、単一の SCSI ターゲット・ポートとの関係を持つことと似ています。

iSCSI ストレージのサポート

このシステムは、外部ストレージ・システムとして使用される Storwize ファミリーおよび Dell EqualLogic システムとの iSCSI 接続をサポートします。特定の構成については、iSCSI 接続を使用した外部ストレージ・システムの構成を参照してください。

iSCSI コントローラーのディスカバリーおよびパス構成は、以下の要領で行われます。

  • ターゲット IP のみを指定し、iSCSI ターゲット・コントローラーに対してディスカバリー要求を発行する
  • ターゲット・コントローラーが、そのコントローラー上のすべての構成済み iSCSI 修飾名 (IQN) のリストを戻す
  • ディスカバーされたターゲット IQN への接続を確立する