テクノロジー・リーダーシップ
きっと未来には今の自分が予想していないキャリアが開ける
2022年9月27日
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IBM Cloudの進化と共に広がったキャリア
「IBMってクラウドやっていたんだね。」
私がクラウド事業部に配属となった2015年当時、異動の話を周囲にするとそんな声を聞くことがありました。2013年にIBMがSoftLayer社を買収してIBM Cloudのインフラストラクチャー・サービスの原型となるサービスが始まり、2014年に東京データセンターが開設され1年が経とうとしていた頃です。
クラウド事業部はどんどん人員を増やしていました。次のキャリアを模索していた時期に出会ったのが、クラウドのオファリング・マネージャーの仕事です。海外で開発されたクラウド・サービスを日本の市場に展開していく役割でした。
ITスペシャリストとして新卒でIBMに入社後、アプリケーションの開発経験はあるものの、サーバーを構築した経験はなく、ましてやクラウドの知識はゼロの状況で、「ベアメタルサーバー」や「プロビジョニング」など初めて聞く用語の意味を学ぶところからの始まりでした。
とはいえ、IBM Cloudの知識は、『IBM Cloud柔らか層本』をはじめとする有益な書籍とインターネットで、必要となる情報を学ぶことができたことは大変ありがたかったです。そして、次々とリリースされる新しい機能やサービスを学んでいるうちに、クラウド・チームの一員として馴染んでいきました。
クラウド事業部に配属となった翌年の2016年には、IBM生まれの開発者向けプラットフォーム・サービス(PaaS)であるBluemixと「ベアメタルサーバー」が特長であったSoftLayerを統合し、2017年に「IBM Cloud」とブランド名称を改め、現在に至ります。
さらに、東京データセンターが3つのデータセンターからなるマルチリージョンに拡張され、大阪データセンターも開設されました。IBM Cloudとして生まれ変わり拡張して行くサービスと共に、私自身も社内外の問い合わせに対応することで鍛えられ、成長できたと思います。
振り返ると、2015年当時、日本国内におけるクラウド・サービスの市場は既に1兆円を超えており、利用されているクラウドはAWSとMicrosoft Azureの2つを合わせて5割を占めていました。IBM Cloudが大きく出遅れてしまっていたのは事実です。その後も、せっかく知名度の上がってきた「SoftLayer」から「IBM Cloud」へブランド名称を変更したことで、「IBM はクラウドやめちゃうみたいだよ。」と、意図しない噂が流れて焦ったことを覚えています。
ただ、実際には、1社でひとつのクラウド・ベンダーとしかお付き合いのないお客様は少なく、複数のクラウド・サービスを利用するマルチ・クラウドは当たり前となっています。なぜなら、それぞれのクラウド・サービスは得意分野が異なるからです。
IBM Cloudの特長は、「企業向けの最もオープンで安全なパブリッククラウド」です。自社のニーズに合うパブリッククラウドを評価する際、「特定のクラウド・ベンダーにロックインされて抜け出せなくなってしまうこと」「全てを自社システムで対応していた頃と比較して一部でもデータを外に出す事でセキュリティー上のリスクがあること」「大企業・中堅企業・官公庁のビジネスに果たして耐えうるクラウドなのかを判断ができないこと」について、お客様は懸念される傾向があります。その点、IBM Cloud は、「オープン・イノベーション」「セキュリティーのリーダーシップ」「エンタープライズ・グレード」という 3 つの重要な原則の上に構築されているため、自信を持ってお勧めできます。
もう少し詳しく説明しますと、「オープン・イノベーション」の点では、IBM は数十年にわたりオープンソースへの多大な貢献を行っています。コンテナ・アプリケーションを作成するための IBM の DevOps ケイパビリティーはオープンソース・コード上に構築されており、オープンソースの Linux オペレーティング・システム (OS) をお客様に提供します。IBM は、オープンソースを基盤とする企業 Red Hat の買収に多大な投資を行いました。
「セキュリティー」の点では、IBM Cloud は米国連邦情報処理規格 (FIPS) 140-2 レベル 4 の暗号化を提供します。この最高レベルの暗号化により、IBMおよび政府機関でさえお客様のデータの暗号化を解除することができなくなります。
「エンタープライズ・グレード」の点では、IBM は VMware、SAP、Oracle のエンタープライズ・ワークロードを実行する、非常に高い高可用性を備えた IBM Power Systems と x86 の両方を提供します。そして今注目を浴びている量子コンピューターにおいても、IBM Cloudのアカウントをお持ちのお客様であれば、現時点で従量課金サービスとして27量子ビットのFalconプロセッサー2台へのアクセスが可能となっており、今後も継続的にサービスの拡張が計画されています。
このような3つの重要な原則の上に 構築されているクラウドとしてIBM Cloudの信頼は厚く、多くのお客様の基幹システムを預かるクラウドに成長しています。
少しずつ実現していく学生の時からの夢
私がIBMに入社した動機は、グローバル企業で将来は海外で活躍するチャンスがあるのではないかと思ったことと、研修体制がしっかりしているので文系である自分もITの専門家になれる知識を習得できると思ったからです。
入社した翌年の2月には長野オリンピックが開催され、スポンサー企業のプロジェクト・メンバーとして、私も長野県で働く機会を得ました。表彰式会場近くの小さな仮オフィスには、半分が日本IBM、もう半分が世界各国からのIBMメンバーという、正に私が理想と思い描いていた職場でした。英語で仕事のコミュケーションをする事に興奮していたことを今でも覚えています。
しかし、長野オリンピックが終わって配属先での仕事が始まると、大手金融機関であるお客様のオフィスでプログラムを開発する日々に変わりました。お客様はまるで後輩に教えるかのように、プログラムの設計からテストの仕様書の作成まで丁寧に指導してくださいました。大変恵まれた職場環境であったと今でも思うのですが、どうしても海外で活躍したい、英語を使った仕事がしたいという気持ちが強くなり、3年後に希望して社内システムの部署に異動し、プロジェクト・マネージャーとしてのキャリアをスタートしました。その後、世界的なプロジェクト管理の資格であるPMPを取得しています。
IBMの社内システムは世界中の人たちが関わっており、プロジェクトによっては毎日電話会議をし、メンバーが日本に来て一緒に仕事をすることもありました。
あるプロジェクトが佳境の時に、しばらく闘病していた私の母が亡くなりました。覚悟はしていたものの、やはりショックを受けていた私に、日本だけではなく海外のメンバーからも心温まるメッセージが次々に届きました。一度も会ったことのないメンバーもいましたが、すごく近くにいて支えられたように感じたことを覚えています。無事にプロジェクトがサービスインをし、お祝いのイベントが開かれる中、プロジェクト・オーナーがスピーチの最後に、”Yuri. Your mother is so proud of you.” と言ってくださったことは今でも忘れられません。
現在も、時にはイヤになるほど、グローバルのメンバーとコミュニケーションを取って共に働いています。オンラインミーティングが当たり前になったので、メールだけではなく会話をする機会も多くなりました。
海外を飛び回るまでにはなっていませんが、海外のIBMerと共に働ける環境にいられることで、少しずつですが学生の頃の夢が叶ってきているなと感じています。
コミュニティー活動で見つけた自分自身の可能性
現在は、SME(Subject Matter Expertの略称)と呼ばれるIBM Cloudの専門家とオファリング・マネージャーが所属する部を担当しています。初めの頃は、私がクラウド初心者だった頃に一から指導くださった先輩や、自主学習で使っていた『IBM Cloud柔らか層本』の執筆者たちのいるチームをまとめられるのか、という不安がありました。ただ、それも一緒に仕事をしていくうちに解消され、上司や横並びのマネージャー、そしてメンバーに支えられて毎日楽しく働いています。
私には現在、大学受験と高校受験を控える2人の息子がおりますが、子供たちが小さい頃は育児を優先しており、私のキャリアは同期から比べてもスローペースでした。そして、今でこそ、女性のライン管理職は当たり前の存在になりましたが、私がIBMに入社した25年前には、とても珍しい存在でした。少なくとも、当時、私の所属していた部署では周りを見渡しても、女性の所属長は一人もおらず、自分が将来ライン管理職に就くということは想像ができませんでした。
そんな私の意識が大きく変わったのは、日本IBMの女性技術者のコミュニティーであるCOSMOSとの出会いです。コミュニティー活動を通じて、社内の様々な部署から集まった女性管理職メンバーが助け合える仲間となっていき、雲の上の存在だった技術理事や執行役員であるCOSMOSコミュニティーのリーダーやアドバイザーが身近な存在となりました。
COSMOSのコミュニティー活動は若い時から知っていましたが、コアメンバーとして選ばれるような人は「とてつもなくすごい人」「私とは違う人」なんだという印象を持っていました。しかし、実際に自分もそのメンバーのひとりになると、抱いていた印象は単なる自分の思い込みだとわかりました。美味しいものとおしゃべりとお酒が大好きで、時には子供たちの受験話などで盛り上がり、様々なことで悩みながらも前に進んでいこうと奮闘している女性たちばかりです。「自分とは違う世界の人」が「大切な友人」に変わると同時に、「特別なマネージャー職」が「自分にも担える役割」に意識が変わっていきました。そして、COSMOSでの私の活動を見守ってくださったアドバイザーが自分の上長となり、キャリアの相談に乗っていただいたことも大変ありがたかったです。COSMOSコミュニティーとの出会いは確実に私のキャリアを良い方向に変えていってくれたと、今も感謝しています。
まだ学生だったり、社会人経験が浅かったりすると、自分の将来の姿を思い描くことは難しいかもしれません。とはいえ、若い人たちの可能性は無限大です。自分でも想像していなかった未来がきっとあります。ぜひ、コミュニティー活動などを通して様々な人とつながり、いろいろな経験をして、キャリアを切り開いていって欲しいなと思います。
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