ITコラム

第3回 紛争事例に学ぶ「ITユーザーの心得」

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この連載では、3回にわたり日本IBMとのコラボレーション企画として、複雑なクラウド環境やデータ環境が引き起こす紛争の事例をご紹介します。

※本記事は、2019年8月に EnterpriseZine(エンタープライズジン)にて掲載の転載です。

第3回のテーマは、データの移行の責任が問題になった事例

この事例はクラウドではないのですが、クラウドでも参考になる事例と思います。

 

【紛争事例-3】データ移行の責任は誰が負うのか?

オンプレミスのシステムからクラウドサービスへ移行する際、問題となるのが旧システムからのデータ移行です。これはクラウドに限らず、 新しいシステムを作る際には、通常、新しい機能をリリースし、OSや データベースも刷新する場合が多いです。ですので、中に格納する データの構造や項目の詳細も、これに合わせて変えるのが普通です。 また、これまでシステムになかった新しいデータを登録しなければならないことも、しばしばです。

すると当然、このデータ移行や登録は誰の責任で行うのか?ということが問題になります。まず、クラウド事業者自身は、こうしたデータ移行について責任を持つというサービスを行ってはいないのではないでしょうか?(私自身、全てのクラウド事業者のサービスメニューを知っているわけではありませんが、少なくとも私が、今まで行ってきたクラウド利用について言えば、そうしたサービスを行ってくれるところはありませんでした)従って、多くの場合、ユーザ企業が直接クラウドサービスを利用する 場合には、このデータ移行や登録を自分達で行わなければなりません。実際には旧システムの運用・保守事業者などに依頼してデータ を取り出してもらうにしても、決められた期限までに正確なデータを取り出す責任はユーザ企業自身にあります。

仮にクラウド上の新システムを構築してくれるSireがいる場合には、この業者にデータ移行や登録を依頼し、サービスとして請け負うSIerもいるでしょう。それでも、少なくともデータの取り出しの部分はユーザ―企業の責任下で行われることが少なくありません。古いデータというのは、例えば外字が使われていたり、データにゆらぎ(一丁目一番地を 1丁目1番地と表現していたり、1-1と書いてあったり)があったりしますし、 業務上必要なデータと不要なデータも混在している場合もあります。

そうしたことへの対処を判断しながら、本当に業務に使えるデータに仕上げていくには、実はユーザ自身がこれを行った方が早くて正確だからです。今回、ご紹介する判例は、クラウドではありませんが、やはりこうしたデータの移行の責任が問題になったトラブルについてです。まずは事件の概要からご覧いただきましょう。(要登録)

3回シリーズ「紛争事例に学ぶ」

第1回「プロバイダー側のミスなのに…クラウド上のデータが滅失、ユーザーが払った代償は?」
第2回「品質が期待以下だった場合、クラウドサービスは途中解約できるのか?」

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