ダイバーシティー&インクルージョン

「男性視点を取り入れた」IBMの新しい女性活躍の推進活動

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女性がキャリアを継続していく上で直面する、さまざまな課題を社員自らが確認し、目標を掲げ、結果に結びつく施策を提言していくために、日本IBMでは1998年に「Japan Women’s Council(※以降JWCと称する)」を発足しました。「意識改革、スキル改革、働き方改革」を3本柱とし、社内の女性活躍の推進活動を実施しています。また2019年からは男性もメンバーとして参加。このブログでは、前回のテーマ「女性活躍推進」に、新メンバーの男性視点を取り入れたJWCの活動をご紹介します。

 

「インクルージョン(*)」を目指すことで各個人が享受できるメリット

デジタル化・グローバル化がハイスピードで進む中で、よりインクルーシブな社会になっていかなければならない、企業も多様な側面で(たとえば、制度設計、考え方、ジェンダー、LGBT、障がい者など)でのインクルージョンが求められている、とIBMでは考えています。(*インクルージョン:全てを含んだ、排他的ではない状況)

同質傾向の人が集まった場合、同じ軸による均一的な評価に偏りがちですが、多様な個性をもつ人々が集団に参加することによって、新しいアイディアも生まれますし、競争の原理も変わってきます。評価軸が変わることは、個々それぞれが仕事以外の選択肢を増やすことにつながり、ご自身の人生を、より彩り豊かに楽しんでいけるのではないでしょうか。

先日、発表された2019年の「ジェンダー・ギャップ指数」では調査対象153カ国のうち、日本は過去最低の121位でした。まだまだ、私たちに何ができるのかを探る中、日本IBMで新しくスタートしたのが「JWCに初の男性メンバーが参加する」という取り組みです。

現在JWCはIBM社内30名で構成され、21年の歴史の中で初めて男性6名がメンバーに加わりました。男性社員が参画したことは「女性の視点だけで女性活躍推進を目指していく」のではなく、「インクルージョンと“Be Equal”を体現するため」の取り組み施策に向けた、より多様な視点を増やすことになります。

新規男性メンバーは、「柔軟性」と「ダイバーシティー&インクルージョン推進への貢献ポテンシャル」をもとに、選抜されました。代表して、グローバル・ビジネス・サービス事業本部にてコンサルタントをしている、鹿内と吉崎に話を聞いてみました。

鹿内:はじめて男性一人だけという環境に置かれて

鹿内 一郎

鹿内 一郎
パートナー業務変革
BPO事業部長

数年前、女性だけのリーダー育成研修にパネラーとして男性一人だけ呼ばれたことがあります。普段からあまり性別や国籍といった違いを意識しておらず、ダイバーシティーを真剣に考えたこともない中で、女性陣の前で発言を求められた際、はっと考えさせられました。

「女性が何を考え、どのような壁にぶつかっているのか、どう乗り越えているのか、どう受け入れているのか。そうした前提理解がない中で、自分は何を伝えるべきなのだろう、そして何より自身の発言で誰かを傷つけないか?」

そんなことが頭をよぎりました。その場で私自身が区別をされたわけではなく、周りはいつも通りだったのですが、男性が一人しかいない空間は、深刻ではないにせよ、孤独を感じ、発言に注意し、日々の業務以上に相手の意見に耳を傾け、意図の特定に注意した記憶があります。

あなたにとってのダイバーシティーとは?

今年に入り、JWCへの参加機会、また女性だけでなく、障がいを持つ方や多様な性的指向を持つ方々と社員が活躍する場を考えるダイバーシティー&インクルージョン活動にも参加する機会に恵まれています。そうした活動の中で問われたことがあります。“自分にとってダイバーシティーとは?” 自分にとってのダイバーシティー?自分がつくりあげたいダイバーシティーが実現した世界?

結果たどり着いたのが「みんなが最高のパフォーマンス」社会・組織全体で不便・不利・不公平を解消し、人の個性、凸凹を捉えて強みを伸ばし、各々が最高のパフォーマンスを発揮する。その集大成として、全員で最高のパフォーマンスを発揮する。そんな世界を目指して、様々な課題を解決していくことなのだろうと。

JWC、ダイバーシティー&インクルージョン活動。「みんなが最高のパフォーマンス」を発揮できる世界を目指し、注力すべきテーマがまた一つ増えました。

吉崎:私にとって「女性と働く」ということ

吉崎 貴哉

吉崎 貴哉
シニア・マネージング・
コンサルタント BPO
事業推進リーダー

この数年間、女性と働く機会が多くありました。最初は育児と両立している女性に極端に気を遣ってしまう等、失敗も多く経験しましたが、育児と両立している女性のほうが生産性の意識、責任感、成し遂げようとする意志が強く、一緒に働きたいと思う人が少しずつ増えていきました。

そうすると、時には子供を迎えに行く時間、夕食を食べさせ寝かしつける時間を配慮することも必要になりますが、それは「誰もが食事や休憩の時間が必要であることと変わりない」と思えるようになりました。今では性別をほとんど意識することなく働いています。

「管理職になりたくない」という方へのメッセージ

また、女性のほうが男性よりも管理職になるのを躊躇するという傾向について、私も女性メンバーから「マネージャーになりたくない」という相談をよく受けます。その際には「マネージャーに限らず自分の役職や役割を上げ、自分自身で仕事をマネジメントできる立場になったほうが、むしろ育児などとの両立を実現できている人が多い」ことを伝えるようにしています。JWCでの活動を通じてこのような体験や考えを広く共有していきたいと考えています。

まだまだ奥深い「ダイバーシティーが目指す姿」

一方、JWCに参画して数カ月、すでに新たな発見がありました。仕事において性別を特に意識していないと記載しましたが、自分以外は全員女性という環境におかれてみると、男性が多数のときとは異なる議論や合意形成の流れについていけず、発言を遠慮している自分がいることに気づきました。

具体的に説明することはまだできませんが、このような違いを受け入れ、仕事に活かすことが、昨今言われている「女性が意思決定に関わることの意義」であり、“Be Equal”や” ダイバーシティー”が目指す姿なのであろうという感覚を持っています。これを社内外の方に具体的な言葉でお届けすることが、JWCにおける私の目標です。

すべての「個」が輝く働き方のできる組織を作り上げるために

組織の中に多様な事情を抱える社員が存在する現在、個々が抱える悩み・事情に寄り添った働き甲斐のある組織とするためには、多様な観点での配慮や取り組みが必要となってきています。

一言で「女性」と言っても、実際に直面している問題や葛藤は様々です。解決するための施策・工夫や活用している制度も含めて、今後のブログにてご紹介していきます。

連載を通じて、「どのように対応できたら個人が輝いて働けるか、個を尊重した組織になれるか」を導き出していきたいと考えています。みなさまの組織においても様々な壁があると思いますが、それらを打破するための考えるきっかけとなれば幸いです。

次回のテーマは「自身の闘病」です。病気によって仕事との両立が困難になることが容易に想像できる中、どのような想いと制度で乗り越えたのか、支えになったことなどを語ります。

前回の記事:IBMが展開するダイバーシティー:JWCが取り組む「女性活躍推進」の歴史と今

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