IBM Storage

ハイブリッド・マルチクラウド時代の IBMストレージ戦略と最新技術を実感

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2019年11月17日から23日にかけて「ストレージ米国開発拠点ツアー」が開催されました。初日はニューヨークのIBM本社でIBMの企業戦略やIBM Systems、ストレージ戦略、研究開発ビジョン、2日目は“メインフレームの聖地”と言われるニューヨーク州のポケプシーでIBM Z、Power Systemsの最新動向および量子コンピューターやIBM Z のテストルームの見学、3日目はアリゾナ州のツーソンでストレージの詳細な製品動向と、3日間にわたって数多くのセッションが行われました。連載の1回目として、ツアーの1日目と2日目を中心にセッションからトピックスをお伝えします。

 

OpenShiftを核に進むマルチクラウド対応

1日目のセッションはIBMのニューヨーク本社で行われました。ウェルカム・スピーチで、Kelly Robinson(Vice President, Global Storage Sales, IBM Systems)は、IBMが現在フォーカスしているポートフォリオとして「Storage for AI and Big Data」、「Storage for Hybrid Multicloud」、「Modern Data Protection」、「Storage for Z」の4つを挙げました。これらのコアとなるのが、OpenShift であり、コンテナ技術です。

IBMはコンテナ技術のインフラであるOpenShiftを提供するRed Hatを買収し、異なったクラウド環境でもデータが利用でき、データを自由に移動させられるハイブリッド・マルチクラウドの実現を目指しています。「IBMは、他社も含めてさまざまな種類のストレージを利用できるIBM Spectrum Virtualizeといったソリューションを提供し、本当の意味でのオープン環境を提供しています」(Kelly Robinson)。

それを可能にしているのが、OpenShiftがもたらす相互運用性です。「IBM Cloudは完全にOpenShiftに対応しているので、パブリック・クラウド環境で開発されたアプリケーションはプライベート・クラウドで稼働します。その逆も可能です。従来型のワークロードともシームレスに繋げることができます」とRamakrishna Desiraju(Vice President, Strategy & Enterprise Initiatives, Corporate Strategy)はOpenShiftのメリットを強調しました。

しかし、まだクラウドに移行していないアプリケーションが多いのが現状です。しかもミッション・クリティカルなものが殆どです。移行にあたっての鍵となるのが、ミッション・クリティカルなシステムを担うIBM Zです。Scott Crowder(Vice President and CTO, IBM Q, Technical Strategy & Transformation, IBM Systems)は「ストレージ分野でもRed Hatと密接に協業しています」と語りました。

ストレージの最新戦略を解説したEric Herzog(CMO – IBM Storage Systems, IBM Systems)は、他社製品を含む約400種類のストレージをサポートするIBM Spectrum Virtualizeを活用することで、異なるベンダーのストレージ・システム間でもダウンタイムなしに自動でデータ移行が可能。さらにオンプレミスとAWSやIBMクラウドといったパブリック・クラウド間でデータを連携することもでき、まさにマルチクラウドでの主力ソリューションだと語る。

1日目の最後のセッションはBernard Meyerson(IBM CHQ, Executive Offices)によるIBM Researchの基礎研究の紹介でした。Bernard Meyersonは「AIシステムは安全性や倫理観に注意してデザインする必要があります」と指摘し、人間の脳に近い動きをするニューロモーフィック・コンピューティングなど最新の取り組みを解説しました。

 

クラウド環境の核となるIBM ZとPower Systems

2日目はポケプシーに場所を移してのセッションです。Dale Becker(Server Group System Design)は「2024年までに90%の企業がハイブリッド・マルチクラウドを採用していく中で、AIもコグニティブもそれらをサポートしていく必要があります」とIBMの開発戦略を語り、その一貫として次世代のI/O規格を採用したPOWER9チップ搭載のPower Systems製品ポートフォリオを紹介しました。

Power Systemsの製品ポートフォリオは、ミッション・クリティカル、ビッグデータ、Enterprise AIの3つのワークロード用のカテゴリーで構成され、大量のデータを扱う企業のコア・アプリケーションから次世代のAI ワークロードに対応しています。POWER9はIBMが開発したスーパーコンピューターに搭載され、2019年11月に開催された「Supercomputing 2019 (SC19)」で1位と2位を獲得し、そのシステム性能が評価されています。

 

引き続いて、2019年9月に発表された最新のメインフレームIBM z15についての新しい情報も提供されました。Charles Webb(IBM Fellow – IBM Z Processor Design)は「IBM z15はDesign Thinkingの手法を取り入れながら、世界中のお客様との共創によって開発しました」と話し、クラウドへの移行を想定した機能拡張などに触れました。

また、IBM LinuxONEの最新動向に関するセッションで、Rebecca Gott(Distinguished Engineer, IBM Z & LinuxONE, Blockchain, ZaaS)はLinuxONEが、Scale UpもScale Outも同じBOX内でできることを挙げ、高いセキュリティー・レベルについても解説しました。

 

 

IBM QやIBM Z テスティングのツアーも開催

2日目には、「IBM Q Tour」と「IBM Z Engineering System Test Tour」も行われました。

IBM Q Tourで紹介されたのは、現在商用版として稼働している20qubitの量子コンピューター、IBM Qです。シャンデリア状の構造で、カバーの中は真空状態になっていて、演算装置は先端部にあって絶対零度に近い15ミリKまで冷却され、超電導方式を採用してジョセフソン接合によって量子的な状態を作り出しています。

IBM Z Engineering System Test Tourでは、メインフレームの複数世代のプロセッサーやストレージ、ネットワーク機器などが置かれたハードウェアのI/O部分を検証するフロアが紹介されました。ここでは、ツーソンのストレージ開発チームとも連携して、IBM z14やIBM z15、そしてDS8000で使用されているFlash ExpressのアダプターカードやZ Hyper Linkのプロジェクトが進められています。

そして3日目はアリゾナ州のツーソンに移動して、ストレージについてのセッションが行われました。ストレージ戦略からストレージ・ソリューション、最新技術とロードマップ、開発戦略、製品戦略などが語られました。こちらの詳細は次回以降にお伝えしていきます。


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