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Power10は、SAP HANAのためにある

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Power10プロセッサー搭載サーバーの年内発表を控えているIBM Power Systems。IBM Power Systems事業部にてSAP基盤としてのIBM Power Systemsを推進中の熊谷 真実が、Power10プロセッサー搭載サーバーの登場によってSAP HANA環境がどのような変化を遂げるかを紹介します。

2021年、Power10プロセッサーを搭載するサーバー・ハードウェアの発表が予定されているIBM Power Systems。今後、IBM Systems Japan Blogでは、POWERプロセッサーとIBM Power Systemsの歴史的な出来事や、Power10プロセッサーの紹介と具体的なユースケースといった内容の記事を毎月公開します。

熊谷 真実

熊谷 真実
日本アイ・ビー・エム株式会社 IBM Power Systems事業部

数年前まで犬嫌いだったにも関わらず、最近は、コロナ禍をいいことに犬の散歩を朝・晩とこなす毎日。1991年に日本IBMにAIXのSEとして入社。しかし、たった3ヶ月で営業に配置転換され、一号機はAS/400を東京都立川市の花市場に導入。またRS/6000&AIXを東京都昭島市の食品会社にプロトコル・サーバーとして導入する。その後は、x86サーバー専任の営業として20年以上のキャリアを重ねる。SAPに関しては、2000年頃にx86サーバーで数多くのユーザー様に導入を実施。2014年からPower Systemsの営業に配置転換し、Power System AC922を中心にAI分野での営業活動を行い、主に画像認識のソリューションを展開。2021年からSAP HANAの担当となり、Power10で日本中のSAPユーザー様に安定と心の安らぎをお届けしたいと願っている。


Power10プロセッサー搭載サーバーは基幹業務に革新的な変化をもたらし、SAP HANAのような大規模DBにおける絶対的な存在となり、盤石な情報基盤として運用管理コストの大幅な低減を実現

IBM Power Systemsは、以前からSAPのシステムインフラとして、数多くのお客様の基幹業務に採用されてきました。2016年にSAP HANAに対応して以降、IBM Power Systemsは世界中で3,500社を超えるお客様に採用されており、高い信頼性を誇る情報基盤として基幹業務を長期間にわたり支えています。

SAP HANAシステムにおけるIBM Power Systemsの特徴として、以下の4点が挙げられます。そして、Power10プロセッサーを搭載するサーバーが発表された暁には、さらに強力な基幹業務向けのシステム基盤となります。

  1. 28TBのメモリーサイズのサポート
  2. POWER9プロセッサー搭載システムでのSAPSベンチマーク No.1(SD Benchmark)
  3. 動的にハードウェアリソースを調整可能な仮想化ハイパーバイザー
  4. オンプレミス TDI(Tailored Data Center Integration)、Power Virtual Serverおよびハイブリッド環境を実現

まず、SAP HANAの基盤として重視する必要があるのは「CPUの性能」です。SAP HANAのシステムは、CPUとメモリー(DBのサイズ)が一定の割合で規定されています。DBサイズを拡大するためにはCPU数も追加する必要があるため、サーバーをスケールアウト構成にした場合は、構築・運用に関して予期せぬコストとリスクが発生する可能性があります。SAP HANAを始めとするインメモリーDBでは、システム選定を特に慎重にすすめる必要があります。

当社として初の7nm世代となるPower10プロセッサーは、8スレッドSMT(Simultaneous Multithreading)を最大15コア/チップ(POWER9プロセッサーは12コア)を搭載します。そして、コアあたりの処理能力は、POWER9プロセッサーと比較して約1.3倍のパフォーマンス向上を実現しています。また、各チップは、POWER9プロセッサーの4倍以上のメモリー帯域幅と4倍の相互接続帯域幅を備えています。コア性能の向上に耐えうるメモリーとI/O性能を実現することで、トータル・スループットを改善させました。

そして、メモリーサイズの制限ではなく、CPUコアの制限でパフォーマンス劣化が見られるお客様にとって、Power10プロセッサー搭載するサーバーは最適なソリューションとなります。Power10 プロセッサーを搭載する新たなサーバーは、PCIe Gen4/5および既存のDDR4と新しいDDR5メモリーDIMMをサポートします。さらに、将来のGDDR DIMMのサポートも予定されています。CPUコアの性能によって対応できるメモリーサイズが拡大されるため、Power10プロセッサー搭載するサーバーであれば、SAP HANAシステムの拡張性に余裕がでます。

現在、現行機であるPOWER9プロセッサーを搭載しているサーバーでは、28TBのメモリーサイズのHANA DBの認証を取得しております(システム搭載可能容量は64TB)が、Power10プロセッサーを搭載するサーバーでは、さらなる拡張を実現できると想定しています。

参考データ(SAP SDベンチマーク)

参考データ(SAP SDベンチマーク)

Power10プロセッサーは、圧倒的なCPUコア処理能力と高密度・高速なメモリー・アーキテクチャーによりアプリケーションが必要なコア数を減らせます。その結果、物理CPU数・サーバー台数を大幅な削減と、お客様のTCOの飛躍的な改善が可能となります。また、IBM Power Systemsはハイパーバイザーをファームウェア・レベルで実装することにより、仮想化レイヤーのオーバーヘッドを最小限にし、システムを再起動することなく各業務に割当てられるシステムリソースを調整することが可能です。

当然ながら、Power10プロセッサー環境におけるSAP HANAのベンチマーク情報はまだリリースされていませんが、SAP SDベンチマーク(SAPS)では、現行CPUであるPOWER9プロセッサーを搭載したサーバーが、発表から4年経過した現在でもNo.1の地位を守っています。Power10プロセッサーの新しいマイクロアーキテクチャー、キャッシュ容量、TLB容量の追加、さらには巨大なメモリーとインターコネクト帯域幅の拡張によって、各ソケットはSAP HANAワークロードにおける処理能力をリニアにスケールさせ、広大なDBサイズのサポートが可能になると想定しています。

繰り返しとなりますが、Power10プロセッサーを搭載するIBM Power Systemsの新世代サーバー製品は、現在、SAP HANAシステムをご利用中の多くのお客様の環境で、既存のSAP HANAシステムのインフラと比較して必要とされるCPUの数を劇的に削減することが可能です。その結果、多数のサーバーを使用しているお客様の場合、既存システムで稼動しているSAP HANAをPower10プロセッサー搭載サーバーに統合できるため、サーバー台数の削減とTCOの劇的な改善を実感できることでしょう。

Power10プロセッサーに実装されたメモリー共有機能が、SAP HANAシステムの拡張における制限を解消

インメモリー・データベースであるSAP HANAのためのシステムは、通常サイジング・ルールに基づいてCPUとメモリーが同時に拡張されます。CPUとメモリー・サイズの不均衡を解決するために、インテルはDIMMサイズを拡⼤しました。それに対して、Power10プロセッサーのメモリー・アーキテクチャーは、POWER9プロセッサーと⽐較して帯域幅を4倍拡⼤しています。さらにDDR4、DDR5をサポートすることで、お客様が⻑期にわたりご利⽤いただける拡張性を実現しています。

また、複数のPower10プロセッサー搭載サーバーを結合することで、広大なメモリー空間を高速に連携するメモリー・クラスタリングを実装できます。そして、現在主流のPCIe Gen3の4倍のI/O通信スループットを実現するPCIe Gen5インターフェースをサポートすることにより、Power10プロセッサー搭載サーバーはI/Oのボトルネックを排除します。

メモリー・クラスタリング機能とは、Virtual Machineもしくはコンテナが、ノード間接続された他のシステムのメモリーをローカルノードのメモリーのように割当てられる機能です。IBM独自に開発された技術であるメモリー・クラスタリング機能は、PowerAXON(IBMのSMPインターコネクト技術)と、ファームウェアに実装されたハイパーバイザーであるIBM PowerVMによって実現します。

Power10プロセッサーは“Storage Class Memory”(SCM)機能が実装され、2ペタバイトのメモリーアドレスを実現可能です。このPower10プロセッサーをメモリークラスタリング機能に使用することで、クラスタ内のSAP HANAワークロードに割り当てるシステムリソースに関して、時間帯や季節需要に合わせて割当て・変更が最小限の操作で可能となります。Power10プロセッサー搭載サーバーを採用いただくことによって、SAP HANAシステムおよび企業の基幹システムのより柔軟な運用が可能となります。

Power Private Cloud with Dynamic Capacityによって、オンプレミスでもハイブリッドクラウドでもPower10の経済性を柔軟な課金体系で利用

IBMでは、オンプレミスのシステム向けに、CPUおよびメモリーの利用時間に応じた新しい課金体系を提供しています。新しい料金体系では、あらかじめ必要とされる利用コア・メモリーをご契約いただきます。そして、ご要望に応じてCPU・メモリーを追加いただくことが可能となります(分単位での課金による)。そして、複数台のサーバーで、当機能と課金体系が適用できます。また、時間単位の課金モデルで提供されるPower Virtual Serverを併用することで、SAP HANAシステムに関わるインフラストラクチャー・コストが最適化できます。

現在のIBM Power Systems

POWER9プロセッサー搭載IBM Power Systems

POWER9プロセッサー搭載IBM Power Systems

2021年5月現在、IBM Power SystemsはPOWER9プロセッサーを搭載し、スケールアウト・サーバースケールアップ・サーバー、そして、AIの学習や推論に最適な高速コンピューティング用サーバーを提供しています。また、企業の大規模基幹システムを担うSAP HANA環境の効率的な構築と安定稼働に貢献する認定ハードウェアも提供しております。

IBM Power Systemsが提供するスケーラビリティーはハイブリッドクラウドに最適です。また、災害対策のバックアップ環境や、開発・検証環境構築のためにIBM Power SystemsのLPAR(論理区画)をIBM Cloud経由で従量課金にて活用できるIBM Power Systems Virtual Serverもご利用いただけます。

明確なロードマップのもと、時代が必要とする機能を提供するために確実に進化を続けているIBM POWERプロセッサーとIBM Power Systemsにご期待ください。


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