IBM Power

IBM Bayesian Optimization Accelerator:より優れた製品をより迅速に開発するための設計方法

記事をシェアする:

時は巡り、IBM は、実証済みの最適化の方式を今の時代に活用することをリードしています。1763 年に最初に発表されたベイズの定理に基づくベイズ最適化方式は、IBM Research と IBM Power Systems によって強化されています。

11月17日、IBM は IBM Bayesian Optimization Accelerator という新しいアプライアンスをリリースしました。お客様の製品開発のチームが設計時間を短縮して新しいより優れた製品を開発することにより製品と機能を迅速に市場に導入できるように、本製品は開発されています。

製品開発のイノベーターが取り組んでいる問題は複雑になっています。お客様はより迅速な答えを求めているため、製品開発チームは、現行のベスト・プラクティスを再検討して、代替方法を考えなければなりません。「もっと大規模なものをつくる」ことは、今後は選択肢にはなりません。「社内のステークホルダーが必要としているのは、スピーディーに提供され、低コストで、これまで以上に適切なソリューションである」とお客様から教えていただきました。その一方で、こうした新しいニーズのすべてに対処できるように予算が増えているわけではありません。

こうした全ての課題の理想的な解決策とはなんでしょうか?

  • 問題に関する事前知識を必要としないやり方であること。
  • 作業を並列化して、究極の答えを得るためにかかる CPUと時間を効率化してインフラストラクチャーを最大限に活用する機能を持つこと。
  • 高度な次元に対処できる、使いやすいサービスであること。最も重要なのは、単純な学問的問題ではなく、現実の問題を最適化することです。
  • 特に規制の厳しい業界における追跡可能で偏りのない方法論であること。

簡単に言うと、このような新たな課題に対する理想的なソリューションにより、使用するリソースを少なくしながら、その一方で迅速なイノベーションと優れた結果を実現するでしょう。

さらに効率的な方法の導入: IBM Bayesian Optimization Accelerator

IBM Research の最先端のイノベーションに基づいて作成された最新鋭の汎用パラメーター最適化ツールである IBM Bayesian Optimization Accelerator(以下、BOA) により、ユーザーは、設計変数、目標、および制約を定義するだけで、強力な最適化エンジンを活用できます。BOAはアプライアンスであり、ハードウェア、ソフトウェア、インストール・サービスなど、IBM が提供する一体ソリューションとして利用できます。

簡単に言うと、IBM Bayesian Optimization Accelerator は、現実世界における複雑な設計の問題に対する最適解を、多くのリソースを必要とせずに短時間で見つけ出す設計です。

  • 迅速なイノベーション: Bayesian Optimization Accelerator は、簡単で短時間の初期統合と、開始時の必須入力とスケールが少なくてすむ方式をとっています。ソリューションを素早く見つけて、結果を得るまでの時間を短縮できるよう設計されています。
  • 優れた結果: Bayesian Optimization Accelerator は、前データを必要とせずバイアスを回避する、追跡と説明が可能な最適化の決定とともに89%の時間で最適なソリューションを見つけます(*1)。
  • リソースの削減: これらの方式は、特殊なデータ・サイエンスのスキルがなくても適用でき、既存のインフラストラクチャーの効率を高め、コストを低く抑えながら、引き続きビジネス・ニーズに対応します。

このソリューションは、HPC クラスターで実行されるシミュレーションが何を目標にすれば良いのかを知るのに役立ちます。BOAアプライアンスは、既存の HPC クラスターの外にあり、Bayesian Optimization 方式の実行専用です。HPC クラスターは、制約と目的関数の値をBOAアプライアンスに送信します。BOAアプライアンスは、最適なソリューションを見つけるために探索空間内の新しいデータ点を送り返します。

このソリューションが生み出す違い

ベイズ方式は、数学の世界では新しいものではありません。しかしながら、Greedyやモンテカルロ・サーチといった、標準的で無料で利用できるベイズ方式では、いくつかの問題があります。ベイズ最適化方式を製品設計の問題に適用するのが難しく、多くの場合は非現実的であることが分かりました。

IBM Bayesian Optimization Accelerator は、桁違いの次元まで拡張できるため、単純な問題ではなく、現実世界の問題に対処できます。IBM によるGreedy やモンテカルロ・サーチを実装した検索方式とは異なり、必要とするサンプル数を大幅に減らしながら設計点を決定するため、より素早く低コストで結果を得ることができます。実際、IBM Research によって実施された比較テストでは、Greedy とモンテカルロのアルゴリズムを実装したIBM の実験の 82% 以上で、Bayesian Optimization Accelerator が最短の時間で最も後悔の少ないソリューションとなりました(*2)。

これらと同じ比較テストでは、このソリューションは、89% の時間で最も後悔の少ない答を出しました。1 これを行うには、設計上の問題に関する事前の知識は必要ありません。独自の「ブート・ストラッピング」方式を使うと、初期データなしに最適化を開始、初期化データを独自に収集し、ベイズ最適化プロセスを開始することができます。

さらにBayesian Optimization Accelerator は、モデル設計履歴の追跡可能性に関心があるユーザー向けに、グラフィカル・オプティマイザー「説明可能性」インターフェースと、この方法論の信頼を構築するためのオプティマイザーの選択肢を提供しています。つまり、サイエンティストは、実験中に、なぜBOAがその推奨パラメーターの評価を選択したかという理由を確認できます。

IBM は既に、航空宇宙、自動車、電子設計、石油・ガスなどの多くの業界で、このテクノロジーの応用分野を追求しています。回路設計業界では、IBM 独自のシグナル・インテグリティー研究チームが Bayesian Optimization Accelerator を使用して、シグナル・インテグリティーのシミュレーションを 99.3% 減らすためにかかる時間を、約 8 日からわずか 80 分に短縮しました(*3)。 その一方で、石油・ガス業界では、研究チームが、Bayesian Optimization Accelerator を使用して、出力を最大限に高めるための注入材料の理想的な配合と貯留層に入れるタイミングを特定することで、研究結果を得るまでの時間を 61% 短縮しました(*4)。

世界中のチームでのこのような早期に結果を出していることは、IBM Research の研究所における取り組みが既に、ビジネスで実際に結果を出して、より迅速に使用リソースを減らしながら優れた結果を出せるように支援していることを示しています。


*1 Based on IBM internal testing performed by IBM Research on 771 sample sets of drug discovery data obtained from the ChEMBL database, which is licensed under Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0. (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/legalcode). Tests run using IBM Bayesian Optimization Accelerator on one IBM Power Systems AC922 server. Optimization initialization performed with industry-standard chronological approach. Results valid as of 25 September 2019 and conducted under laboratory conditions. In this testing, IBM Bayesian Optimization Accelerator correctly identified the least regret solution 89% of the time (687/771 data sets).

*2 Based on IBM internal testing performed by IBM Research on 771 sample sets of drug discovery data obtained from the ChEMBL database, which is licensed under Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0. (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/legalcode). Tests compare IBM Bayesian Optimization Accelerator run on one IBM Power Systems AC922 server to comparable Greedy and Monte Carlo algorithms implemented by IBM, based on industry best practice and run on one Power System S822LC for High-Performance Computing. Optimization initialization performed with industry-standard chronological approach. Results valid as of 25 September 2019 and conducted under laboratory conditions. In this testing, IBM Bayesian Optimization Accelerator reached the least regret solution in the fastest time when compared to aforementioned algorithms 82% of the time (344/420 experiments conducted).

*3 Based on IBM internal testing during POWER10 development comparing IBM Bayesian Optimization Accelerator run on one IBM Power System AC922 server to traditional brute force ‘design of experiments’ methodology implemented by IBM, based on industry best practice and run on non-accelerated x86 Linux architecture. Results valid as of July 2018. In testing, traditional methods required 11260 minutes to reach final result, and IBM Bayesian Optimization Accelerator required 80 minutes (99.3% reduction).

*4 Based on currently pre-published research conducted by Dr. Mary Wheeler and Xueying Lu of the University of Texas at Austin Oden Institute for Computational Engineering and Sciences. IPARS simulations run using IBM Bayesian Optimization Accelerator on one Power System S822LC for High-Performance Computing and compared to industry-standard genetic algorithms authored by researchers and run on the same server. Results valid as of October 2020 and conducted under laboratory conditions. Research simulated a reservoir using compositional Cranfield model and optimized how to best inject CO2 and surfactant into the reservoir. Using IBM Bayesian Optimization Accelerator, the team reached equivalent result as genetic algorithm methods (objective function value of 1.31e8 for BOA vs. 1.29e8 for genetic algorithm) in 61.5% fewer iterations (73 vs. 200 iterations).


本記事は「IBM Bayesian Optimization Accelerator: designed to build better products faster(written by Stephen Meserve)」を抄訳し、一部編集したものです。

More IBM Power stories

IBM Power プロセッサー搭載サーバーの、省エネ法に基づく、エネルギー消費効率

2024年5月16日更新:IBM Power S1012のエネルギー消費効率を追加しました。 当記事では、IBM Power プロセッサーを搭載するサーバー製品の、「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」(以下省エネ法 […]

さらに読む

IBM Power Salonのご案内〜毎月第2水曜日9時開催〜

6月よりPower Salonページはお引越しします! 新しいページはこちら 「IBM Power Salon」それは、IBM Powerユーザーのための自由な語り場 日本IBMは、「IBM Power Salon」を2 […]

さらに読む

より多くの価値を提供するIBM ストレージ

期間限定の価格改定と標準構成モデルの提供 IBM は、お客様が必要とする最も一般的なワークロードに対応するフラッシュ・ストレージの標準構成モデルを提供しています。IBMが提供するフラッシュ・ストレージである IBM St […]

さらに読む