IBM Consulting

バーチャル・エンタープライズ: 現代の企業がよりオープンでアジャイル になるための6つの方法

記事をシェアする:

執筆者:Mark Foster, Senior Vice President, IBM Services

新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって世界中のビジネスや経済が急速に停滞してから1年以上が経過しました。これに伴いオフィス・ワークからリモート・ワークへの大規模な転換が進み、新しいツールや働き方が、時を経ずして日常のありふれた風景となりました。パンデミック以前から、企業は新しいビジネス・モデルの構築に向けてテクノロジーの活用領域を広げていました。今、その動きをさらに拡大し加速させたいというビジネス・ニーズにより、デジタル・トランスフォーメーションの取り組みが推し進められています。IBMの最新の調査*1では、回答した組織の60%が、パンデミックによってデジタル・トランスフォーメーションに拍車がかかったと答えています。

現時点で1億5,900万人以上*2のアメリカ国民(アメリカの成人の60%)が新型コロナウイルス感染症のワクチンの1回目の接種を完了しています。しかし、ワクチン接種が進んでいる国の往来が再開したとしても、以前のような働き方に戻ることはありません。

私たちの新たな現実世界において、ビジネス・リーダーたちは現代の企業が目指すべき将来像である「バーチャル・エンタープライズ」を受け入れ、変革を加速することが求められています。そのためにリーダーたちは、物理的な資産やインフラストラクチャー、そして人材の役割を再評価する必要があります。高度なデジタル化、強力なプラットフォーム、パートナーシップが、今や競争優位を得るために欠かせない基本的な要素になります。

企業がこのパンデミックからより強くなって、顧客に対してより優れたサービスを提供し、新しい価値の源泉を見つけるためにビジネス・リーダーたちに求められるのは、6つの重要な要素に対応できるオープン性とアジリティーを備えることです。

 

パートナーのエコシステムを育てる

バーチャル・エンタープライズの大きな特徴の一つはオープン性です。あらゆるものが相互に結び付いている世の中で、リーダーたちには課題を解決し、イノベーションを進め、市場機会を確実に手に入れるために必要なエコシステムを構築することが求められています。組織間で戦略的な関係を築くためには、明確なビジョンが必要です。皆が参加したくなるような広範囲にわたるビジネス・プラットフォームを編成することで、どのような成長の可能性と競争上の優位性が期待できるのかが明示されていなければなりません。顧客とつながるエコシステムは、デジタル接続により、情報の共有やこれまでにないような組み合わせでデータを使うことで、新しい機能やサービスを提供できる可能性を秘めています。オープンで安全な規格およびソフトウェア・デファインド・ネットワーク上に構築されたテクノロジー体系を活用することで、これらの関係性の構築はますます容易になっています。

 

科学とデータの主導によりイノベーションを起こす

IBM Research Strategic Business Insightsによると*3、科学と発見による経済効果は、88兆ドルといわれる世界経済の内、実に52兆ドルを占めています。オープン性は、科学的方法に基づくアプローチによって新しい製品やサービスのイノベーションを加速させます。人工知能、モノのインターネット(IoT)、量子コンピューティングなどの指数関数的に進化するテクノロジーを利用すれば、ビジネスに必要な関連プロセスを、かつてないスピードで、業界を問わず活用できます。これらはすべてエコシステムとインテリジェント・ワークフローを通じてリアルタイムに実行され、新たな価値の鉱脈を迅速かつ確実に掘り当てることができるようになります。これはリーダーたちが、エコシステム全体のイノベーションの源としてデータを活用できるかどうか、そしてその世界で成功するために製品やサービス自体でいかにイノベーションを起こせるか、というところに行き着きます。

 

インテリジェント・ワークフローを拡張する

ここ数年の間に、多くの組織は人事採用やサプライチェーン、顧客サービスなど、企業のいわば“心臓部”にあたるプロセスに対してAIや自動化の適用を進めてきました。今回のパンデミックによって、その動きがますます加速しています。企業は多数の顧客や従業員とのつながりを維持したり、サービス・ニーズを満たすために、多くの部分を自動化やAIに依存するようになりました。次のステップは、これらのインテリジェント・ワークフローを企業の枠を超えたエコシステム全体に拡大し、サイロを解消することで、より多くの洞察や価値を得られるようにすることです。

 

人とテクノロジーの包括的なパートナーシップを構築する

顧客や同僚たちとのバーチャルな接触が大きく増えたことで、人とテクノロジーのインターフェースも進化しました。場所の制約がなくなるにつれて、スキルや能力にどこからでもアクセスできるようになりました。業務がバーチャル化されたことにより、世界中の人材に容易にアクセスできるようになったのです。しかし、組織の枠を超えた従業員とのやりとりには、可能性ばかりでなく課題もあります。新型コロナウイルス感染症により、雇用主によるスキルアップやトレーニング、キャリアアップのサポート、そして福利に対する従業員たちの期待が恒久的に高まりました。新しいハイブリッドな働き方のために、リーダーたちはワークフローを再定義し、より使いやすいツールやシステム、雇用契約のルールを個人やチーム・組織に提供し、そして意思決定の重要な推進要因となるデータやテクノロジーに対する信頼を培う必要があります。

 

サステナビリティー(持続可能性)の力を取り込む

今回のパンデミックは、私たちが他者や地球といかにつながっているかを再認識するきっかけとなりました。IBMが実施した消費者調査によると*4、調査対象となった10人中9人の消費者が、パンデミックが環境のサステナビリティーに対する考え方に影響を与えたと答えており、多くの消費者はサステナブルな未来のためにプレミアム料金を支払うことも惜しみません。サステナビリティーとステークホルダー資本主義が経営層に浸透することで、先進テクノロジーを活用したビジネス・モデルが気候変動、健康維持、安全保障、平等など現代における重要課題の解決に貢献できるようになります。このようにサステナビリティーとステークホルダー資本主義に重点的に取り組むことは、顧客、パートナー、そして従業員が組織との関わりについてどのように感じるか、リーダーたちが未来についてどのように意思決定すべきかという点でも、ますます大きな役割を果たすことでしょう。

 

セキュアでオープンなアーキテクチャーを構築する

現代のビジネスにおいて、データと情報は原材料です。しかしそのデータを業務に活かせるかどうかは、リーダーたちが今まさに行っているアーキテクチャーの選択にかかっています。ハイブリッドクラウドで提供されるセキュアでオープンなアーキテクチャーは、データがどこにあるかに関係なく利用できて、デジタル化の促進に必要な柔軟性、順応性、安全性を実現するためにリーダーたちが求める基幹部分です。ハイブリッドクラウド・アーキテクチャーは、パートナーとつながり、イノベーションを加速させる先進のオープン・テクノロジーやアイデアの可能性を最大限に利用するためのオープン性ももたらします。

世界がパンデミックから回復した後も、物事がパンデミック前の状態に戻ることはないでしょう。自然災害、大規模なサイバー攻撃、さらなるパンデミックなど、将来起こり得る混乱は予測不可能で避けることはできません。しかし、バーチャルな世界が加速する革新の時代において、テクノロジーによって実現したエコシステムやデジタル・ワークフロー、組織のネットワーク化がもたらす影響力はかつてないほど大きくなっています。

 

※この記事は、Fortune.comに2021年5月26日に掲載された記事を基に作成しています。(https://fortune.com/2021/05/26/virtual-enterprise-ibm-digital-transformation-agile-business)

 

*1: IBMスタディ「新型コロナウイルス感染症はビジネスの未来をいかに変えるか」(COVID-19 and the Future of Businessの日本語訳)はこちら (PDF, 302KB)

*2: 2021年5月19日の時点データ。出典:CDC

*3: Strategic Business Insights社、IBM Researchのデータおよび調査。Ward-Foxton, Sally. “Accelerated Discovery: AI and the Scientific Method.” EE Times. 2021年1月19日。

*4: IBM Institute of Business Value, “Sustainability at a turning point”

More IBM Consulting stories

IBM九州DXセンター AI First BPOサービスの設立 | AIを前提とした業務変革の起爆剤“AI First BPO”

IBM Consulting, 人工知能, 業務プロセスの変革

2024年6月、IBM九州DXセンターとして福岡県北九州市に300名収容のオフィスをリバーウォーク北九州に開設、体制を拡充しました。これまで システム開発及び運用を中心に九州DXセンターの運営を担ってきた日本アイ・ビー・ ...続きを読む


IBM x UiPath、多様性と技術の掛け算で育むデジタル人財

IBM Consulting, RPA, オートメーション...

日本IBMとUiPath株式会社(以下、UiPath)は、2023年9月に「IBM地域UiPath人財育成プログラム」を発表し、デジタル・トランスフォーメーション(DX)人財、特にロボティック・プロセス・オートメーション ...続きを読む