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Think2019現地レポート #1 “5 in 5” by Watson IoT

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Think2019現地レポート #1 by Watson IoT

今後5年間で実現しそうなビジネスと社会を変えるイノベーションを、IBMの研究員たちが発表するのが「5 in 5(ファイブ・イン・ファイブ)」です。
つい先ほど、サンフランシスコで開催中のThink2019で発表となった最新の5 in 5を、現地から速報でお届けします。

5 in 5 : サステイナブルな世界をもたらす食の世界のイノベーションたち

 

自分の生い立ちや背景に、食に関わる個人的な理由を持った5人の研究員たちが、それぞれ5分前後で自身の予測をリズム感を持って伝えていくセッションでした。
ここでは、登壇された順に紹介します。

 

■ 農業のデジタル化でオペレーションにイノベーションを

高さ5,750フィートのマウントケニアでは、コーポラティブ・ファーム(組合農園)に登録した1,200の小規模生産者が、自分たちでコーヒー農園を運営しています。

そこでは、農業のuberとも呼ばれる「Hello Tractor」というスタートアップ企業が、農作業に必要なリソースを共有するシェアリング・エコノミーをベースに、農業のオペレーションにイノベーションを起こしています。
また、アグリパッドと呼ばれる、マイクロチップに農場や土壌、農家の経営状態を安全に格納するシステムが用いられ、より透明性の高い正当な融資が行われていきます。

 

こうした取り組みは今後5年間でよりエリアを広げ、サステイナブルな農場が世界に増えていくのです。

 

■ フードロスを、AI、ブロックチェーン、IoTで解消

世界では、生産された食べ物の1/3が、農地やスーパーマーケット、輸送中に廃棄物となってしまっています。わざわざ何百・何千マイルの距離を運ばれてきた大量の食品が、人びとの口に入ることなく捨てられているのです。

例えば、フロリダでは毎年1,500億個のオレンジが廃棄物となってしまっています。オレンジを育てるのに、7,5兆リットルもの水が使われているというのに!

今後5年で、AI、ブロックチェーン、IoTの3つのテクノロジーが、こうした無駄を無くしていきます。

勘や経験だけで営まれてきたこれまでの栽培や流通は、AIを用いて予測性を高めた効率的な栽培や出荷へと姿を変えていきます。

また、ブロックチェーンを活用したフード・プロセス・ネットワークが築かれ、食品の消費期限に応じた最適な輸送先へと送られていくでしょう。

そしてIoTが、輸送中の商品の温度や湿度を完璧にコントロールし、輸送中の無駄を無くします。

 

■ マイクローブ(微生物)が安全を生み出す

10年ほど前、中国で5万人を超える幼児がメラミンの混入した粉ミルクを飲んでしまい、健康被害を受ける大事件が発生しました。

ただ、こうした事件も今から5年後にはなくなっているかもしれません。マイクローブたちのおかげで。

 

マイクローブは小さな微生物で、人間の体内にも100兆を超える数が、そして食物にも多数が生息しています。
ただし、マイクローブの中には良いものもたくさんあり、例えば美味しくチーズを発酵させるのも彼らです。

現在、過去10年分のマイクローブのDNA解析が進んでおり、遺伝子構造データが研究者グループに提供されています。

今後、これらの研究と新技術により、細菌から安全が生み出されていくことでしょう。

 

■ スマホが食中毒防止ツールに

世界では、食中毒が原因で毎年何百万人もの人が死んでいます。

もっと簡単に食べ物の安全性を調べて、食中毒を引き起こすバクテリアを発見することはできないのでしょうか。

 

スマートフォンにIBM ベリファイアーを取り付けて食品に向ければ、バクテリアの種類や数、危険性が表示されます。

ベリファイアーの中にはAIが組み込まれており、含有バクテリア以外にも、食べ物やそのラベルの周波数を調べて真贋生を確認することができます。

スマートフォン以外にも、まな板、ザル、ナイフなどにセンサーを組み込むこともできます。また、トラックや食品工場、スーパーマーケットの棚に取り付けることも可能です。

こうして、これまで2日間かかっていた病原菌の検査が、数秒に縮められるのです。

 

■ 古いプラスチックに新しい命を

現在、 アメリカではプラスチックの10%しかリサイクルされていません。

回収用のリサイクルボックスに入れる前に容器を洗ったり、分別したりしているのに、異なる種類のプラスチックが混ざっていると、リサイクルのプロセスにまわすことができなかったことが大きな原因です。

また、世界中の海には、8000万メトリックトンを超えるプラスチックが流出していて、今や魚よりもプラスチックの方が多くなっています。

 

今後5年間でこうした問題に大きなイノベーションをもたらすのが、VolCatというプラスチックを再生プラスチックの原材料へと変身させる画期的なプロセスです。

これまでリサイクルが進んでいなかった古いプラスチックに、新しい命を吹き込みます。

 


 

いかがでしたか?

世界が一丸となって取り組むべき食品にまつわる問題にフォーカスしていて、絶対に実現してほしいイノベーションが揃っていて、私は聞いていてワクワクしました。

今回のプレゼンテーションの数日前に、研究所のブログでも研究が発表されています。

ステージで紹介されたものとは多少違うところもあるようですが、もう少し詳しく読んでみたい方はぜひそちらもお読みになってみてはいかがでしょうか。

(TEXT: 八木橋パチ)

 

問い合わせ情報

お問い合わせやご相談は、Congitive Applications事業 にご連絡ください。

 

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