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責任あるAIの推進に向けた国際的なコミュニティー AI Alliance が発足

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責任あるAI

人と同じような文章を書き、リアルな画像や動画を生成し、高度な画像判定も行えるようにまで成長したAIは、すでに社会基盤や人々の生活、ビジネスに深く浸透しています。昨年11月に登場した対話型AIチャットサービスChatGPTは、わずか1週間で100万人、2か月後には1億人のアクティブ・ユーザーを獲得しました。ChatGPTが利用しているGPTは基盤モデルと呼ばれる種類のAIモデルで、様々なアプリケーションの基盤になることができる大規模なものです。過去にも基盤モデルは存在していましたが、身近な利用方法が登場することでその開発手法が注目を集め、関連する製品/サービスが一気に登場することになりました。この1年は、新たなAIイノベーションが社会や生活に与える大きさやスピードを実感する年となりました。

一躍AIモデル開発の新たな潮流となった基盤モデルは、従来のAIモデル開発で必要とされたデータのラベル付けは不要となり、企業や組織、インターネット上に存在するデータを自ら学習することができます。これまでになく膨大なデータによって構築される基盤モデルは、文字通り、さまざまな製品/サービスの「基盤」となるわけですが、もしその学習データに不正確さやバイアスが紛れていたらどうなるでしょう?基盤モデルが自ら学習した不正確さやバイアスはさまざまな製品/サービスを通じて、従来よりも早く広範囲に蔓延してしまいます。

開発者や利用者には、AIがもたらす利便性や利益を謳うだけでなく、リスクも正しく評価し同時に対策することが求められます。これまでもAIのリスクはさまざまに論じられており、IBMでは業界に先駆けてAI倫理の原則を確立や、学習データからバイアスを排除する基礎研究や適用、オープンソース化を行ってきました。しかし、オープンにさまざまなAIを利用する今日の社会/ビジネス/生活においては、開発者や利用者が個別に実施する対策では十分ではなくなりつつあります。今後も期待されるAIイノベーションのメリットを誰もが安心して享受できるよう、責任あるAIを推進する機運が高まっています。

国際的なコミュニティー AI Alliance

こうした機運の高まりを受け、2023年12月5日、オープンで安全な、責任あるAIの推進に向けた「AI Alliance (発起人: IBM、Meta社)」が50を超える設立メンバーとともに発足しました。AI Allianceは、AIのオープン・イノベーションがあらゆる人々に利益をもたらし、それが責任ある形で構築されることを確かなものにするための国際的なコミュニティーです。参加メンバーの特徴は、オープンで透明性の高いイノベーションの支持者であることで、顔触れからはこのコミュニティー活動がもたらす効果や範囲の広さに期待が持てるのではないでしょうか。

  • MLPerfやHugging Face、LangChain、LlamaIndexといった、説明可能性、プライバシー、敵対的頑健性、公平性の評価のためのオープンソースのAIツールキットなど、AIベンチマーク、信頼と検証の指標やベストプラクティス、アプリケーションの作成を推進するツールの作成者。
  • 次世代のAI科学者やエンジニアを教育・支援し、オープン・サイエンスを通じてAI研究の最前線を推し進む大学や科学機関。
  • 必要なGPUからカスタムAIアクセラレーターやクラウド・プラットフォームまで、AIの学習やアプリケーションをサポートするハードウェアやインフラの開発者。
  • PyTorch、Transformer、 Diffusers、Kubernetes、Ray、Hugging Face Text generation inferenceやParameter Efficient Fine Tuningといった、プラットフォーム・ソフトウェアを駆動するフレームワークの支持者。
  • Llama2、Stable Diffusion、StarCoder、Bloomなど、現在最も使用されているオープン・モデルのクリエイター。

そして、日本からも東京大学、慶應義塾大学、Sakana AI 株式会社、SB Intuitions株式会社、ソニーグループ株式会社、フェンリル株式会社が設立メンバーとして名を連ねており、今後、日本からもさらなるメンバーの参画が期待されています。

AI Alliance Symposium 2023 を開催

より多くの方にThe AI Allilanceの目的、取り組みをお伝えしたく、日本から参画している設立メンバーを含む関係者にお集まりいただき「AI Alliance Symposium 2023」が開催されました。

登壇者
内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局統括官 渡邊 昇治 氏
慶應義塾長 伊藤 公平 氏
国立大学法人 東京大学大学院工学系研究科 教授 松尾 豊 氏
Sakana AI株式会社 CEO David Ha 氏
IBM Senior Vice President and Director of IBM Research  Dr. Darío Gil
日本アイ・ビー・エム株式会社 代表取締役社長 山口 明夫
日本アイ・ビー・エム株式会社 副社長執行役員 最高技術責任者 兼 研究開発担当 森本 典繁

 

YouTube Live 「AI Alliance Symposium 2023」(14分54秒から再生ください)

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