SPSS Modeler ヒモトク

【開催レポート】SPSS Modeler春のオンラインユーザーイベント2023〜組織で必要とされるデータ活用人材像と育成〜

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講演者の皆様。 左から伊藤様・木田様(三井住友海上)、 遠藤様(三井化学)、五安城様・伴様(三菱自動車工業)

 

 

みなさまこんにちは。スマート・アナリティクス株式会社の武田です。

 

オンライン開催に切り替えてから、今回で6回目となるSPSS春のユーザーイベントが、2023年5月19日に開催されました。

今回は「組織で必要とされるデータ活用人材像と育成」をテーマに既存ユーザーだけでなく幅広い役割の方にお声がけをいたしました。

1000名規模になる春と秋のユーザーイベント。参加者の皆さんの期待が高まるほど運営サイドの私どものプレッシャーは大きく毎回胃が痛くなります。しかし当日はそんな不安な気分もどこかに吹き飛び、私自身が刺激を受け、純粋に楽しませてもらっています。大盛況の余韻が冷めやらぬ中で、テンション高めにレポートさせていただきます。

 

 プレセミナー Tips① SPSS Statistics と Modeler

SPSSテックの斉藤さんとスマート・アナリティクスから私と牧野さん(牧野さんは昨年までIBMでSPSSテックでしたが今年から弊社メンバーにJOINしました!)の女子3名でWebラジオ風にSPSS Statisticsを紹介しました。

寸劇でお馴染みの2人に挟まれ少し緊張しましたが、無事に女優デビュー?出来ました(笑)。これをきっかけに多くのModeler ユーザーにStatisticにも興味を持っていただけると嬉しいです。

Modelerはビジネスユーザーが仮説発見の道具として、Statisticsは研究者が仮説を検証するために利用しますが、連携するシーンも増えています。ご興味のある方はQiita記事をご覧ください。

https://qiita.com/Makimaki2020/items/c3cd57cfb5da78e38e6f

 

 

 

オープニングアドレス

 

村田 将輝

日本アイ・ビー・エム株式会社
執行役員
テクノロジー事業本部長

 

 

日本IBMのテクノロジー事業本部のリーダーである村田さんからオープニングの挨拶がありました。このイベントの直前にあったIBMグローバルイベントTHINKでもIBMはAIとデータ基盤に積極的に投資をすると発表があったそうです。その流れの中でSPSSにもこれまで通り注力をしていく意気込みを述べられました。ぜひSPSSコミュニティを通じて盛り上げ、一緒にSPSSの成長を促して欲しいとメッセージされました。

 

 

講演①三井化学の生産技術系DX人材育成とその期待効果

 

 

遠藤 雅紀 様

三井化学株式会社
生産・技術本部
生産技術高度化推進室 主席部員企画グループ

 

 

 

ユーザー講演のトップバッターは三井化学の遠藤様でした。

製造業ではよく耳にする時系列センサーデータ以外に、化学プラントでは製品物性や原料物性も扱うのがユニークな点だと教えてくださいました。

業種によって扱うデータに差があると気付かされた一方で、前処理やクレンジング、重要変数の特定やモデリングなどにSPSSが役にたつシーンは同じなのだとか。またリアルなセンサーデータを元にして、プロセスの推定値を求めるソフトセンサーにも活用して、品質安定性の確保に役立てているという事例など私にとって新鮮なお話が目白押しでした。

そしてなんといってもDX人材育成に力を入れておられる三井化学様の生産技術領域での取り組みもご紹介いただきました。データサイエンティストをいくつかのレベルに定義して、体系立てた育成の枠組みを構築して実践されているそうです。

 

公開可能抜粋版資料はこちらから→ https://speakerdeck.com/jpspss

 

 

Tips②SPSS Modelerと最適化

日本情報通信(NI+C)さんとSPSSの山下さんによるTipsのテーマは最適化。

Modelerで数理最適化問題を解くことができ、IBM CPLEXを利用するとより大規模な問題も解けるそうです。どのような領域で活用されているのか、Modelerとどのように連携して活用するのか詳しく解説いただきました。最適化は統計解析とはまた違ったタイプの分析ですが、Modelerを介して眺めてみると存外、馴染めそうな気がしてきました。特にバッテリー充放電のスケジューリングは私達の生活に関わってイメージしやすく、取り組みやすい課題であると感じました。

 

SPSS ModelerとCPLEXを連携させて蓄電池の充放電を最適させる例はこちら

→ https://www.youtube.com/watch?v=MacmqGTXdSc

 

講演②データ分析を成果に繋げる思考術 ~ビジネストランスレーターになる~

 

木田 浩理 様

三井住友海上火災保険株式会社
CXデザイン部長 CMO

 

 

 

伊藤 豪 様

三井住友海上火災保険株式会社
CXデザイン部 上席スペシャリスト

 

 

 

 

 

2023年3月に発刊され話題となった書籍「ビジネストランスレーター」はご存知でしょうか?

今回はこちらを執筆された木田様と伊藤様(木田様の声が不調のためサポートに)がデータ分析者と業務担当者の架け橋になる「トランスレーター」という役割について詳しく教えてくださいました。

かつてデータサイエンティストは業務と分析とITのスキルを合わせ持つスーパーマンと誤解されましたが、実際にはビジネスの価値が生み出される現場と、データ分析を担うデータサイエンティストやITとの間に「翻訳者=ビジネストランスレーター」が存在することで組織全体のデータ活用力が高まるケースを具体例を交えて説明いただきました。

そして木田様や伊藤様が提唱するビジネストランスレーターを育成するのに役立つ枠組み(5つのステップと4つのスキル)についても詳しく解説。ご興味を持っていただいた方はぜひ書籍をご覧ください。私もお客様におすすめしている良書です!

 

公開可能抜粋版資料はこちらから→ https://speakerdeck.com/jpspss

 

IBMソリューションタイム

「SPSS Modelerでシミュレーションができるの?!―Modelerで行う最適パラメーター推定―」

 

こういったソフトウェアイベントでは他社の利用事例のほかに、自分たちでも応用可能な機能の紹介を受けたいというお声をこれまで多数いただきました。そういった要望を受けて今回はSPSSのシミュレーション機能にフォーカスして具体的な利用ケースをSPSSテックの河田さんから紹介いただきました。

ものづくりでは特定の制約内である性能をクリアした製品を作る場合、CAEなどのシミュレーションなどを使ってさまざまな入力条件を確定するそうです。この時、非常に時間のかかるシミュレーションの事前効率を上げるために機械学習に頼るケースが増えているのだとか。具体的にはサロゲートモデルと称され、こちらでも詳しく河田さんが紹介されています。

https://qiita.com/kawada2017/items/0269c3aefe2bbc3fefaf

ほかにも材料の配合やマテリアルズ・インフォマティクス、プロセス・インフォマティクスでもシミュレーションが活躍するそうです。

 

公開可能抜粋版資料はこちらから→ https://speakerdeck.com/jpspss

 

講演③社員総Explorer化大作戦 ~データデモクラシーの推進~

 

五安城 貴博 様

三菱自動車工業株式会社
グローバルIT本部 デジタルイノベーション推進部
データサイエンスグループ マネージャー

 

 

 

 

伴 俊広 様

三菱自動車工業株式会社
グローバルIT本部 デジタルイノベーション推進部
DXガレージグループ

 

 

 

5月のSPSSヒモトクブログにも寄稿いただきました五安城様は現在社内のデータデモクラシー(民主化)を推進されているそうです。

https://www.ibm.com/blogs/solutions/jp-ja/int-spss-05/

現在はIT組織に所属するデータサイエンスグループが起点となりデータ活用プロジェクトを現場に定着させていますが、今後は現場主導を目指すとのこと。自らのグループはサポートや高度な技術の開発に特化を目指す展望を述べられました。そこでは現場自走を促すためにもデータサイエンティストと現場の業務部門の目的が噛み合うようなスキル・役割に着目しているのだそうです。

お話の中で、私だけでなく多くの参加者が、IT本部の統計スキル習得合宿に興味を持たれたのではないでしょうか。データ活用を目的にした活発な議論の場を生み出すきっかけになり、想定外に盛り上がったそうです。リモートワークにすっかり慣れている私たちに、「データ活用も人と人の繋がりが重要」なのだと教えてくれるトピックでした。

現場の自走を目指す中で、SPSS Modelerがとても役に立っているとお話しくださったのは伴様です。具体的にデータサイエンスグループがワークショップを通じて現場にデータ活用を定着させるプロセスを紹介してくださいました。例えば生産IoTを改善活動に役立てたいが具体的にどう取り組んで良いかわからない現場担当者に、対話を重ねてゴールやプロセスを合意形成するエピソードが印象的でした。

 

公開可能抜粋版資料はこちらから→ https://speakerdeck.com/jpspss

 

「Tips③大規模データとSPSS Modeler」

AIT林さんとSPSSテック坂本さんによるTipsのテーマは大規模データのハンドリングでした。

SPSS Modelerは分析フローを描くだけで自動的にSQLを作成・発行してくれるため大規模なデータベースを入出力にしていると高速に処理してくれます。この機能に目をつけてBIツールのデータ加工に特化して利用するなどのユーザーもいらっしゃるそうで、改めてこのSPSS Modelerのパワフルな機能をフォーカスされたようです。

実際に林さんがSQLプッシュバックにより大幅に処理時間が短縮するデモンストレーションに驚かれた方はぜひお試しください。

SQLプッシュバックで大規模データをハンドリングする内容の記事はこちら→

https://qiita.com/416nishimaki/items/ee13873b9d78268d648a

 講演④パネルディスカッション

パネルディスカッションは組織でデータ活用を進めるにあたり障壁になっているのは何かを整理するところか開始されました。

現場と分析担当者にはかけ違いが起こりがちでそのギャップを埋めるためにビジネストランスレーターの必要性を改めて触れられました。

現場と同じ目線を持った新しい役割に期待が寄せられる一方、製造業の生産現場にはデータと人材が整っており、担当者にツールとスキルを上手く提供できれば、データ活用は進んでいくことが期待できるという意見もあがりました。

また、トップマネジメントの介入が本気度を示す重要な鍵になるという別の視点も挙げられ、現場とトップマネジメントの距離を埋めるために、人事評価も含めて相互の歩み寄りを促すのが重要だと語られました。

さまざまな立場の人に対する期待が寄せられる一方で、「Chat GPTのような生成AIがプログラムを書いたりデータ分析の役割を担うのではないか?」という問題提起もおきました。これ対してモノづくりの現場においてはノウハウは人にあり、業務効率化にはこのような技術は積極的に活用すべきだが、新たな技術から新たな価値を生み出していくのは人の役割という意見がありました。データサイエンティストは各課題に自分事として取り組み、事業価値を上げるためにデータ活用とそのための環境づくりを進めていくべきだと結論付けられました。

 

 

 

終わりに

2019年にIBM箱崎オフィスで実施して以来、オンラインになったSPSSユーザーイベントですが、秋は東京日本橋で行われるIBMイベントTech Xchange内での実施を計画しています。よろしければ10月31日の午後の予定を確保してください。準備が出来次第こちらでもご案内いたします。皆様とお会いできることを心待ちにしております。

https://www.ibm.com/blogs/solutions/jp-ja/walk-spss-2023/

これからもユーザーの皆様と一緒にSPSSを育み、データ活用がもたらすより良き世界を目指していけば幸いです。

 

 

武田 千夏

スマート・アナリティクス株式会社

ソリューション営業部 部長

https://smart-analytics.jp/

 

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