IBM Sustainability Software

#太陽をたがやせ | tsu-mu(ツム)が導く新しいエネルギープロシューマーの世界

記事をシェアする:

気候危機の深刻化やロシアのウクライナ侵攻により、ガソリンや電気代の高騰に対する心配や、エネルギー問題への関心が一層高まっています。

そんな中、先日、東京大手町の3×3Lab Futureにて「電気ってどうできる?自律型太陽光蓄発電ユニット『tsu-mu(ツム)』」というイベントが開催されました。

今回はそのイベントの模様と、tsu-muの生みの親であるPoC TECH株式会社の青澤さおり代表へのインタビューをご紹介します。


「理念的なものとしては理解されているけれど、日々の生活に入り込めていないし、自分ゴト化できていないのではないか。それは『上から教育的』な感じが強くて『日常的に楽しく』エネルギーや環境問題に触れられる機会が少ないからではないか。そんなふうに感じたんです。」

SDGsに対して、PoC TECH社代表の青澤さんはそう言うと、この状況に強い危機感を感じていることを伝えました。

「この状況を変化させられるものが必要だと考え、誰もが自分の手でグリーン電力を簡単に作ることができCO2削減に貢献できる、持ち運び型の太陽光発電・充電ユニット『tsu-mu』を作りました」。

イベント開始前のtsu-muと青澤さん

 

tsu-muは、複雑で難しい設置工事や電気知識不要で電力を作り、蓄え、電気製品に使うことができる、100%カーボンフリーの移動可能な畜発電ユニットです。

必要な機能がすべて一体となっているので、誰でも簡単に「エネルギー・プロシューマー(生産と消費の両方を行う「生産消費者」のこと )」になることができます。

家のベランダに置くもよし、車のルーフに積んでドライブやキャンプに行くもよし。レジャーや日常を楽しんでいるうちに電気が作られ、その場で使うことができます。

 

「2021年11月の実証実験では、tsu-muが作った電気だけで千葉県君津市のキャンプサイトで2泊3日を過ごしました。天気は晴れ時々曇りで、夜は気温0度まで下がる中、tsu-muで作った電力でホットカーペットや電気こたつをテント内で使って暖を取り、夕飯は電気鍋を使った90分ほどの鍋会を3人で行いました。

それ以外にも朝・昼などの食事の準備や、スマートフォンの充電やPCからのオンライン・ミーティングの出席など、3日間すべてtsu-muの電力だけで問題なく過ごすことができました。

これらのことからも、キャンプなどに十分な電力がまかなえることが明らかですし、もしもの非常時にも頼りになる存在だということが証明できました。もちろん、日常づかいをすることで、日々の暮らしにおけるCO2排出抑制にも貢献できます。」

オフグリッド・グリーンエネルギーキャンプの様子

 

青澤さんはキャンプの様子をそう話すと、続いて現在実施中の「グリーンエネルギーチャレンジ 47都道府県ラリー」について話しました。

「日本のCO2排出量の約6割は、移動、住居、食、消費財、レジャー、サービスなどの「家計消費」と呼ばれるものに起因しています。そして世帯当たりの年間CO2排出量のおよそ2/3を占めているのは電気の使用です。

こうした事実と昨今の世界的な気象危機に対する行動の呼びかけにも関わらず、エネルギー問題に対する人びとの意識変容や行動変容は、目に見えるものにまで至っていません。」

→ 参考 | 環境省 報道発表資料(令和4年3月29日)令和2年度 家庭部門のCO2排出実態統計調査の結果(確報値)について」

「エネルギーを作ることをもっと身近に『感じて』もらい、作ったエネルギーに食や遊びを通じて『触れる』体験をしてもらえば、意識や行動に変化を起こせるのではないか? そうした考えから、日本中をtsu-muを積んだ車で周り、訪問先で出会った人たちとグリーン電力をつくる体験を行う『グリーンエネルギーチャレンジ 47都道府県ラリー』をスタートしました。

5月は福岡県北九州市で『お掃除ラボ』という地域活動に参加し、電気草刈り機をtsu-muの電気で動かし街を一緒に清掃した後、tsu-muの電気で綿あめを作りみんなに配りました。ものすごく盛り上がりましたよ。

その後も佐賀県や長崎県、そして再び北九州市エコタウンを訪問し、現地の『循環型社会』への取り組みなどを見学させていただきました。」

 

47都道府県ラリーはこの後も日本各地で行われるそうです。最新情報をこちらのページで確認し、お近くにやってくる際には参加されてみてはいかがでしょうか。

47 都道県ラリーの訪問予定スケジュール

 

イベントの最後には、参加者からの質問に答えるQAタイムと、会場参加の方たちへのtsu-muで作った綿あめプレゼントが行われました。

ここではQAタイムに出たいくつかのトピックをご紹介します。なお技術的な質問には、PoC TECH社取締役の小澤貴裕さんが主に回答されていました。

 

Q: 発電量を数値で聞いてもどれだけのCO2を削減したのか、なかなかピンと来づらい…

A: そうですよね。火力発電の1kWh あたりのCO2排出量を知っていると多少イメージしやすくなるかもしれません。従来型の石炭火力発電で0.867㎏、LNG火力発電はその半分以下の0.415㎏です。tsu-muなら、これらが完全にゼロになります。

ちなみに、今日ここまでの40分ほどのパソコンによるプレゼンテーションも、消費した電力38.4Whはtsu-muの電力を使っていますので、電力会社により計算が若干異なるのですが、大体500mlのペットボトルに換算して16本分のCO2削減ができている計算となります。

 

Q: 最近ソーラーパネルがオプションで販売されているポータブルバッテリーを購入したが、調べていたらバッテリー寿命の短さが気になった…

A: 使用する頻度や使い方によっても寿命のタイミングは変わってきますが、多くのポータブルバッテリーが500回程度の充電回数となっています。一方tsu-muは、高性能のリン酸鉄リチウムイオン電池を使っているので、4,000回以上の充電回数で使用いただけます。

 

Q: tsu-mu自体が、あるいは使用されている充電池やソーラーパネルの製造や廃棄自体が環境負荷を高くしてしまう心配はないのか?

A: tsu-muの主要パーツは独立構成されていて、劣化パーツを取り換えながら長くご利用いただける仕様となっています。また、利用終了で返却いただいたtsu-muは、「リビルド(再構築)」というコンセプトで極力無駄を無くして再生し、海外未電化地域や供給不安定地域へ安価に提供する計画です。

なお、昨今太陽光パネルの廃棄問題が注目されていますが、tsu-muのパネルは細かく裁断することができるようにデザインされています。

tsu-muの青澤さおりさんと小澤貴裕さん

 

イベントが始まる前に、PoC TECH社の目指す世界観や今後の方向性について、さらになぜtsu-muを開発したのかなどを青澤代表に伺いました。


−− 青澤さんは半導体メーカーや広告代理店、脳科学のスタートアップなど、多彩な経験をお持ちですが、なぜ再生可能エネルギー(再エネ)に取り組まれているのでしょうか?

青澤: 「世界が変わった瞬間」に立ち会ってしまった経験が大きいと思います。私は、阪神大震災を兵庫県で経験しました。幸いなことに家族に大きな被害はありませんでしたが、一夜にして自宅裏にあったアパートやマンションが消滅するのを目にしました。

自然の恐ろしさを感じるのと共に、復興の中で改めて人間は自然と共存していかなくてはならないことを学びました。

それから、高校生のときは農業学校で環境緑化を学んでいたのですが、その頃から「地上のあらゆるものが太陽の恩恵を受けている」ことを感じていました。ですから、エネルギーに取り組む際にも「まずは太陽から」と自然に意識が向かいました。

 

−− tsu-muで目指していることについて教えてください。また、今後の展開予定なども。

青澤: まずは、2025年度までにtsu-muを1万台ご利用いただくことで、家庭部門におけるCO2削減効果2,170トン/年を目指しています。

それを実現するために、先日350,000円(税込385,000円)という戦略的な価格で「tsu-mu BASIC」の販売をスタートしました。

自律型太陽光蓄発電ユニット「tsu-mu」製品詳細ページより

 

「tsu-mu BASIC」はtsu-muコンポーネントの一部です。今後、太陽光だけではなく、風や水を活かした発電ユニットも追加発表し、それらと組み合わせて使えるようにすることも計画しています。再エネは太陽由来だけ、風力由来だけだとどうしても足りない部分が生まれてきてしまいますから。

そして今後も「マイクロ・オフグリッド」な再エネ製品を発表していくのと併せて、他社のCO2削減に取り組む製品やサービスとの連携を強めていきたいと考えています。

 

−− 今後tsu-muが大きく飛躍し、世界中で「 #太陽をたがやせ 」という製品のキャッチフレーズを目にしたり耳にしたりするようになるには、どのような変化や支援が必要だとお考えですか?

青澤: すでに多くの個人の方や組織から応援を頂いていますが、特に組織に関してはもっと増やしていければと思っています。具体的には、代理店やリース方式での展開など、販売や流通経路を一緒に広げていけるパートナーを見つけたいですね。

個人の方の応援ということでは、先日、ソーシャルグッドに特化したクラウドファンディング「レスキュー」(現在のサービス名は「For Good(フォーグッド)」)で21日間限定のクラウドファンディングを行い、61名の方がたに応援団に加わってもらいました。

今後も、応援団の方がたと丁寧な支援・理解のキャッチボールを続けて、たくさんの人たちに「 #太陽をたがやせ 」を実践いただき、少しでも早く脱炭素が進み、あたらしい豊かさが社会に広がれば良いなと考えています。ぜひご支援をよろしくお願いします。

 

問い合わせ情報

 

関連記事

Yara International ASA | 食糧問題の解決を目指して

動画デモで確認! 炭素排出量を自動計算するカーボン・アカウンティングAPI

「サステナビリティー経営、不可避の現実」 | from IBVレポート

 

TEXT 八木橋パチ

More IBM Sustainability Software stories

職業人としての障がい者(雇用と生業づくり)と社会モデル | 8月5日イベント開催(PwDA+クロス8)

IBM Partner Ecosystem, IBM Sustainability Software

  2024年8月5日、日本IBMは虎ノ門本社のInnovation Studioにて、「職業人としての障がい者(雇用と生業づくり)と社会モデル」と題したイベントを開催します。 当記事では、イベント開催の背景や ...続きを読む


視覚障がい者補助「ココテープ」ワークショップレポート | PwDA+クロス7

IBM Partner Ecosystem, IBM Sustainability Software

インクルーシブデザイン専門企業「PLAYWORKS」様と視覚障がいがある方たちに虎ノ門のIBM Innovation Studioにお越しいただき、視覚障がいのある方たちが安心して利用でき、周囲の晴眼者たちとの共創を進め ...続きを読む


誰もが自分らしく活躍できる会社へ ~PwDA+ ラウンドテーブル~ | | インサイド・PwDA+8

IBM Sustainability Software

「あなたは自分を卑下しなくてもいいよ。障がいがあったって、社会でそれなりのステータスを持って生きられるんだから。」 「心の調子が悪くて保健室登校をしていたのに、『どうして病気でもないのに保健室にいるんですか』と先生に言わ ...続きを読む