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[事例: 掘削機大手サンドビック社] Watson IoTを用いて鉱山産業に第四次産業革命を

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■ 当事例のポイント

  • データ駆動型の生産性向上と予知保全を実現するソリューションにより、オーストラリア、インド、イギリス、アフリカと世界中に拡がるサンドビック社の顧客企業は、地下鉱山採掘の安全性と生産性を改善している。
  • 掘削機及び掘削現場にWatson IoTソリューションを導入。通信技術とリアルタイムIoTデータを元に、根本的な原因に応じたアクションがタイムリーに取れるよう、トンネル構内や地中深くのトラブルをリアルタイムに把握している。

 

■ 採掘/鉱業企業に安全性の向上とコスト削減をもたらす予知保全

世界の人口増加にともない、鉱山および岩盤掘削産業への要求も増加を続けています。その結果、掘削作業は以前よりもはるか地中深くまで行われるようになり、作業者同士のコミュニケーションや地上近くのチームとの通信の難易度や、機器メンテナンスや事故対応がより困難を伴う複雑なものとなっていました。

そんな状況を打破すべく、世界有数の高級鉱山機械メーカーであるサンドビック社はIBMと協業してIoTとAIを用いた「OptiMine Analytics」の開発および実装を進め、従業員の安全性の向上、メンテナンス費用の削減、生産性と運用効率の改善を実現しました。

 

OptiMine Analyticsは、掘削機などの情報を統合した運用管理システムと、IoTデータを活用した予知保全アプリケーションを組み合わせた、新しい情報管理ソリューションです。

Watson IoTの高度な分析機能を用い、掘削機やアプリケーションからなる複数ソースのデータをリアルタイムで統合・分析することにより、可用性や稼働率、パフォーマンスの向上などさまざまな効果を世界中の採掘/鉱業企業に提供しています。

OptiMine Analyticsの開発にあたり、IBMとサンドビック社、そしてパートナー企業は、新たなビジネス価値を生みだすために複数回にわたる「エンタープライズデザイン思考・ワークショップ」を実施し、データ駆動型の生産性向上と予知保全を実現するソリューションのフレームワーク開発を行いました。

 

その後、サンドビック社とIBMは、採掘作業という厳格な信頼性とセキュリティが求められる現場に適したプラットフォームを、Watson IoTのテクノロジーを活用することにより共同開発しました。

このプラットフォームの大きな特長の一つは、IoTセンサーのデータを活用した予知保全技術が導入されていることです。サンドビックグループのRock Drills & Technologies社の社長パトリック・マーフィー氏は、こう述べています。

「故障発生時に対応する事後保全から予知保全へシフトすることで、メンテナンスにかかっていた時間とコストを大幅に削減することができています。

Watson IoTの高度な分析力により、OptiMine Analyticsは多くの顧客企業に、よりスマートで、安全かつ生産性の高い運用サービスを提供しています。」

 

 

■ 続々と届く顧客企業からのメッセージ

サンドビック社とIBMの顧客である世界中の鉱山会社が、IoTの活用により過酷な現場環境へ鉱山労働者を送り込む時間を短縮し、掘削現場における安全性を高めています。

そのうちの一社であるヨーロッパを中心拠点とするPetra Diamonds社のラクター・ルード氏は、次のように述べています。

「私たちにとって最も重要なのは従業員の安全です。機器が落下した際など、事故を最小限で済ませるには、トンネル内で何が起きているかをすぐに把握することが重要なのです。

サンドビック社とIBM によるOptiMine Analyticsのおかげで、アクシデントの根本的な原因がなんであったかをリアルタイムデータを元に把握し、それに応じたアクションをすぐに取れるようになったのです。」

 

オーストラリアに本社を持つBarminco社のCEO ポール・ミュラー氏は、次のように述べています。

「鉱山産業全体でデータ活用の価値は高まり続けています。アナリティクスとマシンラーニングの技術を中心に、AIが運用効率向上に新しい可能性をもたらしているのです。

OptiMine Analyticsを導入することで、私たちはサンドビック社が有している掘削機器に関する莫大なデータと精密な知見を、当社の取り組みに迅速に活かすことができています。」

 

OptiMine Analyticsは、南アフリカ共和国におけるVedanta Zinc International社のブラック・マウンテン・マイニング鉱山事業でも使用されており、データドリブンな業務改善により、トラックやローダー、ドリルなどの安全性や効率性、生産性などを加速しています。

また、インド最大の亜鉛、鉛、銀の総合メーカーであるHindustan Zinc社は、Sandvik社の協力を得てインドのシンザークハード鉱山で大規模なデジタル変革を実施しデジタルツインの仕組みを導入。その結果、必要とされるすべてのインフラストラクチャとプラットフォームを、ワールドクラスの安全、効率、生産性を満たすものへと変容させました。

 

 

■ 今後の展望

掘削プロセスの最適化とそのためのソリューションを求める声が高まり続ける中で、世界中の60を超える鉱山で数十年にわたり掘削事業のオートメーション化を進めてきたサンドビック社は、リーディングカンパニーとして間違いなく大きな足跡を残しています。

しかし、鉱山産業に今後AIとIoTが与えるであろう大変革を考えれば、センサーによる状態監視と設備・機器管理に基づくトラッキングシステムというのはまだ単なる入り口に過ぎないとも言えます。

データをビジネス変革に導く実用的な洞察・知見に変換するのは簡単なことではありませんが、今後は一層、掘削技術とソフトウェアエンジニアリング、そしてデータサイエンスを横断する学術的な取り組みが進んでいくこととなります。

 

私たちIBMは、サンドビック社をはじめとする多数の大手鉱山会社のビジネスにIoTとコグニティブ能力を提供することで、掘削業務におけるバリューチェーンの変革を支援しています。

そして今後も鉱山事業者に、学術的アプローチを進めることで大規模な設備投資を必要としない新たな効率向上手段を提供し、第四次産業革命とも呼べる革新を追い求めます。

 

 

問い合わせ情報

お問い合わせやご相談は、Congitive Applications事業 にご連絡ください。

 

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藤 泉也  データ戦略活用アドバイザー, AI Applications

当記事は、Sandvik and IBM Usher in the Fourth Industrial Revolution to the Mining Industry with IBM Watsonを抄訳し、日本向けにリライトしたものです。

 

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