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土木・産業インフラにもっとサステナビリティーを

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はじめに

各国各地域の行政組織や地方自治体にとって、劣化した土木インフラストラクチャーの対応は大きな課題です。事故や災害は社会や経済に大きな打撃を与えるだけではなく、環境問題も悪化させてしまうでしょう。土木に関わる技術者たちは、懸念や悪夢が現実となる前に、老朽化したインフラの修復作業を速やかに行うようにと警鐘を鳴らしています。

IBM Maximo for Civil Infrastructureは、そうした声に応え、社会に速やかに安全なインフラを提供するために開発されました。

 

インフラが抱える問題点 | このままでは悪化の一途を

政府は過去数十年間にわたり、最新のスーパーハイウェイや息をのむような壮大な橋、歩行者の通行データを収集するスマート歩道など、土木インフラストラクチャーの新規事業に莫大な費用をかけてきました。

一方で、日常生活や経済に欠かせない多くの古い建造物やインフラ維持のための投資は、とても十分と呼べるものではありませんでした。

 

イタリアのモランディ橋は、2018年に落雷を受けて倒壊しました。米国ミシガン州中部では、2020年の豪雨により老朽化した2つのダムが決壊し大きな被害をもたらしました。また2022年1月には、暴風雨の影響で激しく劣化したカリフォルニア州のハイウェイ1号線の一部が崩壊して海に沈みました。

そしてここ日本では、中央自動車道の笹子トンネルで天井板が崩落し、9人の尊い命が奪われてしまった大事故から先日ちょうど10年が経ちました。事故後、橋やトンネルの5年ごとの定期点検が義務化され、多くの国民にインフラにおけるメンテナンスとその正確な作業記録の重要性が理解されました。

他にも、高速道路のトンネルや高架橋、浸水被害が頻発する地域の道路、異常気象に見舞われた送電塔など、重大事故や災害につながりかねないインフラは世界中に枚挙にいとまがありません。

 

土木技術・事業者、そして公共部門に関係するほとんどがこれらの問題を十分に認識しており、それを解決するための資金獲得に奮闘しています。

しかし米国土木学会によると、米国だけでも今後10年間で2兆ドルの資金不足が見込まれています。近年の地球温暖化による異常気象の激甚化・頻発化を考慮すれば、インフラ崩壊が加速してしまうことも予測されている状況です。

数値で見る米国内インフラ課題(一例)

  • 橋梁の1%が構造的な欠陥を抱えている
  • 道路の整備不良による交通渋滞・遅延は69億時間
  • 水道管の破損により、毎日69億ガロンの処理済み水が漏れている

 

解決策 | 資産管理への新しいアプローチ

手作業による点検が有効なのには疑いの余地はありません。しかし、(コストの問題点を除いたとしても)完了までに膨大な時間がかかるという問題点と、本来不要な廃棄物や排出物を生みだしてしまうという問題点を有しています。

インフラストラクチャーの安全性向上と高効率運用の実現には、資産管理と保守に対する新しいアプローチが必要です。それが、土木インフラの障害発生タイミングを把握し、先回りする「予知保全」です。

インフラ管理者に必要なのは、下記要件を満たす予知保全を実現するインテリジェントな資産管理ソリューションです:

・ 資産の分析方法と優先順位付けの継続的な改善

・ 現在のインフラ管理方法の段階的な改善

・ より効率的な修理や交換を行う必要がある箇所の特定

・ 効果的かつ安全な方法で作業が行われていることの確約

 

目指すべき予防保全を提供するIBM Maximo for Civil Infrastructure

IBM Maximo for Civil Infrastructureは、AIとIoT技術を活用して土木技術者の能力を増強する、大規模インフラストラクチャーの保全・保守やパフォーマンス管理に特化したソリューションです。

Sund & Baelt社やアウトストラーデ・イタリア社など、独自のデジタル変革を進め世界をリードしている土木企業とのコラボレーションにより開発されました。

 

Maximo for Civil Infrastructure は、橋梁やトンネル、高速道路や鉄道、ダムなどの資産の構造的健全性をより効果的に監視し、次世代の信頼性重視保全である「目指すべき予防保全」を組織に提供するソリューションです。

機器状態データ、センサーデータ、ウェアラブル・デバイスやドローン、ロボットから送られてくる静止画像、動画データ、さらには世界一の高精度を誇るThe Weather Companyが提供する気象データなど、多数のデータソースを統合し、資産の可用性と信頼性を向上させるモデル化、マップ化、監視を行います。

建造物の亀裂、錆、腐食、振動などの発生と、強いストレスが与えた影響やそれらがもたらす潜在的なリスク度合いを分析・測定し、リモート監視と分析モデリングの結果から警告サインを提供します。

 

Maximo for Civil Infrastructureの導入により、組織は以下を迅速に手にすることができます:

  • コンプライアンスと規制の遵守
  • メンテナンス最適化と、建造物の劣化や損傷の早期警告
  • 障害予測と迅速な障害対応
  • 保全効率をさらに高めていくための分析
  • 市民の安全性向上への貢献
  • 検査や修理を含む運用コストの削減
  • 資産の寿命の延長

 

リーディングカンパニーに信頼され選ばれているIBM Maximo 

多くの公共インフラストラクチャー企業に支持・導入されているIBM Maximoですが、ここでは世界最大級の土木インフラを所有・運営しているSund & Baelt社との共創の一部をご紹介します。

 

Sund & Baelt社は、従来の保守点検と修理のやり方から、問題の未然防止とよりスマートな資産監視を実現するデジタルを駆使した設備保全管理を実現する方法を求め、技術パートナーを探していました。

共創パートナーにIBMを指名した同社は、共同でIBM Maximo Asset Management for Civil Infrastructureを開発し、さらにその他の戦略的テクノロジーの導入も進めました。

 

同社の設備保全管理および運用担当エグゼクティブディレクター、ビャーネ・ヨルゲンセン氏はこう言っています。

今後の5〜10年で、生産性は15〜25%向上するでしょう。そしてインシデントの発見から修復までの時間も、おそらくは30%以上の短縮が見込めるはずです。

もっと重要な点もあります。当社が所有するグレートベルト橋は寿命100年という計算で建設されましたが、データとデジタルソリューションを適切に使用することで、橋の寿命を100年延ばすことができそうです。寿命が延びれば二酸化炭素排出量を大幅に削減できるのです。

 

これらの取り組みと実績が評価され、Sund & Baeltはデンマーク国内のサステナビリティ賞を受賞しました。さらに、最先端のAIアプリケーションを表彰するVentureBeatのAI Innovation Awardsにもノミネートされています。

 

私たちは、エネルギー産業、公共事業、交通・土木などの社会インフラの各領域で、インフラ管理の専門家にデジタル・インテリジェンスとエンジニアリングのノウハウを提供してきました。

IBM Maximo for Civil Infrastructureは、私たちが業界のリーダーたちと協力し、世界が直面する課題の解決を支援した一例です。IBMは今後も、インフラ保全・管理への投資を続け、パートナーと協力してソリューション開発を進化させ、活発なエコシステムを構築していくことで、世界中でインフラを支える企業の皆さまからの信頼にIBM Maximoを通じてお応えしていきます。

引き続き、より安全でより良い未来を切り開くことに、IBMは全力を尽くしていきます。

 


当記事は『Let’s build a new era of sustainability』を日本向けに編集したものです。

 

 

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