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アイデアミキサー・インタビュー | 善積真吾 & 井上やよい(MEGLOO(メグルー)

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「プラスチックの使い捨て」を無くしたい。 

もっと美味しく食べられるよう罪悪感を無くしたい。

 

軸となる強いアイデンティティやアイデアを持ちつつ越境や開拓を実践している方がたに、これまでの足取りや想いについて語っていただく「アイデアミキサー」シリーズ。

第8回は、現在、「循環型社会を一緒に作りましょう」とクラウドファンディング(以下「クラファン」)を行っているMEGLOO(メグルー)の善積真吾さんと井上やよいさんにご登場いただきます。

(インタビュアー 八木橋パチ)

 

MEGLOOの容器を手にする2人(左: 善積 真吾、右: 井上 やよい)

善積 真吾 – 16年間ソニーで「ものづくり×今ない価値の創造」をする新規事業立ち上げ → 使い捨てではなく、みんなで使い回す文化を新しい容器とアプリで作り上げるため、そしてテクノロジーで地域の魅力を発掘させるため、2020年末に株式会社カマン設立 / 2017年末より鎌倉在住。

井上 やよい – 社会の変化をにらみつつ、技術を活用した今後の業務やシステムのあり方に関するコンサルティングをお客様に展開している。日本アイ・ビー・エム株式会社 IBM Consulting所属。愛犬家。

 

ゴミが出ない気持ち良いテイクアウト文化を広めたい | MEGLOOのクラファン

 

―― 今日は善積さん、そしてやよいさんお二人ご自身についてのお話も伺いたいのですが、でもきっと、まずは何より先にクラファンの事をお話ししたいですよね?

善積真吾(以下「善積」): お気遣いありがとうございます。そうですね。やはりどうにかクラファンを成功させたいですし、そのためにはできるだけ多くの人に知っていただき、応援していただく必要がありますから。

手短に、MEGLOO(メグルー)と、現在実施中のクラファンのことを紹介させていただきますね。

 

【リユース容器が街を巡る!】ゴミが出ない気持ち良いテイクアウト文化を広めたい!

(社会問題と向き合う人のクラウドファンディング「GoodMorning」)

 

 

簡単に言うと、「テイクアウトで生まれてしまうプラスチックごみをどうにかしたい」という想いから生まれた、リユース容器循環サービスです。

サービス加盟店舗で受け取ったテイクアウトの容器を、使用後数日内にお近くの加盟店舗にお返しいただくという流れで専用容器を捨てることなく循環させ、ごみの発生を防ぎ環境負荷を削減します。

去年10月に鎌倉市内で実証実験をスタートして、これまでの5カ月間でおよそ1000個の使い捨て容器を削減することができています。なお、利用者には金銭的負担はなく、衛生面も仕出し弁当と同レベルなので安心です。

現在、持ち帰り容器の「洗いやすさ」「耐久性」「密閉性」をより高めてもっと良いサービスを提供しようと、目標金額1,000,000円のクラファンを実施中です。実はそれだけでは資金足りないんですが、一番の目的は一緒に循環型社会を作っていく仲間を増やしていくことです。容器の色はどれが良いとか、本気でこの世界を作っていきたい人たちの意見を聞かせていただいて、プロダクトに反映していきたいです。応援をよろしくお願いします!

 

— たくさんのごみを発生させてしまうことに罪悪感を感じている人は少なくないと思うので、とても良いサービスですね。

善積: ありがとうございます。特にコロナ後にテイクアウトサービスを頻繁に使うようになり、本当にごみの量の増え方に驚きましたし、僕自身も罪悪感を感じた1人です。みんなも同じじゃないかと思い身の回りでアンケートを取ってみたところ、80%以上がちょっとした罪悪感を感じているとのことでした。

せっかく美味しいご飯なのに、そんな気持ちを抱くのはもったいないし、後味も良くないですよね…。MEGLOOを通じて、人びとの幸福感と地球環境という2つの問題解決に貢献したいです。

 

2人の出会いと想い | 東ティモールでのマイクロ発電

 

— 今日は善積さんだけではなくお仲間の井上やよいさんにもご同席いただいています。お2人は知り合ってから長いんですか?

井上やよい(以下「やよい」): 2010年頃からですね。当時、私はコーポレート・サービス・コー(CSC)というIBMが社員に提供している途上国での社会貢献プログラム参加から帰ってきたところで、会社の「営利活動全開」の日々とCSCで感じていた充実感のギャップに頭がまだ馴染めずにいたんです。

そんなときに、東ティモールで感じた課題から発案されたキックボードを使ってのマイクロ発電に取り組む「LinkWatt」という善積さんの取り組みを知り、私もすぐにチームにプロボノ(職業上の技能や専門知識を活かしたボランティア活動)メンバーとして参加したいと伝えました。

そして途上国の課題を製品を通じて解決する「See-Dコンテスト」に参加して優秀賞をいただき、インドの無電化地域にプロトタイプを持っていって顧客インタビューを実施するところまで行きましたが、その後、某大手企業で「遊びの力を電力に変える」という新規事業立ち上げプロジェクトが始まり、その中で一緒にやっていこうという形となりました。

チームLinkWattメンバー『Campfire: アソビの力を電気に変える小型「遊力」発電機LinkWattを未電化地域へ!』より

 

善積: 僕自身は2012年に海外留学するタイミングでLinkWattでの活動から離れてしまいました。そして2014年頃、大企業の担当者と一緒に活動を始めたタイミングで、LinkWattとしての活動を停止することとなりました。

ただ、今もほとんどのメンバーと付き合いは続いていまして、昨年MEGLOO(メグルー)をスタートするときにも、やよいさんにCOO(Chief Operations Officer: 最高執行責任者)として参加しないかと声をかけました。そしたら速攻でチームに加わってくれて。

 

やよい: 待ってました! って感じで(笑)。とは言うものの、最初はちょうどIBMの仕事がすごく忙しいタイミングで、なかなか本腰を入れられなかったけどね。

 

「パパー! はいっ、ごみ!」 | 幼い息子にごみだらけの世界を残したくない…

 

— LinkWattの活動は途上国支援、そしてMEGLOOはごみ問題解決です。いくぶん方向性が異なるなという気もするのですが、ごみ問題にも長年興味を持たれていたんですか?

善積: 実は、僕は環境問題に対する意識は低い方だったんです。なんなら「ごみ問題…めんどくさいな」くらいに考えていました。でも、僕には今5歳の息子がいてよく一緒に散歩をするんですが、数年前から「パパー、ごみ!」ってよくごみを見つけると僕のところに拾って持ってくるようになったんです。数年前、保育園でごみを拾ってなくしましょうって習ったらしいんですね。実直にそれを実行する姿に感銘を受けました。

僕ら大人がごみを生み出すことを減らさない限り、彼らは一生ごみ問題に苦しめられてしまいます。日本は一人あたりのプラスチックごみ排出量は世界2位ですし、コロナ禍のここ2年でその量は間違いなく増えているでしょう。2050年には、海洋プラスチックごみの量が魚の量を上回るだろうという調査結果も出ています。

 

やよい: 私は前から過剰包装が気になっていました。私が子どもの頃は、まだ自分で容れ物を持って買い物にいくような文化もまだ少しは残っていたけれど、今はもうなくなってしまいましたよね。それに、地域やコミュニティを意識して生活したり買い物したりすることも、めっきり減ってしまったなって。利便性を手放すことは難しいけれど、消費者としてもう少しできることはあるんじゃないかなってずっと感じていたんです。

 

— ただ、MEGLOOで使用する専用容器はプラスチック製ですよね? 結局はごみを増やしてしまうのではないかという懸念はありませんか?

善積: これについては何度となくチームで議論しました。さまざまな材質を比較検討した結果、「悪いのはプラスチックじゃない、使い捨てだ」という結論に至りました。

食品という人体や健康に直結するものを扱うことから、洗浄のしやすさは欠かせません。そしてテイクアウトで持ち帰ってから食べることを考えると、重量の軽さや密閉性、さらに電子レンジで温められることも重要です。そして業務用食洗機で繰り返し洗って使える耐久性も欠かせません。

こうして検討を進めていくと、現状においてはプラスチックを用いることが最適解でした。ただ、将来的には技術が進化し、より良い材質が開発されることにも期待しています。

開発中の容器のデザイン

 

「40歳になったから退社します」「ハァ?」

 

— 善積さんは昨年末に16年間勤めたソニーを退社されたんですよね? それはMEGLOOに全パワーを注ぎ込むためだったのでしょうか?

善積: もちろんそれもありますが、それだけではありません。僕、40歳になったら会社を辞めようって前から決めていたんです。だから、8月末に誕生日を迎えたときに「40歳になったら退社します」って上司に伝えました。でも、ポカーンとされちゃって。「ハァ?」って。

 

— そりゃそうでしょ(笑)。でも、どうして40歳なんですか?

善積: 僕、本当にソニーが大好きで、仕事にもすごくやりがいを感じていました。20代でイントラプレナー(社内起業家)としてカメラ関連の新しい製品作りをやらしてもらい、すごく楽しく働いていましたから。

ただ、そのときの経験を通じて、社内にボトムアップ型の製品やサービス開発ができる仕組みが必要だと強く感じました。それで、30代は大企業×新規事業の育成・支援のためのプログラム作りを行っていました。10年間本当にたくさんの新規事業支援を行って、正直、大企業×新規事業というのが浸透してやりきった感がありました。社内外にしっかりと土台を作り上げたと思っています。

それで、今度は大企業内ではなくて、特色ある地域内でのおもしろい事業を立ち上げていきたいと思うようになったんです。また、Profit(利益)視点だけではなくPeople(顧客)視点で入社以来ずっと新規事業をしてきましたが、これからはPlanet(地球環境)視点で新規事業を立ち上げていき、子どもたちのために豊かな自然環境や文化を残していきたいと思うようになったんです。それがちょうど40歳と重なりました。

 

— なるほど。MEGLOOが鎌倉からスタートしているのもそういうことなんですね。

善積: そうです。鎌倉には自然と文化があります。新鮮な魚や味の濃い野菜が収穫できることもあり、住んでいる人たちも自然や食に対する意識が高い方が多いです。そのせいか、飲食店のレベルも本当に高いです。

そしてこれは強くアピールしたい「自慢ポイント」なんですが、MEGLOOに参加いただいているお店は、地元民に愛されている本当に美味しいお店ばかりです。自信を持ってお薦めできます!

ちなみに、クラファンのリターン(お礼の品)には、鎌倉近辺の生産者から直接仕入れた新鮮な野菜や果実などをお送りする「久遠の野菜」コースも用意しているんですが、その梱包や発送作業は、鎌倉で難民の方がたを支援している施設で行い、彼らにお手伝いしていただきます。

 

ローカルから広域へ。個人から営利企業の世界へ。

 

— 今後のMEGLOOの展開予定について教えてください。

善積: やりたいことがいっぱいあるのですが、まずは今回のクラファンをしっかりと成功させて、お店の方たちにもお客様にもより喜んでもらえる容器の開発を進めたいですね。やっぱり、ステキな器に入っている方が、味も美味しく感じられますから。素晴らしい料理の質に応える容器にしたいです。

それから、今年の夏には屋外やスタジアムなどでのイベント会場での展開を考えています。数万人が集まるイベントでは、1日で1トンを超えるものすごい量の容器ごみが発生しています。なんとかしたいですよね。これは今、いくつかの運営団体や自治体さまなどと話を進めています。

 

— お話を聞いていると、テイクアウト容器だけではなく、いつかきっとごみ全体に対してアプローチを取られるんじゃないか? という気もしてきます。

善積: たしかにそういう考えもありますが、まだまだその前にやるべきことが山積みになっているというのが現状です。

テイクアウト容器の展開も、鎌倉だけではなくエリアを拡げていきたいとも考えていますが、そのためには僕らの考えに共感して、地域展開を本気で考えて一緒にやってくれる仲間やアンバサダーが必要ですし。

 

やよい: ローカルからより広い地域、広域へ。プラごみ削減の取り組みを、MEGLOOを利用する個人から社会へと拡げて、さらに営利企業の世界へもつなげて拡大させていきたいというのが私の野望なんです。MDGs(ミレニアム開発目標。2000年に2015年を達成期限とする国際的な開発目標としてセットされた)が発展し、今のSDGsとつながり拡がっていったように。

 

— 最後に、この記事ここまで読んでいただいた読者に、何かお願いしたいことがあればどうぞ。

善積: クラファンの応援ももちろんものすごく嬉しいですが、プロボノ的にMEGLOOに関わってくれる人がいたら嬉しいです。手を動かせる人間がまったく足りていない状況なので…特に、ソフトウェア・エンジニアとか。IBMさんの社内にいませんかね?

他にも、使い捨て文化を無くすための取り組みアイデアを持っている方や、僕らと一緒に循環型社会を作っていきたいと思っていただける方がいたら、ぜひご連絡いただきたいです。

MEGLOOをよろしくお願いします。

 

インタビュアーから一言

元々知人・友人が多い地域ではあったのですが、ここ2年間でさらに多くの知り合いが鎌倉へと引っ越していきました。私も年に数回遊びに行きますが、たしかにとっても魅力的な街ですよね。次回行く際にはMegloo対応マップを見ながらランチのお店を決めようっと。

(取材日 2022年3月30日)

 

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