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アイデアミキサー #1 | parkERs ブランドマネージャー 梅澤 伸也 (後編)

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parkERs  ブランドマネージャー 梅澤 伸也 (後編)

公園とテクノロジーで「人らしさ」の調律を

「アイデア」には大きく2つの意味があります。
思いつきや新たな工夫という意味と、もう一つ理念や本質という意味です。

「アイデアミキサー」シリーズでは、軸となる強いアイデアを持ちながら越境や新分野の開拓を実践している方に、その想いを語っていただきます。– その「アイデア」は、IoTやAIに代表されるテクノロジーや社会と、どう混ざっていくのでしょうか?

第一回目にご登場いただくのは、parkERs(パーカーズ)のブランドマネージャー梅澤 伸也さんです。

(インタビュアー 八木橋パチ)

前編はこちらから

 

parkERs – 青山フラワーマーケットで広く知られている株式会社パーク・コーポレーションにて、「日常に公園のここちよさを。」という考えのもとオフィスなどの空間デザインと実装を手がけている事業部。

梅澤伸也 – parkERsのブランドマネージャーで、「ワク」が嫌いな人。ワクをつなぎ合わせて新ジャンルとしてしまうのが好き。好きな言葉は「無為自然(むいしぜん)」。

 

COVID-19による価値観の変化。拳や銃ではなく花を

— 今回梅澤さんにお話を伺いたかった理由の一つが、常に「環境」について考えている人だからです。COVID-19という大衝撃の後、人びとの環境への意識や価値観はどう変わっていくと思いますか?

…予測するのはとても難しいですね…「僕の興味」として話をさせてください。

まず、価値観の変化がどのように行動の変化となって表出するのかが気になっています。これまでの「世代と権力が比例する」 — もちろん多数の例外はありますが、一般的な傾向として — という社会が、どれだけフラットに近づいていくのか。あるいは近づかないのかという点にまずは強く興味を持っています。

 

— もう少し具体的に聞かせてもらえますか。

日本を代表する企業のトップが「直接対面主義」や「トップダウン型経営」を止めて見直すと言っています。一方で未だに従来のやり方に頑なにしがみつこうとしている経営陣の話も耳にします。

これを二極構造的に捉えて「どっちが勝つか負けるか」で見る必要はないし見たくもないですけれど、でもどういう価値観と世界観の会社が増えていくのかとか、それを社会がどう受け入れていくのかの綱引きに注目することで見えてくることがあるんだと思います。

そして、その2つが融合に向かうのか、あるいは分断の溝を酷くしてしまうのか…。

 

— そんな社会的な動きの中で、parkERsあるいは梅澤さんはどういう役割を果たして行こうと考えていますか?

まず、parkERsあるいは僕という前に植物の役割から話をさせてください。僕が思うに、植物って東洋医療における漢方的な役割を果たすんです。西洋医療における対症療法的な「AにBを当てがいAを抑え込む」というものではなく、Aの発生理由そのものにじんわりと作用させ、Aがそもそも発生しないような状況や体質に長期的に改善していく。

僕らは、そういう生き物たちを人びとの周りに提供していきます。そしてそれは分断を生むのではなく、対話を生んだり共感で人をつなぐお手伝いだと理解しています。

 

— そうか。まずはニュートラルにお互いが向き合える状態、いわばスタート地点を作っているのがparkERsなわけですね。

お花って、尖った室内装飾やオフィス家具と違って、個の主体を感じさせ過ぎることがないんです。主張が強すぎるものって好きを生み出す反面どうしても「嫌い」も生み出してしまうじゃないですか。

自然とか植物って、もっと素直でフラットな気持ちを人の奥底から呼び起こすんですよね。

 

— たしかに花を見て荒ぶる人はいないですね。お花って「成る」とか「する」という動きよりも、「在る」という状態を感じさせてくれる気がします。

そうですよね。そしてそういう花だからこそ、人間の本来の姿を引き出してくれると思うんです。

僕ね、性善説に立ってるんです。人は、本来もっと利他的な生き物だと信じています。ただ、集団圧力や強いストレスに囲まれた生活環境や社会が人を利己的にしてしまっているんだと。だから元に戻せばいいんですよ。parkERsはそのための漢方をお渡ししてるんです。

「民意と権力」って本来は対立軸ではないはずなんで、元に戻したいんです。

 

— parkERsという存在がますます好きになりました。今の社会に必要な存在です。

僕がparkERsの事業を通じて一番達成したいのは、「人を人らしく調律すること」なんですけど、それは「人を自然と同調させる」ってことと同義に捉えれられると思っています。

そのきっかけになるのは、季節の移ろいに気づくことだと思うんです。自然の小さな変化に気づくきっかけとなる植物を、そっと、手渡す。

差し出すべきは拳や銃ではなくて花じゃないだろうかって。


parkERsオリジナルプロダクト「Floating Green Low Table(フローティンググリーンローテーブル)」。 水に花を插す、その一瞬をアクリルや木の素材感で表現したテーブル。

parkERs office「Outdoor Park」エリア

 

■ 5Gと空間現実技術。もしもお花が喋れたら?

— 梅澤さんはテクノロジーもかなりお好きだし詳しいですよね。今気になっているのはどんなものですか?

VR(Virtual Reality – 仮想現実)、AR(Augmented Reality – 拡張現実)、MR(Mixed Reality – 複合現実)などの空間現実技術ですね。5Gになってがぜん可能性が広がっていますし、これまでとは違うレベルになっていくんだろうって期待しています。

2年前に乃村工藝社さんと一緒にホロレンズを使ったアプリ作りのお手伝いをしました。植物の産地や鮮度が分かったり、自然現象との関わりを視覚を通じて感じられるものです。

きっと5Gをはじめとした先端テクノロジーで、これからまた全然変わっていきますよね。

 

— その辺りのテクノロジーにより、今度どんなものが生まれてきそうだと思いますか?

その辺りはパチさんの方が詳しいんじゃないですか? まあでも僕の考えをいうと、人間の感覚の中でも聴覚はまだあまり取り組みが進んでいない分野なんじゃないかと思っていて、ながら作業もでき意識のオンオフが自分で出来る「サウンドAR」が注目エリアだと感じています。

聴覚を介したインプットで、効率をあげたりストレスをぐっと低減できたりできそうな気がしてるんです。

 

— どんなものだろう? 例えば近くに置かれた花が声をかけてきたり、会話したりとか…あ、これちょっとおもしろそう。お花がしゃべれたら、人間に何て言うと思います?

「君たち人間はちょっと考え過ぎだって!」ってきっと言ってくれると思いますよ(笑)。

 

— 突然ですが、森さんはなんて言ってると思います? (parkERs 広報担当の森さんにオンライン同席していただいていました。)

parkERs 森さん

parkERs 森さん

 

 

「頭ばっかりで考えていないで、感じろ!Feel!」

 

 

— 2人とも同じじゃないですか(笑)。

 

■ 花もIoTも名脇役になれる。社会課題解決の基盤は日常の豊かさ

— 私たちIBMは今、QoS(Quality of Space – 空間の質)を多義的に捉え、場所の価値を包括的に向上するサービスをお客さまに提供していこうというプロジェクトをスタートしています。梅澤さんからアドバイスをいただけますか?

アドバイスとはおこがましいですが、花や緑は言葉こそ喋らないけど、名脇役として人を支援してくれていますよね。さり気ないし無意識下に働きかけるているので、それに気づいていない人もいますが。IoTやAIも同様に、さりげなく人を支援する名脇役になれると思うんです。

それが植物と組み合わされれば、アイデアを欲しがっている人や癒しを必要としている人の足が「ついそっちに向く」ような導線を作って、人に活力を与えることができると思うんです。

 

— なるほど。「公園の心地よさ」ってたしかにそういうことですね。そのときどきの気分で、いつもの場所から公園のちょっと違う場所に足が向いたり、こないだまで咲いていなかった花に気づいてそちらへ向かったり。

そうですね。まだ無意識というところには至っていませんが、parkERsのオフィスは公園の持ついろいろな良さをそのときの気分で使い分けられる導線を取り入れています。

ここにIoTなどのテクノロジーを取り入れてより進化させ、人らしさの調律や自然との同調のあり方を探っていきたいですね。

自然な交流を生み出す「Indoor Park」、発散思考で自由な発想をかき立てる「Outdoor Park」、生み出したアイデアを収束させ集中を促す「Forest Park」の3タイプの公園にゾーニングされている。

 

— QoS向上の取り組みに、ぜひ今後もお力を貸してください。

もちろん喜んで。空間の質が上がれば人間本来の良い部分がもっと出てくると思うので、ぜひコラボレーションさせてください。

僕たちは公園づくりは街づくりにつながると思っているし、今後はそれも手がけていきたいと思っています。そうやって空間や環境の質をみんなで向上させていけば、日常はもっと豊かになると思います。そして日常の豊かさがたくさんの社会課題の解決の基礎になると思うんです。ぜひ一緒に取り組ませてください。

 

インタビュアーから一言

「無為自然」 — 老子の言葉で、自然にあるがままの状態やその生き方を示す言葉だそうで、梅澤さんが好きな言葉だそうです。この言葉のことを聞いたとき、梅澤さんが繰り返し強調していたのが「頑張らないってことじゃないんです。判断基準を自然か不自然かに置き、精一杯頑張った後に”結果は天に任せる”ってことなんです。」ということでした。

インタビューの後、この言葉のことを改めて自分なりに考えていたのですが、強い信念や成し遂げたい大きなことがある人は、おそらくこの「無為自然」の心持ちに至るんではないかという気がしました。

熱を込める。でもどれほど込めたところでいつも結果が出るわけではない。たとえその場で期待通りにいかなくても、気力を削がれず信じるものに沿って歩み続ける — なるほど梅澤さんにピッタリです。

(取材日 2020年5月12日)

 

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