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ESG事例 – グロースポイント社 | ネットゼロへの前進をIBM Enviziで

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グロースポイント・プロパティーズ・オーストラリアについて

グロースポイント・プロパティーズ・オーストラリアは、オーストラリア全土の高品質の工業用およびオフィス用不動産に投資している、不動産投資信託です。

2009年に設立されたグロースポイント社は、オーストラリア証券取引所(ASX)に上場しており、同証券取引所に上場される銘柄のうち時価総額上位200銘柄で構成されるS&P/ASX200の一員です。


 

<もくじ>

  1. ESGデータの「3層構造チャレンジ」
  2.  単一プラットフォームにESGデータを統合し、チャレンジを克服
  3.  煩雑な手作業から解放。ワークロードを半分に
  4.  変化の激しいESG開示・報告の未来にもしっかり対応

「当社の主要サステナビリティ目標の1つは、2025年までのスコープ1とスコープ2でのフットプリント全体でのネットゼロ達成です。」

そう語るカトリーナ・イティン氏は、オーストラリア有数の不動産投資信託「グロースポイント・プロパティーズ・オーストラリア」社のサステナビリティ・アドバイザーです。

「毎年4月から8月にかけては、業務のほとんどを、サステナビリティ開示と報告書の作成に没頭して過ごしています。

情報公開の義務に加えて、自主的に報告しなければならないものも毎年たくさんあるのです。たとえば、GRESB調査への参加や年次サステナビリティ・レポートの発行などです。さらに、小規模な情報公開も行っていますから。」

 

オーストラリア証券取引所(ASX)に上場しているグロースポイント社にとって、報告書やデータの適切な取りまとめには重要な意味があるとカトリーナ氏は言います。

「グロースポイントは、サステナビリティ・レポートやデータのすべてが検証可能であることを保証する責務を負っています。ですから、当社が持続可能な方法で事業を行っていることを、ESGデータの透明性確保を通じて株主、従業員、テナントに確信してもらうことは本当に重要なことです。

当社にとって、しっかりとしたESGデータで情報開示をサポートすることは絶対条件です。これは、私たちサステナビリティ担当者にとって、より大きな社会的チャレンジの一部なのです。」

 

データの透明性確保と適切なサステナビリティ報告書の作成が重要課題なのは、グロースポイント社に限りません。あらゆる企業のサステナビリティ・チームにとって、スピードと効率を犠牲にすることなく、透明性の高い正確なサステナビリティ開示を行うことは大きなチャレンジなのです。

その一番の理由は、従来の方法では、環境、社会、ガバナンス(ESG)データの取得と取りまとめは多くの時間を必要とするからです。

 

カトリーナ氏は、この困難を「3層構造チャレンジ」と呼び、こう説明しています。

「チャレンジ第1層は、さまざまな事業の異なる分野から出てくるESGデータをどのように収集し、どのように1つのソースにまとめるかということです。

チャレンジ第2層は、データの一貫性、完全性、正確性を確保し、戦略的意思決定に活用できるようにすること。

そしてチャレンジ第3層は、同じESGデータを元に、報告すべきさまざまな種類の開示や調査が存在していること。形式、期間、測定基準など、それぞれの開示や調査に合わせてデータ処理をし、間違いなく正しい開示や表示を行える信頼できる方法が必要なのです。」

 

この3層構造チャレンジに立ち向かうために、グロースポイント社がEnviziソフトウェア製品の使用をスタートしたのは2017年。

それ以来、グロースポイント社が「サステナビリティー・プログラムの追跡モジュール」「施設評価レポートと指標ソフト・モジュール」「メーター分析/モニタリング・モジュール」など、IBM Envizi ESG Suiteの複数モジュールを使用しており、ESGデータの取得、報告、分析と、サステナビリティの目標設定や進捗トラッキングにおいて、大きな違いを生み出しているとカトリーナ氏は語っています。

 

そして2022年。グロースポイント社は新たなサステナビリティ・フレームワークを発表しました。

このフレームワークは、環境、経済、人材、ガバナンスの4テーマにまたがり、ビジネスにとって重要な11の重点分野が、20の測定可能なターゲットとして設置されています。

以下のいくつかの環境目標を見れば、IBM Enviziが同社の取り組みに欠かせないものとなっており、今後さらにその役割を拡げていくことは間違い無いでしょう。

 

  • 2025年7月までにオフィス資産と企業活動でのネットゼロ達成
  • グロースポイント社所有オフィス資産へのNABERSエネルギー評価における平均5つ星の維持
  • スコープ3の温室効果ガス(GHG)排出の関連ソースの全開示
  • グロースポイント社所有オフィス資産における2025年までの廃棄物平均35%の埋立地からの転換

「私たちは、約60の物件のESGデータを取得・管理する必要があります。これを手作業で行うのは非常に困難で、ミスを防ぐのは簡単なことではありません。

しかしIBM Enviziは、さまざまなソースからのデータ取得を合理化し、すべてのESGデータを単一プラットフォームに統合してくれます」。

 

単一プラットフォームでのESGデータ管理は大変重要なものの、サステナビリティ目標の達成にはそれだけでは不十分です。

カトリーナ氏とチームは、データ品質にも責任を持たなければなりません。サステナビリティの開示とレポートの基礎となるデータが完全かつ正確で、社内レビューだけではなく、第三者機関の審査にも耐えうるものでなければならないのです。

 

カトリーナ氏とチームは、IBM Enviziの力を借りて、この課題も攻略しました。

「IBM Enviziのデータ欠落や異常発見の機能が課題解決に非常に役立っています。

たとえば、請求書の欠落や特定期間の消費量やコストデータが取得できないということが起きてしまったときも、より正確なレポーティングを実現するEnviziのデータ発生機能が、それらのギャップを埋めるのに役立ちます。

あらゆるデータ形式、期間、測定基準でデータを素早く編集・分析できるので、要件の異なる複数のESG開示フレームワークに対応するのも非常に簡単になりました。」

ESGデータの取得と管理が自動化されたことで、現在、サステナビリティの専門家3名から成るグロースポイント社のサステナビリティ・チームは、時間とリソースを大幅に節約できるようになりました。

カトリーナ氏は言います。「昨年(2022年)は、1人で開示準備を行うことができました。IBM Enviziがなかったら、開示準備には倍の時間がかかっていたことでしょう。

効率は抜群です。たとえばGRESB調査。以前はGRESBのスプレッドシートへのデータ入力にかなりの時間がかかっていました。それが今では、GRESBレポート作成APIのおかげで半分の時間で完了するようになりました。

EnviziはGRESBの公式データ・パートナーなので、パフォーマンス指標をAPI経由で直接GRESBのプラットフォームに送信できるのです」。

 

すべてのESGデータが合理化され、構造化され、監査対応できるようになったことで、チームは煩雑な手作業から解放され、その時間をより高付加価値で戦略的なデータ主導の意思決定に充てることができるようになりました。

そしてこのデータ主導の意思決定に最も有効なのが、パフォーマンス・ダッシュボード(IBM Enviziのインタラクティブなデータ可視化機能)ツールだと、例を挙げてカトリーナ氏は説明します。

「Enviziの直感的に使えるダッシュボードなら、ほんの数分で、あらゆるビル資産パフォーマンスに関する洞察を得ることができるので、チームとデータに基づいたディスカッションを行えるのです。

たとえば、太陽光発電プログラムはネットゼロ達成に大きな役割を担いますが、将来のエネルギー価格高騰に対する耐性向上にはまずどの資産に重点を置き展開していくべきか。

そうした検討にも、複数の観点からの光熱費の需要と消費量を分析できるので、議論や理解を深めるのに大変役立つのです」。

 

グロースポイント社は着実にネットゼロへの目標へと向かっており、IBM Enviziは、基本的なサステナビリティ・パフォーマンスはもちろん、変化するステークホルダーの要求に応えるべくスコープ3排出量の積極的な開示に関しても同社を支援しています。

 

ところで、スコープ3への注目が高まり続けている理由はなぜなのでしょう——。カトリーナ氏はこう説明します。

「スコープ3に対する投資家の関心は非常に高いのです。そして、総排出量に占める割合が非常に大きいのも特徴です。

スコープ3は15のカテゴリーに分かれており、関連排出源の特定は出張や廃棄物のデータのようにとても難しいものが多く、正確な排出量計算を行うのが非常に困難です。

私たちは、IBM Enviziがあらゆる種類のスコープ3データを扱うことができることを知りました。そこで最近、Enviziの技術チームと密接に協力しながら、過去のスコープ3データをスプレッドシートからEnviziへ移行しました。

その結果、これまでスプレッドシート上で数カ月かかっていた分析が、わずか数週間で済むようになったのです」。

 

ネットゼロ目標へ順調な足取りで進むグロースポイント社ですが、エネルギー効率から廃棄物や排出物の削減まで、サステナブルな企業としてカバーすべき領域はまだたくさんあります。

カトリーナ氏は言います。「持続可能なビジネスであること、つまり、可能な限り効率的で環境に優しいオフィスや不動産として環境への影響を減らすことは、株主、テナント、従業員により多くの価値を提供することにつながります。

多くの調査が示しているように、環境面で高い実績を示すグリーンビルディングは、評価額も高く空室も少ないのです。グロースポイントの持続可能な建物や環境配慮型建物への投資は、当社の戦略と結びついているのです」。

 

より持続可能なビジネスであることは、グロースポイント社にとってより長期的な繁栄をもたらすものに他なりません。

そして新しい規制やフレームワークの統合など、変化の激しいESG開示・報告の動向に対して、サステナビリティ・マネージャーは常に備えている必要があります。

 

国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)のフレームワークの動向など、今後予定されている変更はグロースポイント社のサステナビリティ・パフォーマンス報告に、どのような影響を与える可能性があるのでしょうか。そして同社は現在、サステナビリティにおいてどのようなポジションにあるのでしょうか——。最後に、カトリーナ氏に聞いてみました。

「IBM Enviziの採用により、グロースポイントはESG開示・報告における新規制やフレームワーク変更という未来もしっかり備えることができています。

そして脱炭素化戦略においても、私たちはトップランナーとして先頭を走っていると言えるでしょう」。

 


当記事は『Robust ESG insights fuel ambitious sustainability goals』を日本の読者向けに編集したものです。

 

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