IBM Sustainability Software
モビリティ分野におけるIBMの取組み | 在りたい未来を支援するITとは? シリーズ4 | 自動車とモビリティと都市の未来
2021年07月09日
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2020年10月に開催された「一般社団法人経営研究所(以下、経営研究所)」主催の「自動車とモビリティの未来を考える研究会」から、招待企業として招かれた日本IBMの「IoT/AI 技術の活用。つながる車とモビリティ・サービスの未来」と題された講演と対話の様子を紹介している「在りたい未来を支援するITとは? シリーズ4」。
第3弾は「モビリティ分野におけるIBMの取組み」です(第2弾はこちら)。
4名の登壇者
村澤 賢一 (コグニティブ・アプリケーション事業部 事業部長)
新しい社会や人間の在り方にどうテクノロジーを活かし、社会基盤をアップデートしていくべきかを追求。2011年から日本IBMの各種事業組織を担当、現在に至る。
坂本 佳史 (CTO of Edge Computing in Japan)
テクノロジーがいかに人を幸せにできるかを研究している日本IBMのエッジコンピューティングCTO。Distinguished Engineer(IBMにおけるエンジニア最高職)。
磯部 博史 (コグニティブ・アプリケーション事業部 Master Shaper)
2008年に発表されたIBM Smarter Planet構想以降、都市の効率化や製造、モビリティーなどを中心に社会実装に取り組んでいる技術者。
渡邉 毅(ソフトウェア&システム開発研究所 IoTソリューション開発 部長)
入社以来、主に開発部門にてソフトウェア製品開発に従事。近年はつながるクルマから見えてくる新しいモビリティ&ライフスタイルを支えるソリューションの開発に取り組む。
■ 2030年における自動車業界の将来展望
IBMは数年前、自動車業界の生産者と消費者向けの調査を実施し、自動車業界の進化を予測するレポート「2030年 自動車業界の将来展望」を発行しました。
→ ブランドよりセキュリティーが重視される2030年の自動車業界
レポートでは、自動運転、電気自動車、デジタル技術の進歩が重要なポイントになることが示されており、デジタル技術から得られた洞察が個別最適化されたサービスの提供へとつながり、個人の生活にさまざまな側面から影響を与えることが示されています。
多様なモビリティ・サービスが存在する時代では、消費者にとって重要になるのは利便性でありコストです。
世界で1万人以上を対象に行われたこの調査では、消費者のおよそ半数が「どのブランドの車を使用するかは重要ではない」と回答しています。また、サービスが優れたものであり、それを顧客体験として提供してくれることが重要である、つまり「デジタル体験価値の方がブランドよりも優先される」と答えているのです。
今後は、運転自体の楽しさに加えて、各種情報へのアクセスなど優れたデジタル空間や体験の提供が、今以上に一層重要となるでしょう。また一方で、そもそもクルマに運転自体の楽しさを求めないというドライバーも増えていくと思われます。
AIやクラウドが活用され、ここ数年言われ続けている「C: コネクテッド」「A:自動運転」「S: シェアリング&サービス」「E: 電動化」から成るCASE革命の実現も着々と近づいています。そこでは5Gに後押しされた他業種からの新規プレイヤーが参入し、消費者は一層の新しい顧客体験の提供や、安全・安心・高度なサービス提供への期待を高めていくでしょう。
こうした環境変化に直面している自動車業界に求められるのは、顧客の要望への臨機応変な対応です。
その対応に必要不可欠なのが、デジタルデータを活用したアプリケーション機能の拡張性であり、品質を確実に維持しつつデータが示す変化にすばやく適切に対応できるようにするための、開発や運用方法の進化です。
ここからは、IBMが支援・提供しているデジタル活用支援ソリューションのいくつかと、自動車のサイバーセキュリティにおいて高い注目を集めているWP29についてご紹介します。
■ CVI(IBM IoT Connected Vehicle Insights)
自動車のデジタル変革をクラウド側で支援するソリューションIBM IoT Connected Vehicle Insights(CVI)は、圧倒的なリアルタイム解析とスケーラビリティを備えるビッグデータ解析プラットフォームです。
車両情報、道路状況、および天候情報をクラウドに収集し、それを活用して自動運転やテレマティクス・サービスなど多様なアプリケーションを提供します。大量の車を同時サポートするスケーラビリティを有し、クルマに関する情報をインサイトへと変換するAIによる分析、予測基盤を提供しています。
距離的・時間的な「まだ見えていない未来」を見える化することで、ドライバーに安全な運転を、そして事業者に新しいビジネス開発を提供するのがCVIです。
自動運転、ドライバーが検知・処理できない危険を察知し対応するADAS補助(先進運転支援システム)、クラウドを活用してドライバーにリアルタイム通知や解析をおこなうテレマティクス・サービス、刻々と変化する状況を動的情報として扱い最適経路指示や所要時間の予測を提供するCognitive Routing、そして包括的な交通手段最適化を提供するMaaSや、二輪や自転車・歩行者などあらゆる「動くモノ」への適用などが、CVIの最近のユースケース(活用方法)です。
→ 動画で紹介 | 広告・旅行、ヘルスケア、運輸、保険、MaaS分野に! 移動体データ活用ビジネス実現ソリューション
CVIには「1. ダイナミックマップ」「2. エージェントによるリアルタイム処理」という、2つの大きな特徴があります。
- ダイナミックマップ | 道路ネットワークに天候やイベントを重ね合わせ、情報を透過的に取得できる仕組み
- エージェントによるリアルタイム通知 | 個別車両の状況に合わせて、ダイナミックマップから得られる情報をリアルタイムにドライバーに通知する仕組み
静的な地図データの上に走行データ、動的なイベント、環境情報を重ね合わせるダイナミックマップには、顧客情報や外部データソースなどのカスタム情報を追加することも可能です。
また、車両属性や位置情報などを判定条件とするルールを定義・実行することで、車両や運転に影響するさまざまなタイプの情報(イベント・POI・気象など)をリアルタイム通知に含めることができます。
このように、圧倒的なリアルタイム解析とスケーラビリティ、幅広いアプリケーションとユースケースへの対応、AIの解析プラットフォーム、さまざまなデバイスに対応したデータ統合インターフェイスなど、CVIは多数の優位性と、国内・海外での豊富な活用実績とを持つソリューションです。
■ IEAP
IBM Embedded Automotive Platform(IEAP)とは、Java技術をベースにしたIoTにおけるエッジデバイス・プラットフォーム向けのミドルウェアです。
主な機能は、デバイス(車載機)固有機能、アプリ配信・実行、ライフサイクル管理、アプリ開発支援で、オートモーティブ分野におけるコネクテッド・カー向けのソリューションとして構成されています。なお、これらのコンポーネントの多くが、他業種・他分野向けに組み替え可能です。
このIEAPと先述のCVIを活用して、ルール定義に基づいてクラウド側へのデータ送信をエッジ側(車載側)で制御することにより、つながるクルマのエッジとクラウド連携ソリューションのプロトタイプを比較的容易に提供することができます。
エッジ側でのデータコントロール、送信、分析モデルの変更は、将来のコネクテッド・カーでは重要になるであろうことから、エッジとクラウド双方のソリューション連携は必要不可欠となるでしょう。
規制やプライバシー保護のために車両の位置や時間帯によってクラウドへの送信を制御することや、クラウドへのデータ送信削減(通信費削減)、エッジ側のみでのオフラインデータ処理など、さまざまなユースケースが考えられます。
■ CARED
IBMでは、AIや数理科学を利用して実社会の課題を解決するための研究に取り組んでいます。
その一つが、自動車事故を減少することを目指した事故予測AI技術「CARED(Car-driver Analysis & Reasoning on Edge Devices)」です。
CAREDは瞬間の動きではなく、一定期間の車の動きを総合的に判断し、運転者の挙動を推定することで事故リスクを算定することができる技術であり、「一般ドライバーモデル」と「個別ドライバーモデル」の2つを学習し、「統合ドライバーモデル」を作成することで、車種や個人の運転傾向に依存しない事故リスクが推定できるようになるという論理をベースとしています。
CAREDは、IBM独自の先端AI技術を用いた自動車の事故予測モデルであり、次の3つのモデルを利用しています。
- 複数のセンサー間の関係を基に異常を検知する独自の異常検知モデル
- 直近だけでなく数分前のドライバーの状態も考慮可能な独自の時系列モデル
- 汎用AIでは扱うことが難しい運転傾向推定に特化した独自アルゴリズム
運転動作を総合的に考慮することによって高精度な分類や予測を可能とするCAREDは、エッジ側でもクラウド側でも動くため、汎用性が高いのも特長です。
そのため、CVIで収集したデータを使った実験などを手早くエッジ側で行うことができるので、効果実証などの面で大きな優位性を有しています。
■ 自動車基準調和世界フォーラム(WP29)法規対応
CASE革命が進み、OTA(Over-The-Air)と呼ばれる無線データ通信により外部通信と車内ネットワークがつながっている状態のクルマにとっては、サイバーセキュリティ対策や、ソフトウェアアップデート規格の在り方が重要です。
こうしたCASE時代の安全性の担保を目的として、国連自動車基準調和世界フォーラム(WP29)では、車両全体のライフサイクルにわたるサイバー・セキュリティの保証と、ソフトウェア・アップデートの安全性を保証する法規基準の策定・検討を進めています。
日本は英国と共同で専門家会議の議長を務め、世界の自動車業界団体、関連会社とともに法規整備を進めていますが、WP29での決定はそのまま同等の国内法規整備へとつながっていくため、日本国内の完成車メーカーやサプライヤーは2つの法規に対応しなければならなくなります。
現時点では、2022年7月以降の新型車両は、サイバー・セキュリティとソフトウェア・アップデート法規対応が必須となる見通しであり、残された期間は刻一刻と短くなっています。
IBMはWP29への対応を支援するELM(Engineering Lifecycle Management. 旧Rationalソフトウェア)デモアセットを用意しており、日本の自動車業界・関連企業にご提供しています。
次回は、 AIとエッジが変革する移動体験と都市空間についてご紹介します。
在りたい未来を支援するITとは? シリーズ4
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- 6つの変革ドライバー | 在りたい未来を支援するITとは? シリーズ4 | 自動車とモビリティと都市の未来
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