IBM Sustainability Software
「産業界のデジタルツイン技術の現状と今後の展望」セミナーレポート
2021年04月01日
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先日開催された日本原子力研究開発機構主催のセミナーで、「産業界のデジタルツイン技術の現状と今後の展望」と題された2つの招待講演が行われた。
当記事ではその中の1つ、「AI及びエッジコンピューティングで実現する画像認識及びデジタルツイン・ソリューション及び海外事例の紹介」の一部を紹介する。
■ IT/デジタル技術の観点から見たこれからの社会
まず最初に登壇したのは、Cognitive Applications事業部でMaster Shaperを務める磯部 博史だ。
磯部は初めに、このセッションを理解する上で重要なキーワードとなるいくつかの言葉、そしてコンセプトを説明し、参加者の意識・認識合わせを行った。以下、その中からいくつかを紹介しよう。
・ Society 5.0(内閣府の『第5期科学技術基本計画』による定義)
サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会。
・ 都市OS
Society 5.0を具体化/実装したスマートシティを支える都市オペレーティングシステムであり、デジタル変革全体を底支えするもの。IBMはSociety 5.0と共に「人間中心」への注力がとりわけ重要であると認識しており、社内外にその考え方を発信している。
参考: インテリジェント・アシスタントとは(対談前編) | 在りたい未来を支援するITとは? シリーズ3
・ デジタルツイン
現実空間の情報をリアルタイムで収集し、仮想空間上にそれらのデジタル情報(モデル)を用いてシミュレーションを実施し、現実空間にフィードバックすること。
・ コンピューティングリソース再配置
コンピュータのデータや情報処理能力は、オンプレミスでの自社内やデータセンター内での利用からハイブリッド・クラウドへと変化してきたが、エッジコンピューティングの登場に現在より一層の「適材適所」が進んでいる。
■ AIの進化と5Gがもたらすビジネス価値
先進テクノロジーの進化を考える上で忘れてはならないのがAIだ。
だがAIも、第三次AIブームがスタートしてから10数年が経過し、その立役者の1つであるIBM Watsonを見てもわかるように、その機能や適用範囲は大きく進化を続けており現在もその発展の最中にある。
以下、磯部が用いたチャートを見れば、その進化の様子と現状、そして適応分野の拡がりが分かるだろう。
・ Narrow AI(ナローAI): ノイズの除去、シグナルの発見 – シングルタスク、シングルドメイン、特定業務における正確性とスピードの向上。
・ Broad AI(ブロードAI): 根拠に基き首尾一貫した主張を組み立てる能力の磨き上げ – マルチタスク、マルチドメイン、マルチモーダル、エッジAI、結果に対する説明可能性を持つAI。
・ General AI(ジェネラルAI): クロスドメインでの学習と理由付け、広範な自律性 – 幅広い領域において多くのタスクを学び、学びを統合していく自律性を持った汎用AI。
そしてAIと足並みを揃えるように進化を続けているのが、ネットワーク技術とエッジ・コンピューティングだと磯部は言う。
ネットワーク技術でも特に注目されている5G(第5世代移動通信システム)は、そのメリットが「高速・大容量」「超低遅延」「多数同時接続」と言うキーワードで語られることが多いが、同じく重要なのがその提供形態の豊富さだ。
2025年には3000億円規模にも達すると予想される市場規模の「ローカル5G」は、自治体や企業自らが主体となって独自のネットワークを構築・導入できることから大きな注目を集めており、とりわけ製造業や物流、エネルギーなどのインフラ分野においては、その膨大なメリットを十分に活用できるかどうかが組織の成功や企業の未来に大きく関わってくるだろう。
先日、日経xTechに掲載された「富士通と日本IBMがローカル5Gで協業」という記事が各所で話題となっているのも、そうした背景があってのことであろう。
■ エッジコンピューティングが製造業にもたらすメリット
磯部は、エッジコンピューティングのメリットを以下3つにまとめて説明した。
・ より素早い洞察とアクション
爆発的に増加し続けるデータの発生元近くでコンピューティング処理を行うことで、動作アクションを起こすまでの時間を短縮・改善。高度な自動化やロボティクスを実現。
・ データのセキュリティーと管理の改善
クラウドなどの「外部」に送るデータ量を最小化することで、処理の遅延とデータの脆弱性を低減。厳重なセキュリティーが求められるデータも安全に分析。
・ 継続的な運用
ネットワークトラブルなどで接続が切断された状況でも中断することなく、完全な処理機能や自立的な計算を実行。サプライ・チェーンの断絶リスク対策にも。
なお、IBMは製造業に関する深い知見と洞察を持っており、AIとIoT、そしてエッジコンピューティングによりさらに強みに磨きをかけた製造現場向けのエッジソリューションを揃えている。
以下はその一部だ。
- Maximo Monitor: 設備監視
- Maximo Visual Inspection: 画像認識AI管理
- Maximo Predict : 設備の性能予測
- Maximo Safety: 労働現場の安全管理
これらのソリューションに関しては、下記の記事でその特徴が確認できる。
「製造現場のデジタル化を実現するAI+IoTソリューション最前線」レポート(EPFCシンポジウム2021冬より)
■ デジタルツイン事例
磯部は最後に、産業や生活の場におけるデジタルツインの事例として以下の4つを紹介した。ここではそれぞれの詳細を確認できる記事と併せて簡単に紹介する。
・ 広大な港湾をデジタルツインで管理 – オランダのロッテルダム港
ロッテルダム港 を「世界で最もスマートな 港」へ – Watson IoTとクラウドにより港をデジタル ツインで再現
・ 建機の稼働を可視化。不具合を予知 – Sandvik様: 掘削現場をデジタル・ツインで管理
[事例: 掘削機大手サンドビック社] Watson IoTを用いて鉱山産業に第四次産業革命を
・ 新たな移動体験 – AIスーツケースによる支援の可能性: 初めての場所でも、視覚障害者が人とのディスタンスを保ったまま独力で社会的行動が取れるように
・ 廃棄ロス削減 -SugarCreek様: ノースキャロライナのクラフト・ビール醸造所のインテリジェント化
クラフトビールがIoTとAIに出会ったら(シュガークリークブリューイング事例)
ここからは、同じくCognitive Applications事業部の田中保夫へとスピーカーをバトンタッチし、産業界でどのように画像認識技術が用いられているか、そしてコーディング不要の画像AI構築・展開ソリューション「IBM Maximo Visual Inspection」がどのようなアドバンテージを企業にもたらしているかが紹介された。
■ 画像認識AIが解決する問題と事例
田中はまず、現在製造業をはじめとした現場で用いられている画像AIが、どのような問題への対応策として用いられているか、大きく3つに分けられると説明した。
- 省人化・省力化 | 新型コロナウイルスによる人的移動・接触の制限
- 作業平準化 | さまざまな雇用体系
- 技術継承 | ベテラン・熟練工の退職
そして実際に用いられている作業として以下を挙げた:
検品・不良個所検出 | リモート検査と資産管理 | ドローンビデオ分析 | 商品棚管理と盗難検出 | 作業手順チェック・取付不良検出
なお、以下の記事では、「業務で使う」ための画像認識AIであるIBM Maximo Visual Inspectionの特徴が4分強の動画で紹介されている。
画像AIの導入を検討している方、とりわけ社内にデータスペシャリストやAI専門家を抱えていない企業の方に強くお勧めしたい。
動画で紹介 | プログラミング一切不要! 現場主導で画像認識AIの構築〜導入を
セッションではこの後、一般的な画像AI開発ステップの紹介や、iOSデバイスを用いて簡単に実行できるAIモデル作成方法、AIの再学習方法などがデモを含めて紹介された(当記事では割愛させていただく)。
最後に、「Toyota Canada」「IBM」「某製薬会社」の3つの事例の紹介画像をご覧いただき、この記事を終了する。
問い合わせ情報
お問い合わせやご相談は、Cognitive Applications事業 cajp@jp.ibm.com にご連絡ください。
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TEXT: 八木橋パチ
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