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アイリス株式会社 沖山翔 | 共創パートナーインタビュー#1
2022年09月01日
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「親ガチャという、とても嫌な言葉だけれども『生まれた家が運命を大きく左右してしまう』という世界観を表している言葉がありますよね。同じことが医療にも起こっています。僕はそれをなくして、過去のものとしたいんです」。
「…自分自身をなんと呼ぶか、ですか?『医療者』です」。
— こう語る、アイリス株式会社のファウンダーであり代表取締役の沖山 翔氏に話を伺った。
沖山 翔(おきやま しょう) | 2010年東京大学医学部卒業。 日赤医療センター(救命救急)での勤務を経て、ドクターヘリ添乗医、災害派遣医療チームDMAT隊員、株式会社メドレー執行役員として勤務。 2017年 AI技術により診断支援を行うアイリスを創業、代表取締役・最高経営責任者。
IBMには、クライアント・エンジニアリング(以下「CE」)という、お客様との価値共創(co-creation)を推進するための組織がある。
この組織のミッションの1つは力強くスピーディーに共創を進めること。そして別のミッションが、生み出された価値を社会に幅広く届くようデザインすることだ。
前者同様、後者もIBMだけでできることはたかが知れており、同じ景色を共に描ける共創パートナーを常に広範囲に探している。
話を戻そう。
IBMは、アイリス株式会社と共創パートナーシップを結び、新たな取り組みをスタートしている。その中身については今後の取り組み紹介や発表をお待ちいただきたいのだが、まずはアイリス代表の沖山氏が見ている未来をお伝えする。なお、私たちと同じ景色に身を置きたいと思われる方がいらっしゃれば、ぜひご連絡いただきたい。
日本人として、アジア人として、地球人として
「ずいぶんと前に世界陸上大会をテレビで見ていて、中国人短距離ランナーが200メートル走で優勝したんです。そのとき『すごいぞ! やったー!』と心から喜んでいる自分がいました。
自分が日本という一国だけにアイデンティティを感じているのではなく、より広くアジア人として自分を捉えていることを理解したのはそのときです」。
沖山氏はどんな幼少期を過ごしたのだろうか。日本国外での経験を聞いてみた。
「小中学校時代は、親の仕事の関係でアメリカのフィラデルフィアと、イタリアのローマで暮らしていた時期がありました。両方とも世界史で大きく取り上げられる場所ですね。
直接的にそれが関係しているわけではないと思いますが、レイチェル・カーソンの『沈黙の春』やバックミンスター・フラーの『宇宙船地球号操縦マニュアル』など、大きく世界を『一つの地球』と捉える本を好んで読んでいた時期もあってか、自分を『地球市民』としても捉えているところは常にあります」。
この言葉を聞くと、沖山氏が、アイリスのミッションとして以下の言葉を挙げているのも当然とも思える。
みんなで共創できる、ひらかれた医療をつくる。
私たちが目指すもの。それは、医療をみんなでつくれる未来。
医師も、患者も、健康な人も。
すべての人が、所属や立場、国境を超え、医療を発展させる可能性を秘めている。
医師としての直接の支援から、より裾野を広げた医療者としての支援へ
沖山氏にもう少し過去を振り返ってもらおう。
「日本赤十字社で救急医としてドクターヘリで飛び回ったり、人口約5万人の石垣島や約500人の波照間島で診療所の離島医として勤務したり、また、1年間でしたが『フリーランスドクター」として日本全国の医療現場を回ったりもして、臨床医としていろんな経験を積むことができました。
それらを通じて一番感じていたのは、格差が不幸を生み出しているという実態でした。どこでどんな病院や医師にかかれるかで、命を失わずに済むかや生活の質(QOL)を維持できるかが大きく変わってしまう。
それは患者さんご本人だけではなく、ご家族や縁者の方などの幸福度を大きく損なってしまうことです。」
「医師になる前から、僕は一生医師を続けるんだと思っていました。」そう話す沖山氏を変えたのは、臨床医としてのさまざまな経験だった。医師としての直接の支援から、より裾野を広げた医療者としての支援へ。
「医療は世界から悲しみをなくすことはできません。でも、どこにいても高いレベルの診察や医学技術が提供されるようになれば、後悔はなくせるかもしれません。少なくとも、後悔を減らすことはできるはずだと思うのです。
『医療で世の中の幸せを最大化したい』と考えた結果が、医師としてではなくアイリスの創業へとつながっています。社名のアイリスは、『Art is long, life is short.(医術の道は長く、人生はかくも短い。)』という医学の祖、ヒポクラテスの格言の頭文字から付けた名前です」。
医師法の第1条には、国民の健康な生活に寄与することが医師の務めだと書かれている。沖山氏はテクノロジーを活用した事業を通じて、忠実に医師の務めに向き合っているのだ。
アイリスが医療を「ひらける」理由
2022年6月の終わりに、日本経済新聞に『「AI診察」全身に拡大へ | アイリス、十数秒でインフル判定/ウイインク、白内障症状検査アプリ』という記事が掲載された。
沖山氏が率いるアイリスが、専用カメラで撮影したのどの血管画像からAIを用いてインフルエンザの診断を支援する医療機器「nodoca(ノドカ)」の薬事承認を取得し、今後多くの病院や診療所に展開される予定であることが紹介されている。
現行の一般的な検査法では判定所要に15分ほどかかるものが、nodocaではわずか10数秒。精度に差はないという。
だが、ビジネス界隈の多くの人が驚いたのは、そのスピードではなく、厳しいことが知られている薬機法(2014年に薬事法から名称変更)を通過し、薬事承認を取ったことだ。
医療機器大手以外のスタートアップが薬事承認を取得することは非常にまれで、nodocaは日本で初めて新医療機器として承認を取得したAI搭載医療機器となった。
参考: アイリス株式会社が、AIを搭載した日本初の「新医療機器」となるnodoca®の製造販売承認を取得
「僕たちアイリスは、創業時点で医療をひらいていくには何が必要か分かっていました。組織をいかに作り上げるかがポイントです。
医療のデジタル化やAI化を進めるには医師や病院のことをよく分かっている人間だけでは足りません。さまざまな規制という参入障壁を乗り越えるのには、社内にAIやハードウェアのエンジニア、行政とのやり取りや薬機法のスペシャリストが必要なのです。
アドバイザーではダメです。たいていは情報共有不足あるいはスピード不足でうまくいきません。そうではなく、常にチームの一員として社員として内部から加わっていることが重要なんです。アイリスにはすべてのメンバーが揃っています」。
アイリスとIBMの共創パートナーシップの未来
AI医療機器nodocaの完成には、80以上の病院と共に行った臨床研究が大いに役立っていると沖山氏は言う。診断モデルの元となる画像は、多くの患者が研究のための写真提供に応じてくれたからだ。
「『提供いただく写真が、将来の医療機器開発を通じて医師不足に悩む僻地や離島などの人びとの健康やQOLの維持に役立ちます』と伝えると、ほとんどの患者様が喜んで写真提供にご同意いただけるんです。
誰だって、自分が少しでも医療の進歩に貢献できて、解決策の一部となれるのはとても嬉しいことですよね。医療現場で、患者様には臨床例としてこれまでもたくさん貢献いただいているんです。それなのに、それを実感できる経験をほぼ提供できていないのは問題ですよね。こうした点も変えていきたいですね」。
医療は競争ではなく、全人類がシェアする共有資産になっていくのではないか。沖山氏はそうも語る。そしてその実現のためには、アイリスが持つ独自のノウハウも、占有することなく広めていきたいと言う。
「医療って、誰かのものじゃなくて、みんなのものであるべきだと思うんです。IBMさんは言わずと知れたテクノロジーで世界をリードする企業であり、さまざまな業界に強いパイプを持ち、日本を代表する大企業と深い信頼関係で結ばれています。
そのIBMさんとご一緒することで、より多くの先進的医療機器の社会実装を進められるのではないかと期待しています。そうそう、実は弊社のCTOの福田もIBM出身なんですよ。」
田村 孝より一言
新たな価値創出と社会実装をスピーディーに進め、社会の枠組みをアップデートしていくためには、これまで以上にお客様との共創やパートナーシップが必要です。IBMは今、「IBMとお客様」という1対1の関係性で創る価値に留まらず、「(複数の)お客様と(複数の)共創パートナーとIBM」という新たな関係性での取り組みにチャレンジしています。
アイリス様には、その熱量と新たな社会の枠組みを作れる期待感が強くあり、色々なお客様との価値共創を進めていきたいと考えています。ご興味をお持ちの方は下記お問い合わせよりご連絡いただきますようお願いします。
Mindy Fangより一言
Society5.0は「人中心の社会」であり、「ヘルスケア」は先端技術の活用による変化とメリットが最も多く存在する領域のひとつです。
私自身、学術とビジネスの両面から長年医療科学に深く携わってきた者として、これからのヘルスケアが医療界だけにとどまることなく、産業界の皆様にこれまで蓄積してきたノウハウを活かして積極的にヘルスケア領域に関与いただき、新たなエコシステムの構築を進めたり、その一員としてご活躍をしていただきたいと考えています。そのためのご支援をさせていただきますので、どうぞお気軽にお声かけください。
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