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データ分析者達の教訓 #08- データ分析にミスは付き物。大切なのは反省と次回への対策

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皆さんこんにちは。IBM Data&AIでデータサイエンスTech Salesをしている坂本です。

このリレー連載ブログはSPSS Modelerの実際のユーザーで第一線で活躍するデータ分析者に、データ活用を進める上で忘れられない教訓をインタビュー形式で伺い、これからデータ分析に取り組む皆様に参考にしていただくことを目的にしています。

 

今回インタビューをお願いしたデータ分析者は

今回インタビューを受けてくださったのは、野村総合研究所の塩崎様です。

塩崎様はマーケティングデータ分析の業界では非常に有名かつご多忙な方ですが、「ご自身の経験を役立ててほしい」という理由からインタビューを快諾いただきました。

 

塩崎 潤一 様

株式会社野村総合研究所
未来創発センター
生活DX・データ研究室長

 

-日頃のデータ活用業務について教えてください

私は現在、野村総合研究所における全社横断の組織の中で、データサイエンスに関連した研究開発、データサイエンス人材の育成などを担当しています。その一環としてYouTube「NRIデータサイエンスラボチャンネル」を運営し、データサイエンス用語の解説や、データサイエンス業務の紹介などを発信。現在、チャンネル登録者数は8,500名を数えています。

以前は、データを活用したマーケティング関連のコンサルティング部署の責任者をしており、オリジナルデータを活用した新規事業である「インサイトシグナル」を立ち上げました。そこでは企画からデータ取得、分析、指標開発までをすべて担当しました。これまでにサービスの利用実績260社と好評をいただいています。

入社から一貫してデータを活用したマーケティング戦略立案の専門家として業務に従事しています。

 

-データ活用業務で味わった苦い経験を教えてください

マーケティングリサーチなどによる消費者データの収集・分析、戦略への反映を担当してきました。データによるアウトプットは説得力があり、多くの企業の新しい意思決定に携わることができました。それだけに小さなミスが大きな問題となってしまったことも経験してきました。

日本における自動車の需要予測では、右肩上がりの側面から転換点のタイミングを予測できずに、市場を見誤ったことがありました。過去のトレンドで予測できない時の限界を感じました。

アンケート調査では、オリジナルの指標を作成することも多かったのですが、数値の変換を間違えて、まったく逆の結果をアウトプットしたこともありました。経営者に報告する直前にミスに気が付き、直前でキャンセルをしてもらいました。

どちらの事例も自分の感覚だけを信じて、結果についても考察が十分ではなかったことが原因です。もう少し冷静に数値を見る目が必要だったと反省しています。

 

-その苦い経験から得られた教訓はなんでしょうか

データサイエンスのアウトプットは、言葉だったり、フレームワークによる分析結果と比べて、非常に大きなインパクトがあります。言葉であれば、ある程度、抽象的な解釈もできるのですが、数値では、ごまかしがききません。

自分の感覚に頼らず冷静に結果を分析する心構えが必要です。一方で、数値だけをみても、誤解やミスに気が付かないこともあります。鋭い数値感覚を身につけることの重要性も学びました。

また、データサイエンスの場合、ミスは付き物です。ミスをした場合には、反省をし、原因を究明して、次回以降に反映することが重要です。ミスしたことを責めるクライアントはいません。ミスしたことを次回に反映できなければ責められます。二度とミスをしないようにすることが重要なのです。前述の私がミスをしてしまったクライアントとは、その後、ミスを反省して、有用なアウトプットを出すことができたため、今でも良好な関係を築けています。

 

-これからのデータ活用領域でのチャレンジについて教えてください

マーケティング分野におけるデータサイエンスの業務を中心に担当してきました。マーケティングの歴史は、データ活用の歴史といっても過言ではありません。消費者の購買履歴や行動履歴のデータが、POSデータや、Web閲覧履歴データなどで取得できるようになり、マーケティングのあり方が大きく変わりました。

Cookieなどの規制もあり、取得できるデータに制約があるように見えますが、長い目でみれば、消費者関連のデータはさらに取得が拡大していくものとを考えられます。背景としてはセンサリング技術の進展などが考えられます。

これらのデータを活用したマーケティング戦略の重要度が増していくと考えれます。これからも、多様で大量に集まる消費者のデータを瞬時に解析して、最適なマーケティングを提案できる仕組みづくりを進めていきたいと考えています。お店に入った瞬間に、瞳の虹彩から購買データなどを入手し、身につけているものから消費価値観を予測して、最適な商品をレコメンデーションするSF映画のような世界は、すぐそこに来ていると考えています。

 

インタビューのお礼と感想

塩崎様、貴重なお話をありがとうございました。

さて皆様、いかがでしたでしょうか?

国内のデータサイエンス先駆者としてご活躍されていらっしゃる塩崎様は、アウトプットの品質はもとより、誠実な対応により新たな発想や顧客関係の深化につなげていらして、たいへん示唆に富むお話でした。

実はインタビューをいただくにあたり「失敗談をお話しいただきたい」と恐る恐る申し出たところ、笑顔で「失敗談はたくさんある」と答えてくださったのも印象的です。

この著名なベテラン・コンサルタントでも失敗から学び、クライアントとの関係性を築かれてきたくだりに勇気づけられた読者は沢山いらっしゃるのではないでしょうか。私も虹彩で顧客レコメンデーションするデータ活用の近未来を夢見ながら、失敗を恐れず(ちゃんと反省と対策をして)お客様と向き合おうと決意を新たにいたしました。

 

次回は浜銀総合研究所の高野様に「予測モデルは秀逸でも業務に実装できない場合がある」を伺います。

 

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坂本 康輔

日本アイ・ビー・エム株式会社
テクノロジー事業本部 データ・AI・オートメーション事業部
Data & AI 第一テクニカルセールス
  

 

 

 

 

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