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データ分析者達の教訓 #05- 現場の「心」を知ることがデータ民主化への突破口

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皆さんこんにちは。IBM の河田です。SPSSを含むデータサイエンス製品の技術を担当しています。

このリレー連載ブログはSPSS Modelerの実際のユーザーで第一線で活躍するデータ分析者に、データ活用を進める上で忘れられない教訓をインタビュー形式で伺い、これからデータ分析に取り組む皆様に参考にしていただくことを目的にしています。

 

今回インタビューをお願いしたデータ分析者は

今回インタビューを受けてくださったのは、三菱自動車工業でデータサイエンスグループを率いている五安城様です。

日頃、製造業を担当している私が非常によく耳にする問題点を分かりやすく解説いただいたインタビュー記事になっています。

なお五安城様にはこのブログ記事公開直後の2023年5月19日に開催されるSPSS春のオンラインユーザーイベント2023でも登壇をいただくことになっています。

お時間ある方はぜひ視聴ください。

 

五安城 貴博様   Takahiro Inagi

三菱自動車工業株式会社
グローバルIT本部 デジタルイノベーション推進部
データサイエンスグループ マネージャー

 

-日頃のデータ活用業務について教えてください

私の所属するはデジタルイノベーション推進部データサイエンスグループは3つのデータ活用業務を担っています。

1つめは社内のプロジェクトのサポートです。業務部門の課題とデータをヒアリングしてその解決を支援し伴走しています。

2つめはそういったプロジェクト支援を行うためのデータ分析基盤の構築です。これにはBIツールを使った可視化展開やプロトタイプ実装が含まれます。

最後の3つめがデータリテラシー教育です。全社のデータリテシー教育を目標にしておりますが、まずはIT本部をターゲットにスタートしました。

これらの活動を推し進めることで、全社員がデータを活用する世界を目指す「データデモクラシー(=データの民主化)」を実行していきます。

-データ活用業務で味わった苦い経験を教えてください

前職での話なのですが、データ活用やAIの提案を業務部門に提案する役割になった頃のことです。

現場のベテランエンジニアから「俺の仕事を奪う気か?」と門前払いされた苦い経験があります。

当時は、現場の業務効率化をすることが正解だと考え、データ分析を進めたのですが、

その道のプロは何年も自分で積み上げたエクセルの計算表やVBAを使って効率化を進めており、

そこに絶対の自信を持っていて、全く聞く耳を持ってくれませんでした。

 

また、別のベテランからは「自分が手作業でやった方が絶対に早い」と突っぱねられたこともあります。

手作業と比較されてしまうと、どうやってデータ活用を普及させれば良いかと、途方に暮れた事を思い出します。

 

-その苦い経験から得られた教訓はなんでしょうか

何度も足を運んで現場の「心」を知ることが唯一の突破口だと認識しました。

そもそもなぜ受け入れてもらえないのか、私自身も現場経験があったので、現場の立場を踏まえながら、繰り返し自問自答していました。

そして数理モデル・AIの結果を説明するだけではよくわからず、不信感を持つのではないかという仮説に至りました。

結局は人と人なんですよね。普段はデータを武器に仕事をしていますが。(笑)

現場のベテランの方に「心情」と「テクニカル」の2つの点から信頼を得て、メリットを実感いただく事が大切だと認識しました。

「心情」の面では、まず知らない人がいきなり現場に行っても全く信用されません。足しげく現場に通い、現場の経験や背景を理解し、一緒に課題を解決するようにしました。

現場では、一緒に汗を流して、思いを伝えてくる人には優しいです。そうして、ようやく「耳(心)」を傾けてくれるようになったのだと思います。

「テクニカル」の面では、現場の人にとって数理モデルやAIは得体のしれない、ふわっとしたものです。製造業においては、目に見えないものですからね(笑)

実際の分析プロセスをSPSS ModelerのGUIなどを使いながらひとつずつ丁寧に説明し、ベテランの方でも納得していただくことで、初めて受け入れていただくことができました。

製造業ではやはり現場の方が一番強いですし、お話をしてみるとやはりデータを表面的にみただけではわからない深いことを考えていらっしゃいます。現場の心を理解し、そのことをチームメンバーにも、自分自身にも言い聞かせています。

 

-これからのデータ活用領域でのチャレンジについて教えてください

データデモクラシーを達成し、全社員がデータを使って業務の質・企業価値の向上につながるきっかけを作りたいと思っています。

 

先日グローバルIT本部内部で約20名の統計学合宿を行いました。学習内容だけでなく、人のつながりができたことも好評でした。

人と人のつながり、そういったネットワーク作りにも力を入れていくつもりです。

 

そのためにはスキルアップのための教材や整備も進めていくのですが、それぞれの現場に合致した実効性のある取り組みに拘っていきたいと考えています。

 

インタビューのお礼と感想

五安城様、貴重なお話をありがとうございました。

 

皆様、いかがでしたでしょうか?

この数年DX推進をIT部問の専門データ分析組織にリードさせるケースが増えたと感じています。

その中で

・データを利用して解決するべきユースケースが業務部門から出てこない。

・現場の協力が得られない。

のふたつは非常に頻繁に耳にする課題です。

今回のインタビューを通して後者に対する解こそ五安城様の述べられた「現場の心を理解する」であり、これによって現場での信頼関係ができると前者の課題もクリアされるはずだと確信いたしました。

 

次回はIBMコンサルタントの赤尾さんから「データ活用プロジェクトは利益をもたらしてなんぼ」を伺います。

 

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河田 大

日本アイ・ビー・エム株式会社

テクノロジー事業本部 データ・AI・オートメーション事業部
Data & AI 第一テクニカルセールス

共著書に「実践! 異常検知と故障予測―IBM SPSS ModelerによるIoT時系列データ活用」

 

 

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