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データ分析者達の教訓 #03- 分析は「魔法の杖」にあらず、ビジネス主体と合意形成が肝心

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皆さんこんにちは。IBM Data&AIでデータサイエンスTech Salesをしている坂本です。

このリレー連載ブログはSPSS Modelerの実際のユーザーで第一線で活躍するデータ分析者に、データ活用を進める上で忘れられない教訓をインタビュー形式で伺い、これからデータ分析に取り組む皆様に参考にしていただくことを目的にしています。

 

今回インタビューをお願いしたデータ分析者は

今回インタビューを受けてくださったのは、イオンマーケティングで分析組織のリーダーとしてご活躍の山本様です。

私どもと長くお付き合いをいただいており、SPSS Modelerの書籍「実践IBM SPSS Modeler –   顧客価値を引き上げるアナリティクス」内の山本様によるユーザーコラムによれば「2004年からSPSS Modelerを利用」とのこと。その長い分析キャリアから貴重なご教訓を伺います。

 

山本 卓也 様

イオンマーケティング株式会社
マーケティングソリューション部
Cheif Data Analyst Officer

 

-日頃のデータ活用業務について教えてください

イオンマーケティングはイオングループのサービス向上を目的とし、データを活用した様々なマーケティングソリューションを提供しております。

私がイオンマーケティングに所属したのは2022年の10月とまだ日が浅く、それ以前は共通ポイント企業で分析組織の責任者をしていました。前職で培った経験を活かしてデータ活用組織の整備を進めています。

 

-データ活用業務で味わった苦い経験を教えてください

「データ分析あるある」の代表例とは思いますが、直接データに触れてこなかったビジネス担当者や経営者の中には、データ分析を「魔法の杖」と思い込んでいる方が結構な割合でいらっしゃいます。

「売上データを機械学習させるとキャンペーンの反応率が倍になるのでしょう?」といった無茶な質問を耳にした人も多いはず。

このブログの読者でしたら、どうしてこの思い込みが危ういのか承知いただけますよね?

なぜなら闇雲にデータを分析しても、「 “Garbage in, garbage out”=ゴミを入れてもゴミが出てくる」を、味わうだけだからです。

しかし白状しますと、他でもない私自身が若い頃に「データ分析でなんでもできる」と思い込み、クライアント様の期待値を上げるだけ上げた末に相応のアウトプットが提示できなかった苦い経験があります。

分析ツールの性能に任せて次々とアウトプットすれば、何かしら喜んでもらえると過信していたのだと思います。

 

-その苦い経験から得られた教訓はなんでしょうか

若さ故の過ち?に肝を冷やして以来、私はビジネスオーナーに過度に期待を抱かせることなく、客観的にデータを見つめ価値を引き出すプロセスを合意するべきだと常に自分に言い聞かせています。

確かにデータ分析は手段ですので全てのビジネスの問題を解決できるわけではありません。

しかし多くの場合、データで「ビジネスの現状把握」を適切に行うと解くべき課題が明確になります。

そして、何のデータを組み合わせてモデル化を行い、どの運用業務に実装し、どのように公正に成果を測定するのかをひとつひとつビジネスオーナーと合意形成していくとデータ分析プロジェクトの成功率は高まります。

もしクライアント様が「魔法の杖」としてデータ分析に過度に期待をされた場合には、自分の過去の経験を正直にお伝えした上で、業務の課題を一緒にデータから見つめ直すところからスタートすれば、なんらかの恩恵にたどり着けるはずだとアドバイスしています。

 

-これからのデータ活用領域でのチャレンジについて教えてください

データから新たな価値を見出し、適時更新しながら、事業に活用・実装されるサイクルを作ることです。

昨今のAIブームで、様々な現場でデータを使った仕組みや環境を構築し、実装していますが、現場はそれらのテクノロジーを活かしきれていないのが実態だと思います。

私どものチャレンジはテクノロジーを現場に合わせて「翻訳」し、実際に成果を感じていただけるところまで伴走することです。

 

インタビューのお礼と感想

山本様、貴重なお話をありがとうございました。

さて皆様、いかがでしたでしょうか?

私は日頃、流通業の皆様を担当しているのですが「膨大なPOSデータを分析ツールに入れると何か素晴らしい知見が出てくる」と信じているお客様は一定数いらっしゃいます。それはツールを提供するベンダーが性能ばかりを喧伝してきた結果でもあり、つまり私どもに責任がありそうです(苦笑)。

実際にはデータ分析の多くは地味で面倒な加工の連続で、現場での経験を埋め込んだり、仮説を作っては壊すを繰り返して初めて課題解決の糸口が見つかること、そしてそれは他ならぬビジネスオーナーの関与が重要であることを痛感しています。

もしまた「魔法の杖」を要求された場合には、すかさずこのインタビュー記事をおすすめしようと思います。

次回はビデオリサーチの田村様にお話を伺います。

 

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→SPSS Modelerノードリファレンス(機能解説)はこちらから

→ SPSS Modeler 逆引きストリーム集(データ加工)

 

 

坂本 康輔

日本アイ・ビー・エム株式会社

テクノロジー事業本部 データ・AI・オートメーション事業部
Data & AI 第一テクニカルセールス

 

 

 

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