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データ分析者達の教訓 #02- 部分にフォーカスし成果を得てから全体にスケールせよ

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皆さんこんにちは。山下研一です。IBM Data&AIでデータサイエンスTech Salesをしています。

このリレー連載ブログはSPSS Modelerの実際のユーザーで第一線で活躍するデータ分析者に、データ活用を進める上で忘れられない教訓をインタビュー形式で伺い、これからデータ分析に取り組む皆様に参考にしていただくことを目的にしています。

 

今回インタビューをお願いしたデータ分析者は

現在、千葉銀行でSPSSをご利用いただいている星野様です。星野様は以前の職場でもSPSSを利用されておりその時から長くお付き合いをさせていただいています。

 

星野 泰啓 様

株式会社千葉銀行
営業企画部
情報戦略室

 

 

-日頃のデータ活用業務について教えてください

個人のお客さまを中心として、非対面チャネルやデジタルチャネルを活用し、千葉銀行の商品や価値を知っていただくことでお取引きに繋げるための営業推進・マーケティング業務を担当しています。

分かりづらい表現になってしまいましたが、簡単に言いますと千葉銀行のWEBサイト、LINE、Facebook、メールマーケティングの企画運営とデータ分析業務全般を行っています。データ分析はおまけということではなく自分の中では軸足を置いている業務です。

WEBサイト訪問者はどこから来ているのか、閲覧されているコンテンツから何に関心を持たれているのか、どのバナーがよくクリックされていてどのような配置にするのがよいか、ということを分析しています。

顧客サポートの観点でも、Webサイトのお困りごとがあって「よくあるご質問」をご覧になったお客さまが解決に至っているか、もしご満足いただけなかった場合どうすれば解決に繋がるかなどを閲覧データや検索データ、アンケートなどを通じて分析し改善を図っています。

またメール配信業務では、複数のタイトル・コンテンツ・配信タイミングをテスト配信し、最適な配信方法を探ることで開封率やクリック率の最大化に繋げる活動をしています。

その他、千葉銀行で保有しているお客さまの属性やお取引データを活用し、求められている商品・サービスのニーズを把握し、ダイレクトメールなどでお客さまに適した情報をお届けするとともに、プロモーションの費用対効果の向上に取り組んでいます。

 

-データ活用業務で味わった苦い経験を教えてください

データ分析では「このようにすると改善に繋がる」と考えたことを実際に実行に移したところ、想定とは異なって効果が上がらないことは多々あります(笑)

幸いにして千葉銀行では取り返しのつかないような大失敗は現時点ではまだしていませんし、今後もないことを祈っています。

一方でこの世の終わりかという絶望を感じてしまうほどの経験はありました。

以前、DSP(Demand Side Platform)という広告主向けプラットフォームを提供するインターネット広告会社の研究員として勤務していた時のことです。

私はデジタル広告の効果を最大化するためcookieに基づく行動履歴を解析しユーザーの興味・関心を特定したり、既存顧客などの特定ユーザーと類似した見込み顧客を探し出すオーディエンス拡張やLook-Alikeと呼ばれる仕組みを開発していました。

そのシステムバージョンアップがうまくいかず配信パフォーマンが大きく下がってしまう事態が発生してしまいました。その他、広告入札額の最適化計算を行う機械学習アルゴリズム変更を行った際には結果に直結し、即座に如実に現れます。そこが醍醐味ではありましたが、よくなる場合も悪化する場合もあるため影響が大きく重要なものでした。

大部分ではうまくいっているように見えますが詳細箇所では問題に繋がることもあります。大きく概観を把握しながらも明細データも確認し考慮漏れはないかを検討しなければいけません。つまり鳥の目と虫の目の両方が必要となります。

インターネット広告という変化の早い市場においてスピードが求められつつも、どこかに抜け漏れや穴はないか、そのための検証や確認は怠ってはいけない。尊敬する当時の上司はそれを高いレベルで実践されており、データ分析のプロフェッショナルとしての心構えを叩き込んでいただきました。

 

-その苦い経験から得られた教訓はなんでしょうか

大きな失敗を避けるため、当初の予定より改善ポイントを犠牲にしても安全な施策に絞ることをしがちです。しかしこれでは多くの場合、何が変わったかよく分からないような中途半端な結果に終わってしまいます。

環境にもよりますが、可能であれば最初から全体に対して改善を加えるのではなく、限られた一部分でその改善を試してみる。その中で様々なケースを想定して課題を洗い出し、全体に適用した場合の問題点をつぶすことを考えるようになりました。

その際にやはり自分でとことん考え抜くことが重要です。それぞれのデータ活用の取り組みでは何を目的としていて、重要な情報は何か、そのためにどのような分析をすればよいか、さらに深堀りするかを念頭におきながら実施することを心掛けています。

現在の千葉銀行でのデータ分析業務において他部署からの依頼に基づき実施することも多くあります。こんな数字を知りたい、集計してほしいというリクエストに対してその結果を依頼元のほうではどのように利用しようとしているのか、この後何を判断しようとしてるのかをヒアリングしたり自分なりに考えます。

その後、工程での意思決定やビジネスアクションの手助けになるような可視化や有効と思われる追加の集計や分析を行うなど、当初の期待を超えるようなアウトプットを目指しています。まだまだ期待を超えるような水準には至っていないかもしれませんが仮説を持ちながら考え日々取り組んでいます。

 

-これからのデータ活用領域でのチャレンジについて教えてください

デジタルチャネルにおいて工夫する余地はたくさんあると感じています。

ちばぎんアプリやWEBサイト、SNSなどで接点を持つお客さまはまだまだ数が限られており、さらに増やしていく必要があります。リアルチャネルである営業店では、お客さまに寄り添いニーズや状況にあった提案活動をしていますが、デジタルチャネルではこれからです。
中期経営計画においてもパーソナライズや1to 1マーケティングの実現がテーマのひとつとして挙がっており、その土台となるものがデータ活用になります。

最終的にお客さまにどのようなコミュニケーションを図り価値を提供していくかという実務の視点を忘れず、そのために必要なデータ分析を行うというアプローチで実際のビジネスに繋げるため取り組んでいきたいです。

データ分析した内容をそのままシステムに反映・実装してお客さま向けサービスに活用するという直結型の仕組みも考えたいですが、その場合は以前のような苦い経験、絶望を感じることにならないようスモールスタートで事前に問題点を十分つぶしてから本格展開したいですね(笑)

 

インタビューのお礼と感想

星野様、非常に興味深いお話をいただきありがとうございます。ぜひこれからもSPSSユーザーコミュニティにお力をお貸しくださいませ。

さて皆様、いかがでしたでしょうか?

スモールスタートは、スピード重視して適切にシステム投資する際によく聞くフレーズですが、分析者の視点として理にかなっているのだとお話を聞いて理解いたしました。投資を抑えて早く始めるというだけでなく、本格的に業務に組み込む前にしっかり分析してあらかじめ問題点をあぶりだしておくことが重要なのですね。成果を予測できていれば大胆な施策にもチャレンジしやすくなるというものです。

次回はイオンマーケティングの山本様に「分析は魔法の杖にあらず、ビジネス主体と合意形成が肝心 」を伺います。

 

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山下 研一

日本アイ・ビー・エム株式会社

テクノロジー事業本部 データ・AI・オートメーション事業部
Data & AI 第一テクニカルセールス

 

 

 

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