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EAMの勘所:第9回 RCMの考え方と管理手法(4)

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Failure Mode Effect and Criticality Analysis(FMECA)の実行

EAMの勘所とは

企業資産管理を円滑に行うために「EAMの勘所」と題して定期的にコラムを掲載していきます。
第9回目は「RCMの考え方と管理手法」に関して、Failure Mode Effect and Criticality Analysisについてご紹介いたします。

RCM活動でOEL(Optimized Equipment List)またはMEL(Master Equipment List)でRCM活動管理対象の設備を特定したら、その設備に対する詳細な故障分析を行います。


 1. 機能の定義

設備台帳にはその設備の機能を簡潔に記述します。この記述は設備や機器、部品を理解する重要な手がかりとなるほか、RCM活動の全体像を把握するためにも非常に重要です。例えば、以下のように設備の機能を定義します。

「XXX設備では3,000PSI+/-200PSI圧力が出せるポンプが必要とされる。本機能に対しては4,000PSIのポンプを適用する。また1,000PSIを下回ると運転継続を中止するアラームを発報する」
という要求事項に対する機能の定義は
「圧力3,000PSI+/-200PSIのポンプ」
という具合に、ポンプの型式、仕様などで機能を簡潔に代表することが出来る。通常エンジニアは仕様の内容とP&IDを参照するとその機器が何のためにある かを理解することが出来ることから、簡潔に仕様内容で機能を定義することは非常に役立つ。ただし、この場合記述する仕様の表現方法はまちまちになると、エ ンジニアが登録されている設備の内容を知るための効率が下がるため、記述様式の標準化は非常に重要である。
通常、機器台帳を作成する場合のその詳細度の定義に対して(どこまで細かく階層化して登録するか?)、「一つの機能で定義できる単位」まで詳細化を行うという方法もある。
しかし、この場合設備階層が細かくなりすぎ、管理上多くのオーバヘッドが必要になり現実的ではない場合、サブ機能として1つの機器に対して複数に機能を定義する方法をとる。

例えば、ポンプには「圧力を上げて流体を送出機能」のほかに、「安全のための非常停止装置」がある。これも当該ポンプの機能であるために、設備台帳に記載を行う。


 2. 機能故障

「機能故障」は定義した機能が故障する場合、どのような現象で故障するかを明確に全て洗い出し、リスト化を行う。 例えば、先ほど例に挙げたポンプであれば

  • ポンプ送出圧力が3,200PSIを超えている
  • ポンプ送出圧力が1,000~2,800PSIである(規格は3,000PSI+/-200PSI)
  • ポンプ送出圧力が1,000より少ない
  • ポンプ送出圧力がない(流体が出てきていない)

このように「ポンプの故障」というような抽象的な表現ではなく、細かく現象を分析して、設備に与えられた個々の機能故障を定義する。


 3. 影響の予測

「影響の予測」では、定義された機能故障が発生した場合の対処に対してどのような行動(Effort)が実際に必要になるかの見積を行います。影響 の予測では“単に故障の修理”という対応ばかりではなく、バックアップ・システムの準備は冗長性の確保、安全対策、交代要員など問題の解決に必要な全ての コストを割り出すために利用します。前回の説明でRCMは経済性を根拠として活動するものなので、コストを把握することは大変重要です。


 4. 故障モード

RCMの「故障モード」には以下の6つのパターンがあります。以下の表は、海軍航空隊(NAVAIR)のRCMの教育資料から参照した航空機に関連 部品の各モードと航空機部品全体に占める各故障モードの割合を示しています。このモードの割合は扱っている対象産業分野の機器構成によってその混合の割合 は異なりますが、保全の教科書にある“バスタブカーブ”に属する振る舞いの部品が案外少ないことに着目していただきたいと思います。これは究極的に全ての 部品は“バスタブカーブ”に従うのではあるが、一定の限界点までには長い時間が必要であり、寿命が来る前に部品の修理やメーカーの要請に従って交換するよ うな管理によってさまざまなパターンを描くことになります。(子供の自転車や三輪車が10年経っても20年経っても動いたりするこはこのためですね)

航空機関連 部品の各モードと航空機部品全体に占める各故障モードの割合の表

5. 故障影響度

「故障影響度」は、機能故障が発生した場合の影響度を評価します。例えば、

  • 具体的な故障:シールから漏れが発生25
  • システマティックな故障: 送出圧力が1,000PSIを下回る
  • 結果的な故障:安全システムが動作してシステムが停止した

というような関連性を考慮して故障の関連性や影響度を定義します。
この結果の重要性は、前回説明した設備台帳の作成に関する重要度の分類と同様に機能故障についても評価できます。

設備の重要度の表

6. 故障検知

「故障検知」は各機能故障に対して、その故障状況をどのように検知するかを定義します。故障検知の情報はRCMにおける予防保全タスクを定義する場合に重要な情報になります。
故障検知には、以下の内容を考慮します。

  • 故障検知方法
  • 故障検知の感度:どれくらいの頻度で感知できるか
  • 検知のためのツールは何を使用するか?

 7. MTBF(Mean Time Between Failure)の定義

過去の記録もしくは、業界標準もしくは技術標準などで機能故障別、機器別の MTBF の情報が分かる場合は設備台帳に記述します。

RCM 活動ではこの設備台帳、機能表の情報を基にして、RCM 保全活動を定義して行きます。

参考文献
RELIABILITY CENTERED MAINTENANCE GUIDE FOR FACILITIES AND COLLATERAL EQUIPMENT, NASA
Management Manual, Guidelines for the Naval Aviation Reliability-Centered Maintenance Process (NAVAIR 00-25-403)

 

 

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