アプリの開発とモダナイゼーション
アプリケーション・モダナイゼーションのためのデータ連携手法
2021年11月24日
カテゴリー アプリの開発とモダナイゼーション
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デジタル・トランスフォーメーション(DX)の実現に欠かせないデータ活用。では、モダナイズされたアプリケーションに、オンプレミスやさまざまなクラウドに散在するデータをスムーズに連携させるには、どうすればよいでしょうか。API連携、システム/SaaS連携、イベント管理などのデータ連携のソリューションについて説明します。
散在するデータを、いかにスピーディーかつセキュアに連携するか
DXを実現するうえで、データは言わば“燃料”の役割を果たします。アプリケーションをモダナイズするときに、燃料であるデータをいかにスムーズに供給するかは大きな鍵になります。データを適切な場所に運んだり、つなげたりする“パイプライン”が重要です。また、企業がDXの実現を進める中で、多様なデータを活用するためには、人工知能(AI)や機械学習(ML)の利用も視野に入れて、データを連携することが有効になります。
DXでは、データはもちろん、データを活用するための仕組みを、連携したり、統合したりする“インテグレーション”が必要です。これまでのエンタープライズIT(SoR)のインテグレーションでは、エンタープライズ・サービス・バス(ESB)が中心でした。ESBによる連携は現在でも有効ですが、今日のデジタルIT(SoE)では、ハイブリッドクラウド/マルチクラウド、モバイル、IoTなどデータの保管場所やフォーマットが多岐にわたり、連携しなければならないデータが複雑になっています。SoRからSoEのような環境の変化によりESBだけでは対応できないことも増えており、インテグレーションにもモダナイズが必要となっています。アプリケーション・モダナイゼーションを実現していくうえで、さまざまな場所に格納されているデータを、シンプル、スピーディーかつセキュアに連携することが求められています。
具体的には、「イベント処理」「メッセージング」「API連携」「ファイル転送」「アプリ連携(ERP/SaaS連携)」などの方法によって、より細かな粒度でデータやサービスを連携・統合するインテグレーションや、環境ごとにインテグレーションを分散することが必要になっています(図1)。さらには、それらを統合管理できるようにすることも考えておく必要があります。
図1:インテグレーションの方法
メッセージングとイベント処理による非同期連携
メッセージングは、データや命令をメッセージとして、次の処理や別のシステムへ非同期で送信する仕組みであり、「送達の信頼性」「揮発性」「擬似リクエストリプライ」を特徴としています。メッセージが確実に届き、処理された後で確実に消去されることを保証するだけでなく、非同期でありながらリアルタイムのように処理することも可能です。
IBMでは、Fortune100に掲載されている企業の85%、世界トップ100の銀行の94%が採用しているメッセージング・ソリューション「IBM MQ」(以下、MQ)を提供しています。発売から25年以上が経過した実績と信頼性に加え、常に最新のテクノロジーを搭載し続けており、イベント処理との連携、RESTインターフェースでのアクセス、SaaS連携のためのインターフェースなども提供されています。
メッセージングは主にSoR(Systems of Record)で利用されてきた連携技術ですが、近年SoE(Systems of Engagement)用途で利用されている連携技術が「イベント処理」です(図2)。IoT機器やWebサイトなどから大量のイベントを収集することで、大規模なデータ分析に役立てられます。例えば、ECサイトでミカンとリンゴをショッピングカートに入れたが、リンゴを戻してミカンだけをオーダーしたという場合、これまでは、ミカンを購入したという記録しか残せませんでした。一方、イベント処理を活用することで、ミカンを購入した事実はもちろん、リンゴをキャンセルしたという途中の行動も容易に取得できる。つまり、ユーザーが、商品を購買するまでのカスタマー・ジャーニー(行動データ)を追うことができ、イベントをトリガーにしてアクションを起こすイベント・ドリブンなアプリケーションを構築することも可能です。
ただし、起きた事実のすべてを把握するイベント処理では、大量のデータを処理しなければならないためスケーラビリティーが重要になります。また、書き換えを想定していない「不可変データ」であり、発生したデータを順番に登録する「履歴データ」であることが特徴です。
IBMでは、Apache Kafka をベースにしたイベント・ストリーミング・プラットフォームである「IBM Event Streams」を提供しており、オンプレミス、またはIBM Cloud上で稼働します。
図2:多様なイベント・ソースへの対応が必要
API連携、SaaS連携による他のアプリケーションとの連携
システムやデータへのアクセスをAPI化することで、別のアプリケーションとの連携が容易になります。また、APIを公開することで、他の企業がそのAPIを利用して新しいサービスを構築することも可能になります。これによって、ユーザーに新たな価値を提供できるようになるとともに、自社ビジネスへの送客にも役立ち事業拡大につながっていきます(図3)。すでに、金融業界においてはフィンテックといったスタートアップ企業とのAPI連携によるサービス展開が数多く実現しており、製造、流通、情報/通信業界などの他業界においても導入が進んでいます。API連携によってエコシステムを形成することは、DXを実現するうえで定石の一つと言えます。
IBMでは、「IBM API Connect」(以下、API Connect)を提供しています。API Connectは、APIゲートウェイにより、マルチクラウド環境にあるデータやシステムのAPIを公開・管理・保護し、さまざまなエンドポイントと統合することを可能にします。API作成の自動化、開発者によるセルフサービス・アクセス、組み込みのセキュリティーとガバナンスの実現など、APIライフサイクル全体を管理する包括的なソリューションです。
また、システム連携やクラウドサービス(SaaS)との連携に役立つのが、「IBM App Connect」です。いまや企業では多様なクラウドサービスが利用されており、それらのデータをオンプレミスのシステムと連携したり、複数のSaaSと連携したアプリケーションで利用したりすることで新たなビジネス価値を引き出すことができる。App ConnectはさまざまなERP、SaaSアプリケーション、および、データソースに対応したコネクターを提供しているため、素早くデータ連携を実現することができます。
図3:API連携によるエコシステムの実現
メッセージング、イベント処理、API連携、SaaS連携などを統合管理するIBM Cloud Pak for Integration
MQ、Event Streams、API Connect、App ConnectといったIBMソリューションは、単独で利用することができますが、部分最適で導入するとツールの管理やメンテナンスが煩雑化してしまいます。IBMでは、メッセージング、イベント処理、API連携、高速ファイル転送、SaaS連携といったデータやアプリケーション連携を統合管理するためのプラットフォーム製品である「IBM Cloud Pak for Integration」を提供しています。
Cloud Pak for Integrationは、コンテナ技術に対応し、デプロイ先はオンプレミス、AWSを含むマルチクラウドに対応しています。シングル・コンソールや共通ログ機能、シングルサインオン、 仮想プロセッサー・コア(VPC)によるシンプルな課金体系により、低コストかつスピーディーにクラウド連携の環境を構築できます。
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