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キー・パートナーに訊く | 西尾新司(エヌアイシー・ソフト株式会社)

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「力になりたいとずっと思っていた」——そう話すのは、IBM Champion*の称号を2020年からお持ちの、エヌアイシー・ソフト株式会社所属の西尾 新司さん。今回の「キー・パートナーに訊く」は元IBM Championであり、現在はIBM社員としてチャンピオン・プログラムを支援している平岡大祐が、西尾さんに訊きます。

* IBM Championとは、テクノロジー分野で活動しているIBM社員以外の世界中の技術者や開発者、ビジネスリーダーの中から、IBMのソリューションやソフトウェアに積極的に関わり、優れた貢献をしていただいた方を認定し表彰するIBM公式制度です。

 

<もくじ>

  1. 1. 「JIMUC事務局の稲見さんのご自宅で」(2人の出会い)
  2.  2. TechZoneワークショップとOpenShiftブートキャンプ
  3.  3. Instanaが提供しているのは「家族と穏やかに過ごす時間」
  4.  4. Instanaコミュニティーの立ち上げと、質と熱量の進化
  5.  5. ギブバック魂と「ガッツポーズは小さく気づかれないように」

(写真左) 西尾 新司(ニシオ シンジ) | エヌアイシー・ソフト株式会社 ICTインフラソリューション本部 主任技師
(写真右) 平岡 大祐(ヒラオカ ダイスケ) | 日本IBM テクノロジー事業本部 AIOpsエバンジェリスト


 

平岡: 西尾さんと最初にお話ししたときは、僕も今とは違う立場で、IBM社員ではなかったんですよね。

 

西尾: そうでしたね。当時平岡さんはIBMのクラウド技術に関するチャンピオンで。僕はまだIBM Championになる前でした。4年前かな?

それ以降、しばらくはオンライン・イベントなどでときどきご一緒する感じで、じっくりとお話しさせていただいたのは…

 

平岡: JIMUC (Japan IBM Middleware Users Community)事務局の稲見さんのご自宅で食事をご一緒させていただいたときですよね。あの時にグッとお近づきになれました。

でも、実は僕ら、同じ会社に7年間も所属していたんですよね。

 

西尾: そうなんですよね。とは言うものの、2人とも現場につきっきりの仕事が多いので、社内では直接顔を合わせたことは多分一度もなく、まったく接点はないままでしたね。

ただ同じ企業カルチャーの中で仕事をしていたので、その点、通じ合う部分はありますね。

 

 

平岡: さらに関係性がグッと進化したのは、西尾さんにリクエストいただき一緒に開催した「TechZoneワークショップ」です。

 

西尾: はい。僕はずっとシステム監視を専門にやってきたんですが、ここ数年のクラウド・コンテナ化の技術動向をしっかり学んでおきたいという思いがあり「Red Hat OpenShiftをしっかり検証できる環境を払い出して欲しい」とリクエストしたんです。

そうしたら、「すでに用意されていますよ。IBM Technology Zone(テックゾーン)ってご存知ないですか?」って言われて。

 

平岡: そうなんです。IBMはパートナー企業の方がたや社員向けに、自由にトライアルや技術検証に今すぐご利用いただけるテックゾーンという便利な環境を提供しているんです。

でも当時、ちょっとびっくりするくらいその存在を知られていなくて。

それで、「テックゾーンとはなんぞや?」と「テックゾーンでのOpenShift検証」の2本立ての勉強会を、西尾さんと一緒に企画してソルパック様のオフィスで開催させていただきました。

 

西尾: その後、「OpenShift ブートキャンプ」と銘打ったワークショップもやりましたね。

 

 

平岡: 今日は西尾さんにInstanaコミュニティーのことを大いに語ってほしいんですけど、その前に、西尾さんの技術者としてのバックグラウンドをお話しいただけますか。

 

西尾: 僕のキャリアはずっと「監視」がメインです。一番の専門はネットワーク監視ですね。

ここ数年は、お客様環境でシステム構築をして、そのまま運用を請け負うことが多くて、そういったプロジェクトでサーバー、アプリケーション、ネットワークなどシステムのあらゆる部分を監視するということが多いですね。

 

——監視製品にはどのようなものがあるんでしょうか?

西尾: 僕がこれまで実務で見てきた製品を大きく分けると3つになります。サーバーの監視・異常検知に重きを置いたIBM Tivoli Monitoring(ITM)と、そのデータを受け取り統合監視をするNetcool。そしてここ数年特に力を入れている、Instana(インスターナ)というAPM(アプリケーション・パフォーマンス管理)製品があります。

ITMとNetcoolがインフラを監視するのに対し、Instanaは「オブザーバビリティ」とも呼ばれる機能を中心に、アプリケーションのパフォーマンスを主な対象として監視・可視化していきます。

さらに監視に留まらず、データ分析を行い、システム状況やウェブサービスの状態を最適化するためのインサイトを提供するのがInstanaの特徴ですね。

参考 | IBM Instana Observability

 

平岡: 以前はアプリの挙動が遅くなっても、その原因がなんなのか分からなかったんです。「監視職人」とでも呼べるようなベテランが経験値を総動員して推論したり、さまざまな部署・部門に連絡してデータを取り寄せたりして、どうにか不明要素を明らかにしていこうと努力していました。それこそ、夜も寝ないでシステムに張り付いて。

それでも、結局はっきりせず、うやむやに終わってしまうということも少なからずあるのが監視の世界だったんです。それを変えたのがInstanaです。泊まり込みの作業から監視職人を解放して、家族と穏やかに過ごす時間を提供しているんです。

…というのが僕の理解ですが、監視の道を極めていらっしゃるプロの西尾さんから見て、どうでしょうか?

 

西尾: 「監視を極めたプロ」…でもまあその通りかな。

ただ、仕事柄いろいろな企業の監視ツールをチェックしているとはいえ、じっくりと見てきたのはIBMの監視製品ばかりなので、いくらか偏りはあるかもしれません。

ただその点を差し引いても、InstanaをはじめとしたIBM製品の先進性はやっぱりすごいです。使い始めてしばらく経ってから「ああ、この機能はこういうときのためにあったのか」と実感したり、「あの頃からすでにこういう未来を予見して開発を進めていたのか」みたいなことが少なからずあります。だからおもしろいんですよね。

 

 

平岡: 昨年3月にInstanaコミュニティーを一緒に立ち上げてくれましたよね。あのとき、西尾さんが「やりましょうよ」って応えてくれたからスタートすることができました。本当に嬉しかったです。

参考 | Instanaユーザーが中心に活動するユーザーコミュニティー「Instana Observability User Group(Instanauts_jp)」

 

西尾: 僕も嬉しかったですよ。もっとInstanaについて、一緒に学びを深めていく仲間が欲しかったし、監視製品やオブザーバビリティに対する業界の興味・関心を喚起したいと思っていましたから。

データセンターにこもってずっと仕事をしていると、どうしても視点が内向きになりがちなんです。そして新しい技術に関心はあっても、それが自分の業務にどう関係してくるのかピンときずらくて。

 

平岡: わかります。そしてそうした視点やスタンスを変えることができるのが…

 

西尾: そう、コミュニティーです。直接的にビジネスにつながるかどうかはともかく、外に視線を向け自ら情報を共有していくと、知見が広がったりつながったりしながら現場に戻ってきますから。

そして製品だけではなく、オブザーバビリティーという考え方の重要性みたいなものも広がっていき、業界全体の底上げにもつながっていると思います。

さらに、たとえばアプリケーション側の人たちが監視についての理解を深めると、関係者間の相互理解が高まり、より良いサービスづくりや運用にもつながっていくと思います。これって重要ですよね。

 

平岡: その通りですね。そういうコミュニティーの盛り上がりを実感できたのが、昨年12月のイベントでした。

西尾さんには知見を共有いただくセッション・スピーカーの他に、エヌアイシー・ソフトさんとして会場&ドリンクスポンサーもやっていただきました。

オープニングで挨拶する西尾さんと、サンタVersionのInstanaキャラクター

参考 | 12月8日開催の みんなInstanaどう使ってる? 〜LT大会~を振り返る(動画・資料あり)

 

西尾: 個人としてはもちろん、会社としてもコミュニティーを後押しできた喜びが大きいイベントでした。社長の結城に「自社で開催をしたい」と話をしに行ったら、「それは大事なことだからやろう!」と二つ返事をいただいて。

それから、ユーザー会を続ける上では、イベント会場準備も重要で、そういった面でも力になりたいとずっと思っていたので、その点でも協力できてよかったです。

 

平岡: あのイベント以降、メンバー間のつながりの質の変化や熱量の進化みたいなものを感じています。それが今年の活動の活性化の基盤となっていますよね。

今年3月のコミュニティー・イベントでは、いわゆる競合関係にある会社に所属しているコアメンバーたちが、「この活動は業界全体のためでもあるし、自分たちを含めたみんなのためにもなることだから」と、積極的に手を挙げ活動を推進してくれました。

 

 

——西尾さんのコミュニティー活動へのスタンスですが、リーダーシップを背中で見せていくという感じでしょうか?

西尾: いえいえ。まったく違います。僕は自分がリーダーシップを取っているなんて思っていないし。むしろ付いていっている感じです。

 

平岡: 謙遜し過ぎですよ! 少し前にも、西尾さんのコミュニティーへの関わり方、そのスタンスのすごさを感じることがあったんです。

 

西尾: え? なんの話ですか(ドキドキ)?

 

平岡: USのとあるソフトウェア開発チームから「ユーザーテストに協力してくれる人はいませんか?」という呼びかけがあったんですが、西尾さんが率先して手を挙げてくれたんです。でもそのテストって、1回2回じゃないんです。3カ月間です。それも毎週毎週、USに合わせた夜遅い時間に報告会がセットされ、担当者と英語でのディスカッションも必要なものだったんです。

…それをやり切るのって簡単なことじゃありません。すごいですよ。僕も日本でチャンピオンをサポートする立場の者ですから多少はサポートさせていただきましたけど…。いや、横で見ていてほんとすごいなと思いました。

コミュニティーって恩返しというか、「提供する」という意思によって回っていくところがあるじゃないですか。西尾さんの「ギブバック魂」を感じましたね。

 

西尾: その件ですか。でも、あれは僕がやりたくてやったことですから。

技術者として、「興味深いものだから触ってみたい」って欲がすごく出てきたからやったまでです。結果的に学びも大きかったし、ユーザーが直面するであろう問題をしっかり製品開発の上流IBMでインプットし、意見交換をしながら進めてていくのも貴重な体験となりました。

興味の湧く製品ならまた経験したいですね。

 

——今のエピソードでも西尾さんの謙虚さが伝わってきました。それでは最後に、IBM Championとして今後の目標などあれば教えてください。

西尾: 来年もInstanaをしっかりやっていきたいですね。より多くの方にご活用いただけるよう、自身の学びを一層深めて発信していきたいです。

先ほども言いましたが、観測・監視ツールの重要性がより社会に認知されることで、IBM製品だけではなくてこの業界や個々の製品にももっと注目が集まるようになります。それが品質向上やより洗練された機能へとつながり、その結果として自分の仕事にもきっと戻ってきますから。

Instanaコミュニティーの面々との一枚

 

平岡: 今、西尾さんにお願いしたいと準備を進めている件があるんです。

1つは、次回開催予定のInstanaユーザー会にイタリアのIBM Championに登壇いただくのですが、西尾さんにファシリテーターをしてもらいたいと思っています。これは、先日すでに西尾さんにお伝えしましたよね。

実はもう1つあって。こちらはユーザー会終了後の世界のIBM Championが集まる月例会議で、 西尾さんとイタリアのチャンピオンの2人で、Instanaユーザーコミュニティーを世界に向けて発信してほしいんです。そして他の国のチャンピオンたちに協力を求めて、さらにコミュニティーを活性化してほしいんです。

 

西尾: すごいな。僕で大丈夫かな。でもとても貴重な機会ですよね。

 

平岡: 西尾さんならなんの問題もないですよ。これは僕がIBM Championだった頃の経験なのですが、同じような集まりで、クロアチアとイタリアのChampionたちと会話するイベントでスピーカーをやらせていただいたことがあったんです。

それが僕にとってはすごく貴重な体験となったので、ぜひ西尾さんにもこの機会を活用していただき、ヨーロッパにも羽ばたいて欲しいですね。

 

西尾: 大役ですね。でも僕にできることであれば。頑張ります。

 

——最後までやっぱりすごく謙虚ですね。

平岡: 本当にそうですよね。でも、それが西尾さんらしさなんです。

これは細かいお話はできないんですが、実は、多くの方の生活に直結する社会的重要インフラが「落ちる」ことなく動き続けているのも、西尾さんの活躍あってこそなんです。でも、そういうすごいことをやっているのに、謙虚に人知れずやられるのが西尾さんなんです。

 

西尾: 褒めすぎですよ。でも、ありがとうございます。

昔先輩に「監視製品が活躍しても、ガッツポーズは小さく気づかれないように。なぜなら、監視製品がいい仕事をしたときっていうのは、インシデント(事故)が起こりかけたということだから。そこで冷や汗をかいた人もいるかもしれないから。」そんなふうに言われたことがあるんです。

もしかしたら、それが身に染み過ぎてしまったのかもしれませんね(笑)。

 


TEXT 八木橋パチ

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