IBM クラウド・ビジョン

クラウドへの移行を成功させる2つのアプローチと5つのシナリオ

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皆様がクラウドの活用を本格化していく中で、これから多くの既存システムをクラウドへと移行させることになるでしょう。その移行アプローチは大きく2つ、主要な移行シナリオは5つあります。もちろん、大切なシステムの移行を失敗させるわけにはいきません。どのアプローチ/シナリオを選ぶ場合でも、IBMは多様なソリューションと高いプロジェクト遂行力で皆様のクラウド・ジャーニーを確実にサポートします。

志賀 徹

志賀 徹
日本アイ・ビー・エム
IBMオープン・クラウド・センター
戦略クラウド推進
総括部長

インフラ領域のクラウド・ビジネス推進におけるコンサルティングとソリューション策定を担当。さまざまな業界に対してクラウドを活用したシステムの提供を経験しており、それに基づく先進的なソリューションの策定や提案の実績も豊富。お客様のDXを推進するための効果的なクラウド活用に焦点を当てた講演なども行っている。

 

田中 良典

田中 良典
日本アイ・ビー・エム
IBMオープン・クラウド・センター
テクニカルソリューションデザイン
部長/コンサルティングITスペシャリスト

クラウドを中心とするソリューション策定のチームを率いる。さまざまな業界向けにプライベート・クラウドとパブリック・クラウドを活用したシステムの提供を経験した後、2012年よりソリューション策定と提案活動に従事。先進技術を活用したソリューションでお客様のビジネス変革を支援している。

 

“サーバー乱立”の悪夢を繰り返さないために…

デジタル変革(DX)の先導役を託され、IoTやAIといった先進ITのビジネス活用を模索しているIT部門の皆様にとって、多くの手間と人手、コストのかかるITインフラの運用管理は大きな負担となっているかもしれません。その負担を少しでも減らすべく、オンプレミスからクラウドへのシステム移行を検討しているご担当者は少なくないでしょう。

また、これまでビジネスを支えてきたシステムを先進技術でさらに発展させるべく、クラウドへの移行を検討する組織も多いはずです。

その際、気をつけていただきたいことが1つあります。それは、組織全体としての標準やロードマップがないまま、事業部門やプロジェクトで個別/無計画にクラウドを導入することです。それにより、かつてPCサーバー全盛の時代に部門/プロジェクト単位でサーバーが乱立したのと同じ状況になる恐れがあるからです。これを防ぐには、システムのクラウド移行にどのようなアプローチ/シナリオがあるのかを知ったうえで、自社に最適なロードマップを検討する必要があります。

オンプレミスからクラウドへ──2種のアプローチと5つの移行シナリオ

オンプレミスのITインフラのクラウドへの移行には、大きく「リフト」と「シフト」という2つのアプローチがあります。このうち、リフトは既存アプリケーションを改修なしでそのままクラウドにマイグレーションするアプローチ、シフトはクラウドネイティブの技術などを使いアプリケーションをモダナイゼーションするアプローチです。

クラウド移行のアプローチ──リフトとシフト

 

また、この2つを軸にしてさらに細かく見ていくと、5つの移行シナリオに分類できます。IBMは、それぞれのシナリオに対応した各種のソリューションを提供し、スムーズなクラウド移行をご支援しています。以降では、5つの移行シナリオと、それらを実現するソリューションをご紹介します。

シナリオ0:引退

まず移行以前のシナリオに「引退」があります。クラウド移行の検討に際しては、既存システム環境の棚卸しを行い、どのようなサーバーやアプリケーションがあるのかを調査します。それらの中には、クラウド移行を機に廃棄すべきと判断されるものがあるでしょう。そのアプリケーションは非投資対象として移行対象外となります。

クラウド移行の5つのシナリオ

 

シナリオ1:延命

移行シナリオの1つ目は「延命」です。アプリケーションの改修は行わないが、事情があってまだ使い続けるためにクラウドに移行させるアプリケーションが該当します。いわゆる“塩漬け”にするわけです。

多くの場合、延命対象のアプリケーションはVMwareによる仮想化環境で稼働していることでしょう。IBMはオンプレミスのVMware環境をそのままパブリック・クラウドへ移行できるサービスとして「IBM Cloud for VMware Solutions」を提供しています。同サービスは全世界で多数のお客様に利用されている実績のあるVMware向けクラウド・サービスであり、安心してご利用いただけます。

また、クラウド移行を支援するさまざまなツールから成る「IBMクラウド・マイグレーション・ファクトリー」を利用することで、既存システムの棚卸しなど煩雑で手間のかかる作業を効率化し、移行期間を大きく短縮することができます。

シナリオ2:老朽化更新(アプリ変更なし)

2つ目の移行シナリオ「老朽化更新(アプリ変更なし)」とは、サーバーの保守切れや老朽化による更改を機に、アプリケーションの改修なしでクラウドに移行するというものです。この場合もIBM Cloud for VMware Solutionsが有効なほか、IBM Cloud仮想サーバー(VSI)などが利用できます。

シナリオ3:老朽化更新(アプリ変更あり)

一方、3つ目の移行シナリオ「老朽化更新(アプリ変更あり)」は、インフラの更改を機に、アプリケーションを改修するというものです。ただし、この改修はクラウド上でDevOpsなどの手法を用いてアプリケーションを継続的に改善していくための仕組みを追加するなど最小限に止め、アーキテクチャーの刷新などは行いません。

以上の移行シナリオ1〜3は、いずれもモダナイゼーションを行わずにリフトだけをすることから「シンプルリフト」と呼ばれます。

シナリオ4:コンテナライズ

続くシナリオ4、5は、リフトに加えてアプリケーションのモダナイゼーション(シフト)まで行うことから「リフト&シフト」と呼ばれます。

シナリオ4の「コンテナライズ」とは、既存のアプリケーションを改修なしでコンテナにパッケージングし、DevOpsなど継続的インテグレーションの仕組みを組み合わせてクラウド上で運用するというものです。アプリケーションをコンテナのレベルで仮想化することにより、リソース使用効率を大きく抑えて集約率を高めることができます。Kubernetesなどのコンテナ技術の普及に伴い、最近はこのシナリオを選択するケースが増えています。

IBMは、コンテナライズを支援するさまざまなソリューションを提供しています。その中核を成すのが、業界標準のコンテナ管理技術「OpenShift」です。IBM Cloudでは、OpenShiftのマネージド・サービス「RedHat OpenShift on IBM Cloud」を提供しているほか、OpenShiftとオープンソース・ソフトウェアをベースにしたアプリケーション開発環境「IBM Cloud Pak for Applications」、マルチクラウド環境の管理ツール「IBM Cloud Pak for Multicloud Management」を使うことで、アプリケーションの開発/実行環境をクラウド上に迅速に構築することができます。

シナリオ5:リファクタリング

5つ目のシナリオ「リファクタリング」とは、アーキテクチャーを刷新してマイクロサービス化などを行ったアプリケーションをコンテナにパッケージングし、DevOpsなど継続的インテグレーションの仕組みを組み込んでクラウド上で運用するというものです。このシナリオで移行することにより、アプリケーションをクラウドネイティブに作り替え、クラウド活用のメリットを最大化することができます。上で紹介したIBM Cloud Paksは、クラウドネイティブなアプリケーションの開発/実行に必要な機能を全て備えています。

シンプルリフトの後にコンテナライズ、リファクタリングするケースも

なお、1〜3のシナリオでいったんクラウドに移行したアプリケーションを、後からコンテナライズまたはリファクタリングするケースも考えられます。これはシンプルリフトによってサーバー保守切れなどの急場をしのぎ、余裕ができてからモダナイゼーションするというアプローチです。

VMwareによる数百台規模の基幹システムをIBM Cloudに移行したお客様も

これら5つのシナリオによってパブリック・クラウドへの移行を進めることで、IT部門の皆様はインフラ運用管理の負担を大きく減らし、クラウドならではのメリットを得ることができます。

例えば、ある国内のお客様は、オンプレミスにVMwareで構築した数百台規模の仮想サーバーから成る基幹システム群を、非機能要件を変更することなくIBM Cloud for VMware Solutionsにそのまま移行されました。IBMクラウド・マイグレーション・ファクトリーを活用し、業務への影響を最小限に抑えた速やかな移行を実現。移行後の環境では、IBM Cloud上のAIなど最新技術を活用した高度なデータ活用が可能となりました。

こうした大規模な移行プロジェクトを、世界有数のシステム・インテグレーターとしてお客様のシステム構築/運用を長年にわたりご支援する中で蓄積した知見とノウハウ、プロジェクト/リスク管理能力、そしてグローバルで確立した各種方法論を駆使してご支援できることもIBMの大きな特徴です。大切なシステムをクラウドの上でビジネスと共にさらに発展させていくために、ぜひ私たちをクラウド・ジャーニーのパートナーにお選びください。

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