IBM クラウド・ビジョン

ニューノーマルに適応した“リモートなIT開発/運用業務”のプラットフォーム「IT Work Anywhere for Enterprise」

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新型コロナ禍で加速するニューノーマル社会への移行。あらゆる業界でリモートに対応した業務スタイルへの切り替えが進む中、企業におけるITシステムの開発/運用についてもオンサイト中心からリモート対応への転換が進んでいます。現状への対応に加えて、今後も大きな環境の変化や不測の事態が発生する可能性を考慮し、事業継続の面からもリモート対応が不可欠となっているからです。IBMでは、新型コロナウイルスの感染拡大が始まった当初よりIT開発/運用をリモートに対応させるDynamic Deliveryモデルを推進しており、それを実践するためのプラットフォームとして「IT Work Anywhere for Enterprise」の提供を開始しています。リモートによるチーム開発からアプリケーションの展開/運用、開発用デスクトップ、専用VPNまで、IT開発/運用のリモート化に必要な全ての要素を包括的に提供する同プラットフォームの概要と特徴について、グローバル・テクノロジー・サービスの東根作 成英とグローバル・ビジネス・サービスの大楠 貴浩が解説します。

1.企業IT開発/運用のニューノーマルへの移行を阻むものとは?
2.リモートな企業IT開発/運用に必要な各種サービスを網羅的に提供するIT Work Anywhere for Enterprise

 

東根作 成英

東根作 成英
日本アイ・ビー・エム グローバル・テクノロジー・サービス事業本部
オファリング&CTO ビジネス開発担当部長

基盤サービスを提供するビジネス・ユニットのグローバル・テクノロジー・サービス(GTS)において、リモートからの業務遂行に必要となるデジタル・ワークプレースとゼロトラスト・アーキテクチャーを中心とした新規ビジネスの開発に従事している。

 

大楠 貴浩

大楠 貴浩
日本アイ・ビー・エム グローバル・ビジネス・サービス事業本部
クラウド・アプリケーション・イノベーション
CAS Manage IGNITE推進/アソシエイト・パートナー

日本IBMに入社後、製造、金融など、さまざまな業界のお客様のアプリケーション開発に従事。継続的インテグレーション/デリバリー(CI/CD)の導入計画の立案やコンサルティングなども行っている。

 

企業IT開発/運用のニューノーマルへの移行を阻むものとは?

現在さまざまな業界における業務が、従来の対面やオンサイトを中心にしたスタイルから、リモートを中心にしたスタイルへと変更を余儀なくされています。これは企業のビジネス競争力を根幹で支えるIT開発/運用プロジェクトについても例外ではありません。IBMは、こうした変化に俊敏に適応し、リモートによりIT開発/運用業務を従来と変わりなく円滑に行うためのフレームワークとして「Dynamic Deliveryモデル」を提唱/推進しています。

【関連記事】
『急速に変化する世界で事業継続性を支援するDynamic Deliveryモデルによってデジタル・リインベンションを加速』
『あらゆるビジネスのデジタル化を加速する”次世代ITサービス”。 変革へ導くIBMのDynamic Deliveryとは』

ニューノーマル社会への移行は、企業のシステム開発のスタイルを大きく変える契機でもあります。昨今ではSite Reliability Engineering※1の必要性の高まりやDevSecOpsへの取り組みなどを通じて、多くの企業で“開発環境のコンテナ化”が進んでいます。オープンソース・ソフトウェア(OSS)を用いたオープン・スタンダードな開発ツールやフレームワークを用いたシステム開発も当たり前となりました。

その一方で、多くの企業のIT部門が、セキュリティーやネットワークの制約から現在も各種の開発作業をオンサイトで行わざるをえない状況に置かれています。

また、企業のIT基盤として複数のクラウド・ベンダーを組み合わせて使うことが当たり前になった今日でも、クラウド環境の運用作業はクラウド・ベンダー各社が提供するコンソールに依存しています。複数のクラウドをまたがった利用状況の把握や最適化には多くの手間と労力が必要であり、専用線や閉域網で接続されたクラウドへのアクセスも特定のネットワーク内からしか行えません。

※1 高度なソフトウェア技術を用いてシステム運用管理全般のタスクの自動化や自律化の仕組みを整備すること。

 

リモートな企業IT開発/運用に必要な各種サービスを網羅的に提供するIT Work Anywhere for Enterprise

これらの問題を解消してDynamic Deliveryを実践するためにIBMが提供しているのが「IT Work Anywhere for Enterprise(以下、ITWA)」です。ITWAは企業が行うITシステムの開発/運用業務をリモートで行えるようにするためのプラットフォーム構築や運用をサービスとしてご提供するものであり、次のような要素で構成されます。

①DevSecOps開発プラットフォーム

②ハイブリッド・マルチクラウドに対応したデプロイメント

③ハイブリッド・マルチクラウドに対応した運用/監視

④開発環境へのゲートウェイとなるVDI(Virtual Desktop Infrastructure:仮想デスクトップ)/DaaS(Desktop as a Service)

⑤既存ネットワークへの影響を最小化するリモートからのアクセスポイント

IT Work Anywhere ─ クラウド開発/運用環境とセキュアな基盤利用

▶最新OSSを活用したセキュアなDevSecOps開発プラットフォーム

これからの企業IT開発/運用環境を考えるうえで、DevSecOpsを念頭に置くことは非常に重要です。これまで開発と運用の間を隔てていた壁を取り払い、セキュリティー対策を組み込んだ継続的インテグレーション(CI:Continuous Integration)と継続的デリバリー(CD:Continuous Delivery)を実現するには、優れたOSSとクラウド・サービスを用いることが肝要となります。開発環境そのものを常にセキュアに保つために運用面を考慮することが必要になるでしょう。

ITWAでは、これらの条件を満たすDevSecOps開発プラットフォームを、IBMによるベスト・プラクティスの集大成としてご提供します。開発プラットフォームとしてどのようなOSSやクラウド・サービスの組み合わせが最適か、どういった運用が必要かを明確化し、ITWAのメニューとしてご提供します。

IT Work Anywhereのアーキテクチャー

▶ハイブリッド・マルチクラウド対応のデプロイメントと運用/監視を実現

また、開発した成果物を継続的かつ弾力的に展開するためには、「Red Hat OpenShift」に代表されるコンテナ・オーケストレーション・プラットフォームを活用し、単一のクラウドではなく複数のクラウドを意識したデプロイメントを実現することが必要となります。アプリケーションとインフラの両方をリモートで運用することも不可欠となるでしょう。

IBMでは、これまでもお客様のご要望に応じてカスタマイズ可能なマルチクラウド展開サービスやマルチクラウド管理サービスをご提供してきましたが、リモート開発の典型的なユースケースに対してこれらを迅速に展開するための新たなメニューをITWAで提供するための準備を進めています。

▶IT開発/運用業務に特化したVDI/DaaSを提供

開発/運用業務では、セキュアに管理されたデスクトップ環境も必要です。ただし、リモートでの実施を念頭に置いた場合、どこで作業するかわからない開発者や運用担当者に対して従来と同じように物理的なPCを支給するのは適切ではありません。こうしたケースにはVDIやDaaSが適していますが、これらのテクノロジーは単に導入するだけでセキュリティーが保証されるものではないため、ここでもIBMのベスト・プラクティスを活用した迅速な展開が求められます。ITWAでは、開発/運用担当者の業務に特化したVDI/DaaSをサービス・メニューに加える予定です。

▶ハイブリッド・マルチクラウド環境のIT業務に特化したネットワーク・サービスも用意

リモート開発では、ネットワークに関しても十分な考慮が必要です。開発/運用業務で社内ネットワークにリモート接続する目的から会社の既存VPN環境を流用するケースがよく見られますが、在宅勤務が進む最近はVPNがセキュリティー・ホールとして攻撃されるインシデントが多発しているほか、開発/運用業務で使う特権ユーザーと一般ユーザー(業務ユーザー)を同じ仕組みで運用することにもセキュリティー・リスクが伴います。

ITWAでは、お客様の既存VPN環境を使わずにハイブリッド・マルチクラウド環境にアクセスすることが可能なIT業務に特化したネットワーク・サービスも必要に応じてご提供します。

*    *    *

以上のような特徴を備えるITWAは、リモートでIT開発/運用業務を行う全てのお客様に必須のプラットフォームです。新しい働き方が求められる現在、最適なリモート開発/運用環境をご検討のお客様は、ぜひ私たちにご相談ください。

 

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