銀行・証券

デジタル・トランスフォーメーションによる銀行業務の「不可視化」

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著者: DBS銀行 シニア・バイス・プレジデント  Anand Singh Chandel

日本語翻訳監修
岡田正雄
日本アイ・ビー・エム株式会社
理事    グローバル・ビジネス・サービス事業部
戦略コンサルタント
金融ソートリーダー

私たち、DBS銀行はシンガポール最大の銀行です。東南アジア全域の事業全体にわたる顧客体験の向上を目指し、かねてから私たちはデジタル・トランスフォーメーションに取り組んできました。目標は、1200万人ものお客様に向けた銀行業務の不可視化です。しかし、私たちは未だにいくつかの非効率な人手による処理に依存していました。

時間のかかる人手による処理では、お客様に対するサービスの低下を招く可能性があります。人手のよる処理はエラーが発生しやすいためリスクが高まる可能性があるだけでなく、紙文書の処理確認などの手作業ではコストが増加し、人員も拘束されます。また、人手のより処理を拡張するには、雇用する従業員を増やすしかなく、コストへの影響がさらに大きくなります。

顧客体験の向上を図り、従業員の生産性を高め、リスクを軽減するために、人手による処理を自動化する方法が必要でした。買収によって急速に拡大しているため、人員を増やさずに処理するプロセス量を拡大する道も模索していました。

ロボティック・プロセス・オートメーションの適用

私たちが見つけた解決策は、ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)でした。RPAでは、人が行う明確に定義された反復可能なプロセスをソフトウェア・ボットが模倣し、実行できます。RPAはプロセスを加速するだけでなく、開発済みの自動化プログラムを再利用することで自動化コストを抑えるのにも役立ちます。

しかしRPAを試してみると、自動化プログラムを標準化しない限り、リスクは高まる可能性があることがわかりました。同じ地域でも部署が異なると使用するRPAツールが異なっていたり、手順に互換性がない場合があるため、運用上の不具合が起こる可能性が高まります。また、RPAの適用可能性と制限について業務担当者や技術担当者に通知するためのガイドラインも必要でした。

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銀行全体でのRPAガバナンスの必要性を理解すると、私たちはプログラム管理のための知的財産の主要部分となるセンター・オブ・エクセレンス(CoE)を設立することにしました。

そして、CoE構築とRPAアプリケーション開発支援に、IBMを選択しました。IBMの強力な技術的専門知識と、銀行業界におけるプロセス自動化と変革の成功実績が決め手でした。

2017年6月から、CoE構築に関してIBMグローバル・ビジネス・サービスとコンサルティングを受け、IBM Global Technology ServicesからRPAアプリケーション開発の支援を受けました。

卓越した成果達成

その結果、DBS銀行は一変しました。自動化プログラムの標準化、文書化、統制管理を支援するCoEを短期間で構築できました。RPAが適切な場合や自動化の前にプロセスの改善が必要な場合に使用するツールと技術標準、および銀行全体でRPAを管理する方法に関するガイドラインが明確になりました。

開発の側面では、IBMは、およそ100もの複雑なビジネス・プロセスを自動化し、2,500時間もの作業時間をもっと価値の高いタスクに当てられるようにしてくれました。分析プロセスでの効果を例に挙げましょう。マネー・ロンダリング・アナリストは、分析用の口座情報と取引データを手動で収集するのに30分から45分を費やしていました。RPA対応のデータ検索ならわずか15分で済みます。

このプログラムはシンガポールを手始めに、香港、中国、インド、インドネシア、台湾へと拡大して運用の自動化を図っています。RPAにより、DBS銀行では銀行業務を不可視化する(お客様が業務を意識しなくてよくなる)という目標に明らかに近づいています。

 

Anand Singh Chandel氏による銀行業務におけるRPAについてのビデオ・メッセージをご覧ください。

02:18(英語)

02:18(英語)

 

02:18(英語)

DBS銀行: プロセスの自動化とCOEによる成長のための位置づけ(02:18, 英語)

 

*このブログは、2019/4/9に発行された“How to make banking “invisible” with digital transformation(英語)”の抄訳です。

 

 

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