Data Science and AI

討論するAI – Project Debaterの今

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Project Debater、テレビ番組に再び登場

IBM リサーチが2018年に発表した討論するAI – Project Debater。11月6日(金)午後7時(米国東部標準時間)から放送されるBloomberg TV の“That’s Debatable (それは議論の対象だ)” という討論番組に登場します。今回の討論テーマは、Is a U.S./China space race good for humanity? -米中の宇宙開発競争は人類にとって良いことなのか?

ただし、Debaterは今回「討論」はせず、Key Point AnalysisというDebaterのために開発された自然言語処理の新機能が、世界中の視聴者の意見を分析し、総括し、議論のポイントを明確にします。

Bloomberg intelligence That's Debatable

ご覧になった方もいるかもしれませんが、実はこのコラボレーション、10月9日に同番組で一度披露されています。その時のテーマは「富の再配分を実行する時が来ているか、否か」でした。Key Point Analysisは、事前に寄せられた約3,500件の主張を分析し、20のキーポイントにまとめました。富の再分配に56%が賛成し、44%は反対。反対の44%のうち15%は一生懸命に働く意欲が再配分によって削がれる、というものでした。

何千という意見から重要な論点を短時間で見つけ出すことは、人間にとって簡単ではありません。Debaterが論点を提示しなかったら、このような視点で議論を展開できなかったかもしれません。

11月6日に放送される「米中、宇宙開発競争」について、現在集まった主張のうち、全体の51%が賛成、49%が反対です。賛成・反対意見の例はこちらで見ることができます。

Join the debate Experience a new era of improved public discourse with AI technology
https://www.research.ibm.com/artificial-intelligence/project-debater/thats-debatable/ (英語)

ここからどんなキーポイントを提示し議論を発展させてくれるのか、とても楽しみです!

 

 

Debater in IBM Watson

ところで、Debaterの技術はすでにIBM Watsonに統合されているのをご存知でしょうか?

2018年、自然言語処理の機能を持ったAI  “Project Debater”は、「事実に基づいた議論を素早く構築し、反論を検討し、反論を行うことができること」を実証し、驚くべき進化と新しい可能性を見せてくれました。現在Watson Discovery、Watson Assistant、Watson Core Servicesを通じて、高度なセンチメント分析、要約機能、高度なトピック・クラスタリング、ビジネス文書内の要素のカスタマイズ可能な分類など、Debaterのために独自に開発された多くの機能が利用できるようになっています。

 

そして新たにIBM Watsonに追加された自然言語処理機能、テキスト文書内のコメント、意見、声明・陳述などから、最も重要なポイントを選択して要約するKey Point Analysisです。その仕組みは大きく4つに分かれます。まず1. ディープ・ニューラル・ネットワークがトピックと無関係なテキストを削除し、トピックに対するスタンスで文書を分類します。次に2. 質の高い文章を選択して評価し、関連するポイントのリストを作成します。そして3. 冗長性な文章や支離滅裂な文章、感情的な文章をフィルタリングし、各キーポイントの要点に合った文書数を特定しランク付けします。最後に4. キーポイントに対応する質の高い論拠を選択し要約を作成します。最初のProject Debaterで使用した抽出的な要約機能を発展させてリサーチ・チームが開発しました。

氾濫する大量のデータから洞察や考慮事項と言ったキーポイントの明確な把握を可能にし、 “データ”に基づいた意思決定を支援するこの機能は、ビジネスの現場でどのように使われるのでしょうか?企業はお客様から様々なフィードバックをもらいます。調査、レビュー、ソーシャルメディア、コールセンターのログ、フィールドレポートから洞察を得ることができますが、お客様の声を理解するには何万もの文書データを読む必要があります。また、多くのお客様が指摘する上位数件の懸念事項だけに着目し、少数ながら重要な問題を見逃してしまうかもしれません。Key Point Analysisが重要ポイントを要約することにより、企業は包括的に懸念事項が把握できるため、データに基づいた情報を獲得することができます。経営者と従業員、政府機関と国民・市民、と言った二極化が進む現代社会において、より良いコミュニケーションの手段となるでしょう。

Data digestion

 

 

さらなる自然言語処理技術の発展に向けて

IBMリサーチがProject Debaterを最初に発表したのは 2018年。2011年、クイズ番組で勝利しAIブームの幕を開けて以来、7年ぶりに登場した「討論するAI」は、事実に基づいた議論を素早く構築し、反論を検討し、反論を行うことができることを実証した知性を感じさせるAIでした。見事な討論ぶりばかりが注目されがちですが、このプロジェクトの目的は「討論するAI」を作ることではなく、自然言語処理機能を備えたAIをあらゆるビジネスに提供するための実験だったのです。今回の”The Debatable”に至るまでにDebaterのテクノロジーは2019年1月のCES、5月のIBM Think、11月のCambridge Unionで披露されました。11月のイベントでは、キーポイント分析の前段階である群衆によるスピーチ機能(Speech by crowd)を使用して、人間の推論を強化するためにAIがどのように使用されるかを実証しました。今回の”That’s Debatable”での経験を経て、IBMリサーチはテクノロジーを前進させ、AIをより汎用性の高い形にし、人々の生活を支える役割も考慮して開発を進めていきます。

 

 

 

文責:髙橋志津

 

 

<関連リンク>

 

 

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