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Smarter Business

企業が成長を賭けて投資すべき「7つの領域」を日本IBMが提言

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鳥巣 悠太

鳥巣 悠太
日本アイ・ビー・エム株式会社
Future Design Lab.
Institute for Business Value
マネージング・ストラテジー・コンサルタント

日本IBMは、変化の激しい時代において企業の中長期的なビジネス拡大に資するべく、ビジネスの中核となる7分野と、各分野で企業が下すべき決断に関して解説したレポート「成長を賭けた7つの決断」を発表しました。

本レポートは、多様なクライアントや専門家との対話に基づいてグローバル視点から7つのビジネス・トレンドを分析したうえで、企業が下すべき決断について解説し、日本市場に着目したトレンドやアクション・ガイドをまとめています。企業のリーダーは、自社の強み、成熟度、課題などを踏まえ、以下に挙げる7つの各決断を体系的なアプローチにまとめて実行し、真の変革へと発展させることが肝要です。

1.生成AI:AI基盤の「いいとこ取り」で、信頼性と利便性を両立
AI活用を前提に、信頼できる基盤モデルを組み合わせながら大規模なビジネスの高度化を実現しましょう。

2.サステナビリティー:単なる「環境保全」や「CSR」ではなく、社会との共生を意識
意識変革とともにサステナビリティーを経営の主軸とし、全社一体で次世代が生きる未来を創りましょう。

3.あらゆるもののデジタル化:デジタル・テクノロジーを相棒に「匠」をアップデート
ソフトウェアありきの価値創造を加速させ、顧客志向でデジタル化を推進しましょう。

4.エクスペリエンス:日本的「おもてなし」でデジタル体験を差別化
全社的な取り組みにより、徹底した客観性のもと、顧客・従業員を含めた全員のための最高の体験を生み出しましょう。

5.空間コンピューティング:空間の活用で時間、場所、バイアスなどあらゆる体験上の制約を克服
空間コンピューティングで何ができるか、ではありません。今ある課題を明らかにした上で、空間コンピューティングの特性を活かした解決策を考えましょう。

6.レジリエンス:多様化・複雑化するリスクを乗り切るべく、仕事をオープン化
増大するリスクに対応するには多様化・オープン化が重要です。オープン・イノベーションを加速しましょう。

7.働き方の再定義:「村社会」からの脱却に向け、心のオープン化により多様性を受容
経営空間の拡大に伴う、人と会社の関係性の複雑化・多様化を受容するマインド・シフトを実行しましょう。

こうした7つの決断に関する議論を重ねる中で、日本企業が特に意識すべき3つのポイントが明らかとなりました。

「本質への投資」こそが価値を生み出す

企業が投資から真の価値を生み出す上で、目先の費用対効果に囚われすぎてはなりません。企業の意思決定者は、経営方針やパーパスといった不動の理念を明確にし、自社の「本質(コア・コンピタンス)」を見極めた上で投資を進める必要があります。その上では、全社一丸となって施策に取り組むべく、チェンジマネジメントが不可欠です。

「セクショナリズム」からの脱却が鍵に

国内企業では縦割り文化が根付いており、組織横断で総合力を活かすことが苦手です。それゆえに、先進的な技術やトレンドに対する取り組みの多くは規模が「小粒」であり、スケールメリットを享受できていません。「セクショナリズム」から脱却すべく、十分な権限を与えられた部門横断組織の役割などが肝心です。

あらゆるものを「つなぐ」べく多様性を許容することが不可欠

企業間の壁を取り払い、エンドツーエンドでプロセスをつなぐことが、ビジネスのレジリエンスを確保する上で必須です。「つなぐ」ことを促進する上では、多様化するヒト・スキルを許容することも肝心です。それにより組織のつながりを一層拡大させ、競争優位性を確保することができます。

日本企業の中長期的な成長に向け、あらゆる企業の意思決定者は、強い意志とスピード感を持って「決断」することが求められています。