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Smarter Business

今こそAIを活用した本質的なインボイス制度対応を

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松本 直也

松本 直也
日本アイ・ビー・エム株式会社
IBMコンサルティング事業本部
パートナー
 

日本アイ・ビー・エム株式会社にて、ERPパッケージソリューションを中心に企業の経営変革を支援するビジネス・トランスフォーメーション・サービス事業でパートナーとしてSAP会計部門を統括。2015年には、IBMのSAP Concurビジネスを立ち上げ、20社以上のデジタル改革を上流から下流まで一気通貫で支援。SAP Concur最優秀パートナーアワードを2度受賞。

2023年10月のインボイス制度開始に向けて、ほとんどの企業で何らかの業務・システムの対応、準備が進んでいます。

ただ、その対応方式は、長い準備期間を取って、業務とシステムを刷新するような取り組みから、従来システムの最低限の改修や、現場の作業者に入力や確認を負担させる運用まで、幅がある状況です。

大手企業では、請求書の業務に多くの取引先と従業員が関与し、大量の請求書を毎月取り扱っています。制度開始までの期限切れで、取ってつけた運用やシステム改修のレベルに留まっていては、制度開始時に、大きな混乱が生じるリスクがあるのではないでしょうか。

この制度対応を機会として、昨今話題のAIを、大量かつ複雑な請求書業務に適用することで、業務効率と統制の向上を図るべきと考えます。本質的なインボイス対応として、AI-OCRと株式会社コンカー(以下、コンカー)の提供するConcur Invoiceを組み合わせて、日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、IBM)が導入から運用まで推進するソリューションをご紹介します。

経理分散型の大企業では、無理な対応で業務に支障

自社で準備しているインボイス制度対応方式によって、制度開始後に無理が生じるかどうかは、「1.請求書支払業務の複雑さ」と、「2.選択した方式のシステム化のレベル」をもとに、そのバランスがとれているかという観点で、想定することができます。

1.請求書支払業務の複雑さ

当業務に関わる自社と取引先の数と、その間でやりとりされる請求書の種類と量から、複雑さの規模感を簡易的に判定していきます。

  • 自社の当業務に関わる組織・従業員数
  • 取引先企業数・請求書の種類と量

図1:請求書支払業務の難易度分類

図1:請求書支払業務の難易度分類

両方ともに多くなっている「大手企業・分散型経理」(図1)が、難易度が高くなります。大手企業に多く見られる、請求書の受領、入力、確認を現場に寄せた現場分散型の経理組織・業務方式を取っているケースが該当します。

2.インボイス制度対応方式のシステム化レベル

対応として、期間をかけてシステムの刷新や本格的な改修まで取り組めたか、方針や期間、および予算の制約から、運用での対応や最低限のシステム改修で済ませているかにより、レベル感を確認します。

  • 先進的な業務・システムへの刷新:AI-OCRによる適格請求書と事業者番号の判定支援、入力・承認の柔軟かつ外部データAPI連携のあるチェック機能、将来的な変更への機能拡張性
  • 従来システムをしっかり改修:入力内容を、想定される正誤のパターン・ルールでチェックする機能の導入、事業所番号の正誤を国税庁データとのAPI連携で検証、取引先マスターの事業者番号の正誤チェックや有効期限切れの自動メンテナンス
  • 最低限のシステム修繕:適格事業者かをチェックボックスや税コードで区分、取引先マスターに事業所番号項目を保持
  • 業務運用対応が中心:事業者番号を従業員が手入力、適格請求書かどうかを従業員が判断、国税庁の公表サイトで事業者番号の正しさを経理が目検など

「大手企業・分散型経理」が、インボイス制度対応を「業務運用対応」や「最低限のシステム修繕」で済ませている場合は、制度開始後に本当に業務運用が回るかどうかが論点となります。今回のインボイス制度の改正を、発生源の現場全部門と従業員一人ひとりに周知徹底しなければならず、また、大小多くの取引先企業にも正しさを求め、様々な形式の請求書の確認と訂正に対応していかなければいけないからです。下記のような問題が生じることが懸念され、その結果として、業務効率の悪化、取引先への支払遅延、税務観点での指摘リスクが想定されます。

  • 改正内容の理解につまずき、現場部門が請求書を手元に溜めてしまう
  • 適格請求書かどうかの確認をしない/間違える
  • 取引先マスターへの事業所番号の入力漏れ/入力ミス/異なる企業の番号/期限切れのメンテナンス漏れ
  • 伝票への事業所番号の入力漏れ/入力ミス/異なる企業の番号
  • 経理審査時点での大量の間違い/差し戻しの発生
  • 経理からの差し戻しから、現場と取引先で修正した請求書を受け取るまでに期間がかかる

AI-OCR・Concur Invoiceによる本質的なインボイス制度対応

IBMでは、AI-OCRとConcur Invoiceを組み合わせたソリューションによって、制度開始時点では暫定対応としても、恒久的には請求書業務の抜本的な効率化と統制の強化・向上を図ることを提言しています。

ファーストアカウンティング株式会社(以下、ファーストアカウンティング)のAI-OCRと、コンカーのConcur Invoice の特徴を、ポイントに絞って紹介します。

図2:AI-OCR + Concur Invoiceのソリューション概要

図2:AI-OCR + Concur Invoiceのソリューション概要

AI-OCR

AI-OCRによって、登録者番号の入力の有無と番号のチェックを行うことで、適格請求書の判定が支援されます。

  • 登録者番号は、読み取りに加えて、国税庁の情報と突き合わせをすることで、記載漏れ、番号の不一致、有効期間外でないか等を判定することができ、従業員や経理の判断の助けになります。
  • 適格請求書に必要な記載6項目を読み取り、適用税率毎の合計金額を検算する機能で正誤を判定することが可能です。

Concur Invoice

Concur Invoice を活用することで、上記のAI-OCRからの請求書データの連携、各種項目のチェックとデータ出力ができます。加えて重要なのは、制度変更に対してユーザー企業やコンサルタントからの情報共有が期待できることです。

  • 連携サービスとしてパートナーシップのもと、AI-OCRとConcur Invoiceの連携がされており、豊富な実績があります。
  • Concur Invoice ではインボイス制度に対応した項目、柔軟なチェックルールに加えて国税庁APIを使ったチェック機能が開発中です。ブリッジプログラムへのデータ出力や分析用レポートでの登録番号一覧出力もできます。
  • 経費精算・請求書管理クラウドとして大きなシェアを占めるソリューションのため、ユーザー企業間での制度対応事例や、パートナーシップ企業のソリューションやコンサルタントが充実しています。これにより、今後の制度変更や改訂の際も、自社だけで悩みを抱えることがなくなります。

AI-OCR・Concur Invoiceの実績が豊富なIBMにご相談ください

IBMは、ファイナンス領域の先進的なソリューションに力を入れており、AI-OCR + Concur Invoiceの包括的な導入、拡張および運用保守を提供しています。DX実現に向けた最初の一歩として提言し、大手企業20社以上の導入経験、ノウハウを有しております。
インボイス制度対応および恒久的な請求書業務改革の実現に向けたお取り組みの際には、ぜひIBMにご連絡ください。