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「勝ち組」企業の法則は経理財務部門の「再定義」にあり

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近年は企業のグローバル化が加速するなか、経理財務部門に求められる役割も大きく変化し、かつこれまで以上の役割が期待されています。企業の財務に関わる実績数値をまとめることが主体であった業務から、実績数値をグローバル・レベルでさまざまな軸で迅速に集計し、かつ将来の予測数値を分析し、CEOや事業部門の意思決定を支援する、このような役割が求められています。

そのために必要な取り組みは、徹底した業務効率化とビジネス洞察力の強化です。

田村 直也
ビジネス・プロセス・サービス 経理財務変革コンサルティング・リーダー

経理財務領域における、IBMやグローバル先進企業をベンチマークとしたグローバル化対応構想策定、会計システム構想策定、業務・組織変革、決算期統一・決算早期化、内部統制整備、IFRS対応、SSC/BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を活用した業務集約、アナリティクスやコグニティブを活用した経営の高度化などのコンサルティングに従事。

 

CFO組織の目指すべき姿

IBM CFOレポートでは「経理財務部門において、業務効率化とビジネス洞察力の両面を向上することが重要である」と述べています。

資料1

しかしながら、多くの日本企業ではグループ全体の情報統合が進まず、グループ・レベルでの実績集計に多くの手作業を要している、またはグループ管理レベルで必要なデータ集計すら難しい状況で、ビジネス洞察力を要する人材育成や企業戦略立案のための情報提供は十分にできていない状況が続いています。

とはいえ、日常業務に追われる日々のなか、自社の大胆な経理財務改革には手が付けられず、現状の延長でできる改善を積み重ねている状況が続いている経理財務部門が多いのではないでしょうか。

 

施策の重要性と有効性

CFOは自社の経理財務部門が混乱の時代を乗り越えるための準備ができていないことを懸念。
「グローバル経営層スタディ」CFOレポートより

資料2

まずは取り巻く環境変化を踏まえて、自社の経理財務部門のミッション、バリューを再定義し、ビジョンを描くことからはじめるべきでしょう。これが決まると取り組むべき業務効率化、ビジネス洞察力の強化の方向性が見えてくるはずです。

業務効率化においては、勘定科目やマスター・データ、会計システムのグループ統一、業務プロセスの標準化、さらには定型業務の集約としてSSC(シェアード・サービス・センター)やアウトソーシングの活用などを行い効率性を高め、低コストで高品質なアウトプットを迅速に出すことが重要です。日本企業においてはグループ会社規模の大小の違い、事業部門や海外グループ会社へのガバナンスの観点から標準化が進まないケースが多いですが、まずはグループ管理の主体となる主要なグループ会社での標準化の徹底が必要です。それ以外の規模の大きくないグループ会社には簡易版の標準化を用意することも有効です。

ビジネス洞察力強化においては、グループで唯一かつ共通の予算、業績管理の仕組みを導入し、その仕組みを活用して財務、非財務データを集計・分析、また実績だけでなく将来の予測数値を分析し、CEOや事業部門の意思決定支援を行う、かつそのような人材育成が重要です。

ビジネス洞察力を強化するためにも、業務効率化を徹底し、経理財務部門で本来フォーカスすべき意思決定支援業務へのシフトができる工数の確保が必要です。

グローバルの先進企業には、以下のような行動を通じてこの激動の時代に立ち向かっている経理財務部門があります。

 

長期的な視点を持つ

  • 統合された情報や新たな予測モデル、有能な人材を活用して戦略策定に深く関与し、新たな成長の機会を追求する

 

「ネクスト・ウェーブ(将来の変革の波)」に備える

  • 業務効率、業績管理、リスク管理を見直す
  • ビジネス・モデルを最適化し、新たな成長機会を創出し、効果的な投資を図る
  • 業務・顧客・競合・業界などのデータを統合して活用することにより、売上成長と利益拡大の最適化を調整し続ける

 

統合、分析、適応

  • 変化のスピードに対応しながら確実に事業を成功させるために、テクノロジー、人材、オペレーションに投資し対応する

近年では売上予測やM&Aの分析、販売価格の決定・価格戦略等にもアナリティクスを活用し、またロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)による徹底した業務プロセスの自動化の追求、さらにはAI(人工知能)やコグニティブを活用してさらなる進化を目指す取り組みも進んでいます。IBMでは四半期初に四半期末の売上を予測、それを予算と対比し利益目標を達成するために必要なアクションを打っていくというサイクルを回しています。

アナリティクスやAI、コグニティブの活用により、経理財務部門は事業を支える存在として、より飛躍的に進化していくでしょう。

photo:Getty Images