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投資家の評価もガラッと変わる?日本企業の企業価値を向上させる“ある方法”とは

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※当記事は、Web「ビジネス+IT(IBM外のWebサイトへ)」に2023年2月に掲載されたものです。掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます。

サステナビリティやESGへの取り組みは、すでに企業活動の根幹に関わる重要なテーマとなっている。世界的なESG投資の拡大もあり、取り組みに関わる情報を積極的に開示することも欠かせない。しかし、世界の先進企業と比べると、日本企業は情報開示に不十分な点があり、投資家から高い評価を得られているとは言いがたい。 これまでも日本企業は、自社のさまざまな取り組みにかかる情報(いわゆる非財務情報)の開示が足りていないという指摘はあったが、なぜ改善が見られないのだろうか。原因を探ると、日本企業が抱える“ある問題”が関係しているようだ。

情報開示が不十分だと…それだけで投資対象から外れる?

世界的なESG投資の拡大を背景に、ESGの取り組み状況や結果を開示する基準・ルールについても、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)やIFRS(国際会計基準)財団、GRIなど、さまざまな機関が開示基準を公表しており、今後、求められる開示情報の“量”と“質”はさらに拡大・深化していくことが予想される。

こうした状況下において、日本でも大手企業を中心にESGへの取り組みとその情報開示が進んでいる。とはいえ、欧州や米国の大手企業と比べると十分な量と質だとは言い難い。特に日本企業の場合、制度対応に起因する形式的な受け身の開示にとどまることが多く、制度や基準の枠を超えて自社の取り組みを積極的にアピールする“自由演技”に欠ける傾向にある。情報開示が不十分な場合、投資家の納得を得ることが難しくなり、しいては企業の存在意義・存在価値そのものを疑われ、最終的には投資対象から外されかねない。

投資対象として日本企業をみた場合、残念ながら日本企業の過去10年間のPBRは1倍前後で、欧州はその2倍、米国は3~5倍と大きく水をあけられている。もちろん、PBRがESGの取り組みや情報開示だけで決まるわけではないものの、PBRの高い企業では、総じてESGへの取り組みと情報開示に積極的であることはたしかである。

日本企業の過去10年間のPBRグラフ(出典:柳良平「CFOポリシー第二版」中央経済社2021年)日本は10数年間、PBRが約1倍で変化していない(出典:柳良平「CFOポリシー第二版」中央経済社2021年)

日本企業は、これまでもESGに限らず企業のさまざまな取り組みにかかる情報(いわゆる非財務情報)の開示が不十分であることは指摘されてきた。企業価値の低下につながりかねないというリスクを認識しながら、なぜ改善されていかないのか。それには日本企業が抱える“ある問題”が関係しているようだ。

ESGの情報開示に人海戦術で対応している日本企業の限界

日本企業のESGへの取り組み、特に情報開示の現状とその問題点について、多くの企業のESG施策を支援している日本アイ・ビー・エム IBMコンサルティング事業本部 パートナーの真藤達也氏は、次のように指摘する。

真藤 達也氏

日本アイ・ビー・エム株式会社
IBMコンサルティング事業本部
ファイナンス・トランスフォーメーション リーダー
パートナー
真藤 達也氏

「ようやく日本の大企業を中心に取り組みが本格化してきたところですが、人手をかけて人海戦術的に社内のESG情報を収集・整理するので一苦労といった状況であり、投資家に企業価値が伝わるよう開示の在り方を工夫するといったところには時間を割けていません。また財務情報のように『これだけ開示しておけば良い』といった明確なルールがないことに加え、年々、変化し続ける開示基準の動向を追い続けなければならない難しさもあります。そうした中で、各部署から開示に必要な情報を集め、開示基準に合わせてExcelで集計・整理し、開示のタイミングに間に合うよう、なんとか対応しているのが実態です」(真藤氏)

また、情報開示における課題として、社内の協力を得られにくいという事情もあるようだ。そのため、ESG情報のレポーティングについて、しっかり体制を整備できていない企業もある。さらには、場当たり的に対応していることから、業務の標準化・統一化・ドキュメント化ができていない企業が多く、毎年携わる人間が手探り状態でESG情報のレポーティングを準備するケースも少なくないようだ。

柴山 龍治氏

日本アイ・ビー・エム株式会社
IBMコンサルティング事業本部
ファイナンス・トランスフォーメーション サステナブル経営管理リーダー
アソシエイト・パートナー
柴山 龍治氏

IBMコンサルティング事業本部 アソシエイト・パートナーの柴山龍治氏は「課題をこのまま放置すれば、投資家からの高い評価を獲得することは困難です。企業価値を維持できればまだしも、企業価値を落としていく可能性すらあります。企業価値向上を実現するためには、多くの企業の負担となっているESG情報の収集・整理の手間を省き、情報開示の“質”を高める体制・仕組みを早急に整備する必要があります」と語る。

コンサルティングからシステム構築まで支援する「サステナブル経営管理サービス」

こうした課題を抱える日本企業に対し、サステナブル経営やESGへの取り組みを支援する「サステナブル経営管理サービス」を提供しているのがIBMである。柴山氏は、本サービスについて次のように説明する。

「IBMの有識者がESGにかかるルール・KPI・業務・体制について、現状を調査し、有効性をクイックに評価した上で、お客さまと協議を重ねながらサステナブル経営管理のあるべき姿と実現に向けたロードマップを作成し、ルール・KPI・業務・体制の詳細設計、システム導入までを一気通貫で行うサービスです」(柴山氏)

そして、本サービスにおける最初のステップがサステナブル経営管理の成熟度診断である。業務、システム、ガバナンスなどの観点から、現在のサステナブル経営やESGへの取り組みがどれくらい成熟しているかを、IBMが持つグローバル・コンサルティングのノウハウを使って判定する。真藤氏は、「成熟度診断によって、その企業の強い部分、弱い部分が可視化されます。それに基づいて将来像を描き、ロードマップを策定して、順次施策を実行していくことで、スピーディーで無理なく推進できます」と話す。

ESG情報開示に関わるさまざまな業務を自動化できる「Envizi」

サステナブル経営管理の成熟度を診断した後、具体的な施策を実行するステップで活躍する有用なツールとして、ESG情報管理ツールの「Envizi」(エンビジ)がある。

Enviziは、GHGプロトコルで規定されているデータを中心に約500の定量・定性データを保持していることから、同プロトコルに基づくGHG排出量の計算、関係者のタスク進捗管理、ESGレポーティングの生成が可能である。つまり、ESGデータ管理において強固で堅牢な報告体制を構築できるツールである。すでに、140カ国150社で導入され、導入企業にはIBM自身はもちろん、セレスティカ(Celestica)、ダウナー(Downer)、GPTグループといったグローバル先進企業が利用している。

Enviziの機能は多岐にわたるものの、導入企業から特に評価が高い機能として、さまざまなESG開示基準のフレームワークを内蔵していることがあげられる。

「各種ESG開示基準のフレームワークを内蔵しているため、開示基準に変更があれば自動的にEnviziへ変更部分が反映され、ユーザーは最新の基準に沿って開示情報の生成することができます。Enviziがあれば、ユーザーは基準の変化を追いかける必要はありません。企業は、収集したESGデータをEnviziに登録すれば、各開示基準に沿ったレポーティングを手間なく生成することが可能です。さらに、ユーザー・アシスト機能として、各基準のレポーティングを生成する際の“コツ”をコメントにより表示する機能も具備しています」(柴山氏)

また、4万以上の排出量係数を内蔵していることも大きい特徴だ。

「企業は、グローバル・レベルで温室効果ガス(GHG)排出量を算出することが求められます。しかも、一度算出して終わりではなく、各企業の管理頻度に応じて算出しなければなりません。その際、適切な排出量係数を選択する必要がありますが、グローバル・レベルで排出量係数の更新をモニタリングしながら最新の排出量係数を選択し、適用するといった排出量係数管理を人手で実施することは、極めて困難な作業です。しかし、Enviziを使えば、最新の排出量係数を自動で取り込み、自動で最適な排出量係数を選択してくれるため、極めて困難な作業である排出量係数管理から解放されます」(柴山氏)

さらにEnvizは、タスク管理機能や脱炭素施策管理機能も備えている。たとえば、Enviziへのデータ登録業務をタスク化し、タスクごとに進捗を管理することができる。また、空調設備を省エネルギーのものに取り換えて、CO2排出量を削減するなどの脱炭素施策を登録することで、施策を行わなかった場合の排出量や企業の目標排出量と比較するシナリオ分析も可能である。

この機能を活用すれば、現在、多くの日本企業が陥っている一部の特定メンバーに頼った作業をシステム上でタスク化し、進捗管理の上、最終的には作業の履歴を残すことができる。これらの機能をフル活用することにより、一部の特定メンバーに依存する属人化の状態から脱却し、別メンバーへのスキル・トランスファーが容易となる。

「グローバル+コンサルティング+IT」で企業のESG推進を支援

前述したように、海外では多くの著名企業がEnviziを導入し、人手に頼ったESG情報開示にかかる業務工数を大幅に削減することに成功している。柴山氏によれば、IBM自身も買収する前からEnviziを活用しており、サステナビリティ・レポートの作成工数を30%削減できたという。さらに柴山氏は、Enviziを活用することで新しいデータ活用の可能性もひらけるとして、次のように説明する。

「Enviziには、温室効果ガス(GHG)だけではなく、他の環境系データ、さらには社内関係者やバリュー・チェーンに関わる社外関係者(例:サプライヤー)の定量・定性データなど、さまざまなデータを取り込み、集約することが可能です。こうして集約したデータを活用することにより、今までできなかったレポートを作ることが可能となり、新たな施策や洞察を得ることができるようになります。これはサステナブル経営を推進する上で、大きいメリットとなります」(柴山氏)

サステナブル経営やESGの取り組みとその情報開示は、今後、大手企業からそのサプライチェーンに連なる中堅・中小企業にも波及していくだろう。IBMのサステナブル経営管理サービスとEnviziは、こうした企業にとって注目のサービス、ツールとなるはずだ。

「当社の強みは、コンサルティングファームであり、かつ事業会社でもあることです。当社は、事業会社として多くのビジネス変革や率先してサステナブル経営を推進してきた歴史がありますので、お客さまの立場に立った“地に足の付いた”コンサルティングができると確信しています」(柴山氏)

「企業として幅広いケイパビリティを保有していることもIBMの特長です。グローバル対応はもちろん、コンサルティング領域、テクノロジー領域において、豊富なタレントとナレッジを有しています。IBMは、『グローバル+コンサルティング+テクノロジー』をキーワードにサステナブル経営管理を起点として多種多様なサービスを提供できます」(真藤氏)

サステナブル経営における1つのターゲットは、SDGs(持続可能な開発目標)の達成時期とされる2030年となる。そこまでの時間は、長いようで短い。さらにサステナブル経営の取り組みはパーパス経営の一環でもあることから、2030年以降もサステナブル経営に関する企業のあくなき挑戦は続く。IBMであれば、企業のあくなき挑戦を支える信頼できるパートナーとなれるだろう。ぜひ、ご相談いただきたい。

※当記事は、Web「ビジネス+IT(IBM外のWebサイトへ)」に2023年2月に掲載されたものです。掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます。