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Smarter Business

AIの実用化を加速するデジタル変革のためのAIソリューション

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倉島 菜つ美

倉島 菜つ美
日本アイ・ビー・エム株式会社
コンサルティング事業本部
IBMフェロー
ビジネス・トランスフォーメーション・サービスCTO

 

田村 昌也

田村 昌也
日本アイ・ビー・エム株式会社
コンサルティング事業本部
戦略コンサルティング 技術戦略リーダー
パートナー

全社的AI活用の取り組みの重要性

2022年11月のChatGPT 3.5の衝撃的なリリースから1年半あまり、これをたった、と感じるのか、それともすでに、と感じるのかは、それぞれがこの期間にどれだけ生成AIとの関わったかによるのかもしれない。いずれにしても、生成AIはもはや一過性のトレンドではなく、企業が厳しい市場競争を勝ち抜くために必要不可欠なテクノロジーと言える。

では、生成AIを全社的かつ包括的に活用し、それによる価値を享受できている、と言い切れる企業はどれほどあるだろうか。

生成AIの本格活用により、ビジネス価値を実現するには、個別分散的な取り組みから脱却し、業界データや自社データの有効活用の促進、AIスキル・ノウハウを持った人材の拡充、などの施策を早期に実施していくことが必須であり、そのための体制や環境を整備することが求められる。

しかし、2023年7月に公開されたIBM Institute for Business Value(IBV)のレポート「生成AIで企業が変わる:現状と課題※1」では、「企業の60%は生成AIに関し、一貫性のある全社的なアプローチをまだ確立できていない」と述べていた。その調査レポートから約1年後、2024年7月に公開された「CEOスタディ2024※2」では、「CEOの4分の3が、信頼できるAIを実現するためには効果的なAIガバナンスが必須であると答えたが、優れた生成AIガバナンスを実際に導入できていると回答した割合は39% にすぎなかった」としている。つまり、全社的な生成AI導入に向けた取り組みの重要性は認識されているものの、具体的なアクションはそこまで早いスピードで進んではいない、ということが読み取れる。

デジタル変革のためのAIソリューションの発表

そこでIBMは、お客様によるビジネスでの生成AI活用を加速することを目的に、ビジネス変革のためのAIソリューションを含む、AIの本格活用に向けた包括的なフレームワークである「デジタル変革のためのAIソリューション」を整備した。

このAI活用のためのフレームワーク「デジタル変革のためのAIソリューション」は、IBMが2024年3月に発表した「IT変革のためのAIソリューション」を拡張し、IT変革だけでなくビジネス変革を含む全社的なデジタル変革におけるAIの実用化を加速するものである。

「デジタル変革のためのAIソリューション」は、「IT変革のためのAIソリューション」「ビジネス変革のためのAIソリューション」「全社横断的なAI戦略とガバナンス」「AI活用のためのプラットフォーム」の大きく4つのコンポーネントから構成され、企業は、自社のニーズに応じてどのコンポーネントからでも生成AIの本格導入を始めることができる。

図:デジタル変革のためのAIソリューション

「デジタル変革のためのAIソリューション」は、AI活用のカテゴリーを整理した単なるフレームワークではない。「デジタル変革のためのAIソリューション」上の各コンポーネントには、IBMの製品・サービスや、IBMの戦略パートナー各社の製品・サービスがマッピングされており、それらのソリューションの一部は、すでにお客様企業にて実装され効果を上げている。その1つが次に述べるIBM Consulting AdvantageおよびIBM Consulting Assistantsである。

IBM Consulting AdvantageでAI活用を加速

IBM Consulting Advantageは、「AI活用のためのプラットフォーム」を体現するIBMのソリューションである。IBM Consulting Advantageは、企業が様々なAIを本格活用するための柔軟でセキュアかつオープンなプラットフォームを提供する。IBM Consulting Advantageを活用することで、企業は、watsonxをはじめ、他社製LLMを含む幅広いAI活用ソリューションを統合し、利用することが可能となる。

IBM Consulting Advantageの提供価値は以下のとおり。

  1. IBM Consulting Advantageをベースに、AI GarageなどのIBM Consultingのサービスと組み合わせることで、AI活用に伴う様々なリスクを管理しつつ、AIの実用化と本格活用を加速するAIソリューションの共創が可能
  2. 将来的な利用拡大を見据え、全社AIプラットフォームに相応しいスケーラビリティーを担保
  3. ユーザー認証やデータ保護などセキュリティーに考慮した安全な環境を提供
  4. SAP、AWS、Microsoft Azure、Salesforce、Adobeなど、市場をリードするテクノロジー企業が提供するソリューションとの統合をサポート

すでにIBMはこのプラットフォーム上で稼働する生成AI活用ソリューションIBM Consulting Assistantsにより大幅な生産性の向上を実現している。IBM Consulting Assistantsは、プロジェクトに関わる様々な業務を支援する生成AIアシスタントである。シンプルなチャットベースのインターフェースで、議事録作成、資料の要約、翻訳やアイデア検討などの業務を生成AIの支援により効率化できる。IBM Consulting Assistantsは、IBM社員だけでなく、IBMが支援するプロジェクトに参画するメンバーはお客様も含めて利用することが可能である。

次に、「デジタル変革のためのAIソリューション」のコンポーネントのうち「AI戦略策定とガバナンス」についてご紹介する。

全社横断でのビジネス価値創出に向けたAI戦略とガバナンスの実現を支援

IBMは、世界各国でお客様の生成AI導入、活用を実践してきた経験により蓄積された各業界・業務のAI知見を活用し、部門横断的な事業価値創出に繋がる重点領域の特定、技術進化を見据えたAI活用方針策定、本格活用におけるリスクを統制するためのガバナンス体制の確立など、「攻め」と「守り」の両面における全社の戦略・組織・プロセス・人材を共創している。

「攻め」のAI戦略においては、IBMグローバルの各業界・業務プロセスにわたる生成AIの価値実現の知見を集積した業務分析ツール「CBM.ai」を用いて、事業価値創出に繋がる部門を横断した生成AI活用戦略の策定や重点領域の特定からロードマップ、実行までを推進している。

「守り」のAIガバナンスは、AI倫理を基本特性として利用・開発に組み込むとともに、信頼できる責任あるAIのあり方を実現する方法論・プロセスを通じ、本格活用におけるリスクを統制するためのガバナンス態勢確立を目指すものである。

すでに、生成AI本格活用に向けたお客様と日本IBMの共創による「ビジネス変革のためのAIソリューション」の実現は始まっている。
IBMは、世界で21,000人のデータサイエンティストおよびAIコンサルタントが所属するCenter of Excellence for Generative AIや、各領域の専門チーム、全国8拠点のIBM地域DXセンターなどの組織を整備し、世界中の専門家の知見を統合的に活用し、お客様のAI導入と活用を推進している。

AIの実用化と本格展開を加速し、AIを全社的に適用できる企業「AI+ Enterprise」への変革を

IBMは、業務プロセスの一部をAIで効率化するのではなく、AIを前提に全体の設計を見直す「AI+(AIファースト)」へのシフトを提案している。

本稿では、全社的AI活用の取り組みの重要性を踏まえ、ビジネス変革のためのAIソリューションを含む包括的なフレームワーク「デジタル変革のためのAIソリューション」、その中の「AI活用のためのプラットフォーム」を体現するIBM Consulting Advantage、「ビジネス変革のためのAIソリューション」におけるお客様企業との共創についてご紹介した。

日本企業はグローバル企業に比して、生成AIを実験中と回答する企業の割合は高い(日本:47%、グローバル:42%)が、生成AIを活発に導入していると回答する企業の割合は低い(日本:25%、グローバル:38%※3)。このような中で、本稿の内容が、AIを全社的に適用した「AI+(AIファースト)企業」が日本に増加していく一助となれば幸いである。


※1 IBVレポート(2023年7月):生成AIで企業が変わる:現状と課題
※2 IBVレポート(2024年7月):CEOに立ちはだかる6つの真実
※3 IBMレポート(2024年1月):IBM Global AI Adoption Index Report(英語)